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二章 外伝
外伝7
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外伝7 とある冒険者 後編
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こうやって飲んだくれてるから変なのに絡まれるんだ。
さっさと宿に帰ろう。
「まぁ、ちょっと待ってくださいよ」
声をかけられ咄嗟に振り向いてしまった。
無視して帰るべきだった。
我ながらちょっとお人好しが過ぎるな。
ふぅ~
振り返った途端、顔に変な煙を吹きかけられた。
多少吸い込んでしまった。
爺さんがやけにニヤニヤしてる。
「な、何しやがる」
「いや、わざとじゃないんや。すまんね」
そう言いながらも、顔は全く申し訳なさそうではない。
はぁ~、イライラする。
殴ってしまいたい。
殺してしまっても良いのだろうか?
……だめ、だな。
ここはギルドの中だ。
冒険者ギルドは、冒険者になる人間の経歴を問わない。
なにもやり直しを与えるなんて社会的に素晴らしい意義があっての話ではない。
単に調べるのが大変だからだ。
冒険者になった以上、カードで情報が整理されている。
ギルドにとってそれを把握するのは難しい話じゃない。
冒険者になって、しかもギルドの中での揉め事はアウトだ。
厳重注意や罰金で済めばいいが、最悪資格を取り消された後に出禁を言い渡されてもおかしくない。
だから、冒険者なんて荒くれ者ばかりの奴が飲んでてもそこまで騒ぎを起こさないのだし。
グッと、我慢する。
睨みつけるだけなんて、カッコ悪い男だ。
そのままギルドを後にする。
さっきまで飲んでたって言うのに、あまり酔っぱらった感じがしないな。
体が多少は元気になった気がするし。
絶対、あの変な煙のせいなのだろうけど。
そんな強力な奴だったのか。
劇物を顔に吹きかけてくれやがって。
変な中毒症状でも出たらただじゃおかねぇ。
安宿に戻ってきた。
冒険者になってしばらくしてからは、ずっとここに泊まっている。
ほぼ我が家みたいなものだ。
このまま仕事がないと、部屋のランクを落とす必要が出てくるかもな。
ここより安い宿なんてのはあまりない。
でも、1人部屋よりは大部屋で雑魚寝するようなのの方がよっぽど安い。
あまり気は進まないんだけど。
金がないんじゃ仕方がない。
……
さっきの光景が頭をよぎる。
吹きかけられた煙。
それを咄嗟に少し吸い込んでしまった。
息を大きく吸い込む。
無意識の行動。
当然ここにあの煙なんて漂ってないのだし、ただ自室の空気を吸い込んだだけだ。
あぁ、良くない。
体があれを求めてるのがわかる。
これに流されれば身を滅ぼす。
そう理解している。
しかし、身を滅ぼしちゃ悪いのかなんて思考すら頭をよぎる。
依頼は減るばかり。
金がなくなれば俺は生きていけない。
どうせ死ぬなら死ぬ前に幸せなことを。
大体、酒と何が違うと言うのか。
体に悪いと知りながら自分の快楽のために飲んでいたんだ。
だとしたら、薬だって。
今日は耐えよう。
今日、だけは。
明日も居たら、その時は……
我ながら、情けないとは思う。
でも、仕方ないんだ。
だって、こんな時正しい判断ができて快楽に耐えられる人間ならそもそも冒険者なんてやっていないのだから。
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こうやって飲んだくれてるから変なのに絡まれるんだ。
さっさと宿に帰ろう。
「まぁ、ちょっと待ってくださいよ」
声をかけられ咄嗟に振り向いてしまった。
無視して帰るべきだった。
我ながらちょっとお人好しが過ぎるな。
ふぅ~
振り返った途端、顔に変な煙を吹きかけられた。
多少吸い込んでしまった。
爺さんがやけにニヤニヤしてる。
「な、何しやがる」
「いや、わざとじゃないんや。すまんね」
そう言いながらも、顔は全く申し訳なさそうではない。
はぁ~、イライラする。
殴ってしまいたい。
殺してしまっても良いのだろうか?
……だめ、だな。
ここはギルドの中だ。
冒険者ギルドは、冒険者になる人間の経歴を問わない。
なにもやり直しを与えるなんて社会的に素晴らしい意義があっての話ではない。
単に調べるのが大変だからだ。
冒険者になった以上、カードで情報が整理されている。
ギルドにとってそれを把握するのは難しい話じゃない。
冒険者になって、しかもギルドの中での揉め事はアウトだ。
厳重注意や罰金で済めばいいが、最悪資格を取り消された後に出禁を言い渡されてもおかしくない。
だから、冒険者なんて荒くれ者ばかりの奴が飲んでてもそこまで騒ぎを起こさないのだし。
グッと、我慢する。
睨みつけるだけなんて、カッコ悪い男だ。
そのままギルドを後にする。
さっきまで飲んでたって言うのに、あまり酔っぱらった感じがしないな。
体が多少は元気になった気がするし。
絶対、あの変な煙のせいなのだろうけど。
そんな強力な奴だったのか。
劇物を顔に吹きかけてくれやがって。
変な中毒症状でも出たらただじゃおかねぇ。
安宿に戻ってきた。
冒険者になってしばらくしてからは、ずっとここに泊まっている。
ほぼ我が家みたいなものだ。
このまま仕事がないと、部屋のランクを落とす必要が出てくるかもな。
ここより安い宿なんてのはあまりない。
でも、1人部屋よりは大部屋で雑魚寝するようなのの方がよっぽど安い。
あまり気は進まないんだけど。
金がないんじゃ仕方がない。
……
さっきの光景が頭をよぎる。
吹きかけられた煙。
それを咄嗟に少し吸い込んでしまった。
息を大きく吸い込む。
無意識の行動。
当然ここにあの煙なんて漂ってないのだし、ただ自室の空気を吸い込んだだけだ。
あぁ、良くない。
体があれを求めてるのがわかる。
これに流されれば身を滅ぼす。
そう理解している。
しかし、身を滅ぼしちゃ悪いのかなんて思考すら頭をよぎる。
依頼は減るばかり。
金がなくなれば俺は生きていけない。
どうせ死ぬなら死ぬ前に幸せなことを。
大体、酒と何が違うと言うのか。
体に悪いと知りながら自分の快楽のために飲んでいたんだ。
だとしたら、薬だって。
今日は耐えよう。
今日、だけは。
明日も居たら、その時は……
我ながら、情けないとは思う。
でも、仕方ないんだ。
だって、こんな時正しい判断ができて快楽に耐えられる人間ならそもそも冒険者なんてやっていないのだから。
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