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二章
5話
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5話
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自然と目が覚めた。
もう朝らしい。
窓から火の光が差し込んでいる。
結構、早い時間なのだろう。
まだ朝日も随分と低い所にある。
おかげでベットまで直射日光に照らされていた。
眩しい……
でも、気持ちのいい目覚めだ。
見覚えのない天井にももう慣れてきた。
昨日と違ってセンチな気分になることもない。
むしろ、新鮮味があっていいかもしれない。
「んっ、あ、あぁ~」
伸びをする。
しっかり疲れも取れた、かな?
昨日と違って体のあちこちが痛いなんて事もないし。
うん、高いお金を払っただけはある。
やっぱりベットは柔らかいに限るね。
硬いのはダメだ。
ましてや床並みなんて論外である。
それに、ちょっと安心した。
変な悪夢を見ずに済んで良かったって。
ある程度うなされる可能性も視野に入れ、覚悟はしていたのだが。
私の心は案外強靭らしい。
人を殺しておいて引き摺らないというのも、果たしていい事なのかどうか判断に迷うところではある。
が、今の私にとって都合がいいのは事実だ。
ことさら気にしたところで、仕方がないしね。
着替えだけ済ませて、宿の外に出る。
人通りはそれほど多くない。
ま、まだ早朝と言っていい時間だろうしね。
庶民は日の出と共に活動するなんてイメージもあったが、それも違ったらしい。
私の庶民に対するイメージは極端なものばかりだ。
ここ王都じゃ日の出と共に行動するなんて田舎思考の人間、案外少ないのだろう。
王都の外に続く門。
そこから伸びる大通りを荷物を積んだ馬車がいくつか走っている。
それだけだ。
多分、遠くに運ぶにはこれぐらいに出ないと間に合わないのだろう。
日没までにはつきたいはずだし。
日を跨ぐ場合はその限りじゃないんだろうけどね。
王都の外は危険だ。
魔物はもちろん出てくるが。
それ以上に、盗賊も出る。
それが夜になれば視界も限られてくるのだ。
何処から、何に襲われるかわからない。
暗闇の中で馬車を進めるわけにもいかずただ日の出を待つしかできない。
そりゃ、陽が出てる間に目的地に着きたいというのが当然だろう。
スラムとそう大差ない。
もしくは、それ以下の治安だと思う。
だからだろう。
冒険者ギルドには、馬車の護衛依頼なんかもあるらしい。
効率が悪いからやつるもりはないけどね。
あ、冒険者ギルドで思い出した。
魔法剣士の案。
あれは一旦凍結することにした。
早急に稼ぐ必要も無くなったしね。
あのやり方は、明らかに無駄なリスクを負う羽目になるから。
受付嬢にも、しっかり私のこと覚えられちゃってる様だし。
あまり不信感を与えたくない。
こっちは探られて痛い腹しかないのだから。
元公爵家の貴族であったことも、
この国の王子の元婚約者であったことも、
闇ギルドと関わりがあることも、
今も昔もこんなんである。
ひどい有様だ。
私の経歴は何故こんなにも傷だらけなのだろうか?
ランクを上げるための1日一回の依頼達成。
それだけやるつもりだ。
無理して冒険者ギルドで稼ぐというのは諦めた。
もちろん、このやり方じゃ入るお金はたいした事ない。
闇ギルドからもらう金額に比べれば雀の涙だし、今の私の生活費からしても全然足しにならないだろう。
それでも依頼を一応続ける理由は単純。
言わば、身分証がわりだ。
今の私には身分がない。
公爵家を勘当されたのだから当然なのだけど。
Dランクの冒険者カード。
ないよりマシ程度の意味しかなさないが、それでも一応は身分として使えるものだ。
それがCとかBとかになってくれば、結構な信用を得られると言っていい。
貴族ほどではない。
しかし、そこらの庶民よりよほど良い身分ではあると言える。
Aランクの冒険者にでもなれば、下級貴族は無碍に出来なくなる。
力の証明でもあるし。
それぐらい、冒険者は実力主義の世界だ。
で、魔法剣士の案を破棄した以上。
別に何か商売を考えなければならない。
ちょっと妙案を思いついた。
寝たら妙に頭がスッキリしてね。
やはり睡眠は大事だ。
在庫を持つような商売、それをするつもりはない。
そんなリスクを取る必要はないのだ。
リスクをできるだけ抑えて、確実に稼ぎを伸ばす。
もっとも、この方法はグレー寄り。
おそらくは違法だろうけど。
法律は破ってはいけないのではない。
破ったことがバレるのがダメなのだ。
それに、初めから法の罰という税金を納めるつもりがあるのなら怖いものはなくなる。
そのために、ちょっと人手が欲しい。
ただ、闇ギルドから人員をもらってもなぁ。
奴らはあまり信用ならない。
いや、信用されてる自信がないと言うべきか。
私は用心棒だ。
それ以上に、仲間を大量に殺した敵でもある。
今はボスのカリスマでうまくまと纏まっているが、直接仕事をするとなれば話は別かもしれない。
そんな相手を信用できるほど頭お花畑ではない。
婚約者にさえ裏切られる世の中なら、慎重すぎるって事はないはずだ。
……奴隷、かな?
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自然と目が覚めた。
もう朝らしい。
窓から火の光が差し込んでいる。
結構、早い時間なのだろう。
まだ朝日も随分と低い所にある。
おかげでベットまで直射日光に照らされていた。
眩しい……
でも、気持ちのいい目覚めだ。
見覚えのない天井にももう慣れてきた。
昨日と違ってセンチな気分になることもない。
むしろ、新鮮味があっていいかもしれない。
「んっ、あ、あぁ~」
伸びをする。
しっかり疲れも取れた、かな?
昨日と違って体のあちこちが痛いなんて事もないし。
うん、高いお金を払っただけはある。
やっぱりベットは柔らかいに限るね。
硬いのはダメだ。
ましてや床並みなんて論外である。
それに、ちょっと安心した。
変な悪夢を見ずに済んで良かったって。
ある程度うなされる可能性も視野に入れ、覚悟はしていたのだが。
私の心は案外強靭らしい。
人を殺しておいて引き摺らないというのも、果たしていい事なのかどうか判断に迷うところではある。
が、今の私にとって都合がいいのは事実だ。
ことさら気にしたところで、仕方がないしね。
着替えだけ済ませて、宿の外に出る。
人通りはそれほど多くない。
ま、まだ早朝と言っていい時間だろうしね。
庶民は日の出と共に活動するなんてイメージもあったが、それも違ったらしい。
私の庶民に対するイメージは極端なものばかりだ。
ここ王都じゃ日の出と共に行動するなんて田舎思考の人間、案外少ないのだろう。
王都の外に続く門。
そこから伸びる大通りを荷物を積んだ馬車がいくつか走っている。
それだけだ。
多分、遠くに運ぶにはこれぐらいに出ないと間に合わないのだろう。
日没までにはつきたいはずだし。
日を跨ぐ場合はその限りじゃないんだろうけどね。
王都の外は危険だ。
魔物はもちろん出てくるが。
それ以上に、盗賊も出る。
それが夜になれば視界も限られてくるのだ。
何処から、何に襲われるかわからない。
暗闇の中で馬車を進めるわけにもいかずただ日の出を待つしかできない。
そりゃ、陽が出てる間に目的地に着きたいというのが当然だろう。
スラムとそう大差ない。
もしくは、それ以下の治安だと思う。
だからだろう。
冒険者ギルドには、馬車の護衛依頼なんかもあるらしい。
効率が悪いからやつるもりはないけどね。
あ、冒険者ギルドで思い出した。
魔法剣士の案。
あれは一旦凍結することにした。
早急に稼ぐ必要も無くなったしね。
あのやり方は、明らかに無駄なリスクを負う羽目になるから。
受付嬢にも、しっかり私のこと覚えられちゃってる様だし。
あまり不信感を与えたくない。
こっちは探られて痛い腹しかないのだから。
元公爵家の貴族であったことも、
この国の王子の元婚約者であったことも、
闇ギルドと関わりがあることも、
今も昔もこんなんである。
ひどい有様だ。
私の経歴は何故こんなにも傷だらけなのだろうか?
ランクを上げるための1日一回の依頼達成。
それだけやるつもりだ。
無理して冒険者ギルドで稼ぐというのは諦めた。
もちろん、このやり方じゃ入るお金はたいした事ない。
闇ギルドからもらう金額に比べれば雀の涙だし、今の私の生活費からしても全然足しにならないだろう。
それでも依頼を一応続ける理由は単純。
言わば、身分証がわりだ。
今の私には身分がない。
公爵家を勘当されたのだから当然なのだけど。
Dランクの冒険者カード。
ないよりマシ程度の意味しかなさないが、それでも一応は身分として使えるものだ。
それがCとかBとかになってくれば、結構な信用を得られると言っていい。
貴族ほどではない。
しかし、そこらの庶民よりよほど良い身分ではあると言える。
Aランクの冒険者にでもなれば、下級貴族は無碍に出来なくなる。
力の証明でもあるし。
それぐらい、冒険者は実力主義の世界だ。
で、魔法剣士の案を破棄した以上。
別に何か商売を考えなければならない。
ちょっと妙案を思いついた。
寝たら妙に頭がスッキリしてね。
やはり睡眠は大事だ。
在庫を持つような商売、それをするつもりはない。
そんなリスクを取る必要はないのだ。
リスクをできるだけ抑えて、確実に稼ぎを伸ばす。
もっとも、この方法はグレー寄り。
おそらくは違法だろうけど。
法律は破ってはいけないのではない。
破ったことがバレるのがダメなのだ。
それに、初めから法の罰という税金を納めるつもりがあるのなら怖いものはなくなる。
そのために、ちょっと人手が欲しい。
ただ、闇ギルドから人員をもらってもなぁ。
奴らはあまり信用ならない。
いや、信用されてる自信がないと言うべきか。
私は用心棒だ。
それ以上に、仲間を大量に殺した敵でもある。
今はボスのカリスマでうまくまと纏まっているが、直接仕事をするとなれば話は別かもしれない。
そんな相手を信用できるほど頭お花畑ではない。
婚約者にさえ裏切られる世の中なら、慎重すぎるって事はないはずだ。
……奴隷、かな?
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