痛くしないで!‐先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!‐

sae

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本編

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 ついに覚悟を決め訪れた歯医者だ。しかし、ホームページさえ見ずに来た。とにかく変な先入観も持ちたくなかった。ホームページに悪いことなど書くわけがない、爽やかと丁寧だけを売りにして歯科医院は怖くないですよアピールしかしないのだ。怖くないですよ、という時点で怖いと証明している。同じ鋭利なものを武器にする美容室がそんなことを謳わないじゃないか。歯科医院は怖いところなのだ。言うほどにうさん臭さが増す、百合はそう思った。
 だからと言って口コミを見て評判を知るのはもっと怖い。人の感覚はそれぞれだ。過去に通った歯科医院だって評判がいいと聞いて行ったのにあの始末だ。なにひとつ当てにできない。百合が信用できたのは冴子の言葉だけだ。

「優しいしおすすめ」

 冴子がおすすめするなら信じよう、その気持ちだけでエレベーターに乗った。冴子がおすすめというから扉の前に立つ。ドキドキする胸を落ち着かせようと何度か息を整えているとピンポン、と軽快な音が鳴って百合は思わず悲鳴を上げた。

「ひゃ!」
 いきなり扉が開いた。開けたのはもちろん百合ではない。目の前にはとてもとてもイケメンの若い男性が立っていた。


目の前に立つとてもとてもイケメンの若い男。百合をジッと見つめるその目に見つめられる百合もまたその目を自然と見つめ返す……というか、固まってしまっただけなのだが。


「患者さん?予約……では、ない?ですよね?」
 イケメンに問われて百合はそこでハッとした。イケメンの見つめる呪縛から解かれてホッとする反面問われた質問に震える。

「あ、あの、すみません。予約してません……」
 そこまで言って男性の背後に目がいった。受付ロビーに人けがない。

(こ……これは)

 百合は思った。ここは人気がない歯医者ではないのか、と。

 時間は17時半、百合のように社会人や学生が通うにはこの時間帯しか難しい。普通ならそういった年齢層で賑わっていてもいいようなものなのに、待合に人がいない。並べられたスリッパもきれいに隙間なく並べられているのをみるあたりおそらく中も誰もいないのだろう。

(ヤブなんじゃない?ここ、ヤブ医者なんじゃない?この人、顔だけで患者を誘ってるもぐりの医者なんじゃない?!)

 冴子がかっこいいと言っていただけある。スラッとして爽やかなイケメンだ。ストライプの薄いブルーのシャツを着ているがここに白衣を羽織るのだろうか。こんなかっこいい顔をした先生がいるなら足繁く通う女性は多いだろう。
 しかし、蓋を開けたらもぐり医者。待合がすべてを語っている。人気のない歯医者丸わかりではないか。顔に騙されて通ってみたものの口の中を荒らされてみんな通うことができなくなったのだ。そうに違いない、それ以外考えられない。今日は水曜日、休診日は木曜と聞いていたのに院内の様子がこれではほかに言い訳なんかないだろう。

 確信した百合はなんとかこの場を逃げるための口実を作ろうと必死になった。けれど心情と状況のパニックからまともな考えも浮かばず沈黙に負けて口走る。

「今日……お休みでしたか?」
 百合は目の前のヤブ医者(百合的に決定)に問いかけた。

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