痛くしないで!‐先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!‐

sae

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本編

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 イケメンを目の前にしても百合の気持ちはブレてはいない。むしろ冷静に目の前と向き合っている。

(私はイケメンだからって絶対騙されないけど。こんな顔して油断させてゴリゴリ削って口の中血だらけにして歯を抜いて入れ歯でも入れさせようと思ってるんでしょ)

 心の中で毒づきながらも百合は気づく。

(でももし本当に人気がないではなく休診だったらもう仕方なくない?)

 ここまで来てなんだと思うが、実際帰るしかないなと開き直る気持ちにもなった。

(痛みもあるけど、我慢できないほどじゃないし明日になったら痛みも腫れも引いてるかもしれない。休診なのに予約もしていない私を診てもらおうとか厚かましい。わざわざ診察してもらって入れ歯にされるくらいなら帰った方が絶対いい、そうだよ、もう帰ろう)

 百合は心の中で都合のいいように整理してもう帰る気持ちを八割くらい固めだした。そんな百合の気持ちを察知したのかイケメンヤブ医者が病院の奥の様子をうかがいながら言う。

「ちょっと待ってくださいね。センセー」

(ん??この人が先生じゃないの?)

 病院の奥の方から微かに機械音が聞こえる。全くもって心地よい音ではない。百合からしたら包丁を研ぐ山姥でもいるのではないかと思うほどだ。

「聞こえてないかな。ところでどうされました?」
 いきなり聞かれて百合はためらった。言えばこのイケメンヤブ医者が自分の口腔内状況を知ってしまうことになる。そうすればもう逃げられなくならないか?百合はまだ逃げることしか考えていなかった。

「えっとぉ……その……」
「お痛みですか?初診?診察でいいんですよね?」
 矢継ぎ早に聞かれて百合の方が息を吞む。

(まずい、なんか問診ありきの手続きモードに入りだしている!!)

 八割固めた気持ちが抵抗するもののイケメンヤブ医者は遠慮もなく攻めてくる。

(必死だ!やっぱり人気がないから患者を取り入れようと必死になっている!もうこのヤブ医者に入れ歯にされる!!)

 百合の被害妄想が爆発しかけたとき、耳に新たな声が届いた。


あさひー、これマージンが取れにくいし、形成やり直した方がよくない?……患者さん?」
 奥からネイビーの白衣を着た新たなヤブ医者が現れた、と百合はまた青ざめた。

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