痛くしないで!‐先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!‐

sae

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本編

Karte-11

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 受付に置かれていたカルテを手に三嶌に尋ねたのは歯科衛生士の谷香苗たにかなえだ。

「先生、このカルテなんですか?」
 香苗の問いかけに三嶌も顔を向けて手の中のカルテを確認する。
 
「水曜?午後に患者さん受け入れたんですか?旭先生が来てたんじゃなかったでしたっけ?」
「うん、来てたよー。その患者は夕方RAで来院して来てね……帰せないでしょ?」
「……」
「なに?」
「いえ、別に」
 ご機嫌に見える三嶌を横目に香苗は言いたいことを飲み込んだ。三嶌は基本的に患者様第一精神である。ドクターとしての腕もいいし愛想もいい。最大に顔もいい。開業されて三年足らずのクリニックだが評判もすこぶるよく、患者数も年々増加中である。オープニングスタッフである香苗は三嶌のことを誰よりも知っていた。

 三嶌が実は顔からは想像つかないほど粘着質で執着心強めのヤンデレタイプだということを。

「可愛かったんですか?」
 香苗の質問に三嶌は平然と答える。

「とても」
 その言葉の真意がいまいち掴めないが、三嶌が気に入っているのを確信した。同時にヤバいと思った。

「先生?初診の患者様ですよ?」
 香苗の問いかけにゆっくりと顔を向けた。どこを見ても整っているその顔が妖艶に微笑んでいてときめくより身震いがした。

「患者には手は出さないが信条じゃなかったでしたっけ?」
「谷くん」
 名前を呼ばれただけなのに背筋が伸びた。威圧感はないのにそれ以上言うなと言われているような圧がある。香苗は口を噤んで三嶌の言葉を待った。

「今日アポとれてるから予約表にいれておいて?TBIからお願いするよ」
「……はい、わかりました」
 すべて飲み込んだ香苗は優秀なスタッフだと三嶌は思う。開院から傍で育ててきて実に自分好みに育ったと内心ほくそ笑む。だからこそ、本音も本当は言いたい。

「会えばわかるよ」
 三嶌の言葉に香苗は目を剝いた。瞬間これは確信に繋がった。


「おはようございまぁす」
「おはよう、桃瀬ももせくん、一番チェアーの咬合紙ストックなくなっちゃった。補充お願いしていい?」
「はぁい、了解しました~」
 ニコッと笑って三嶌は院長室へ消えていった。それを黙って見送る香苗の様子に受付アシスタントの桃瀬が異変に気付く。

「先輩?どうしましたぁ?なんかありました?」
「やばいよ、桃ちゃん。この患者やばいよ」
 桃瀬にカルテを渡して香苗は少し興奮気味になっている。その姿に桃瀬は若干引きつつもカルテに目を通した。

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