痛くしないで!‐先生と始める甘い治療は胸がドキドキしかしません!‐

sae

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本編

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「笹岡百合……これいつのAO患者ですか?水曜……?え、先生勝手に診察しちゃったんですか?ゲルトどうなってるんだろう、今日であげていいんですかね」
「そんなことより!!やばいって!!この子捕獲されるって!」
「まさかぁ、先生が患者様とは一線引いてるのは……「そうだけど!!」
「え、マジですか?」
 夕方になるにつれクリニック内はどこか浮足立っていた。17時半予約の笹岡百合を早く見たくてたまらない、香苗と桃瀬は今日それだけを楽しみに仕事に勤しんでいた。三嶌が一度会っただけでえらく執着しているらしいその相手に興味しかない。

 休診日の翌日は混みやすく、予約なく来院する患者も多い。基本は予約優先だが三嶌はどんな患者も笑顔で受け入れるので桃瀬も笑顔で受け入れるようにしている。17時15分が過ぎた。もうすぐ例の患者がやってくる、そのワクワクを抑えられずいつも以上の笑顔で患者に対応していた。

 ―ピンポン

 扉が開いた音に予約表を確認していた視線を入り口に向けて桃瀬はハッとする。

(うっそーー)

 一瞬固まった桃瀬だが瞬間で笑顔に切り替えた。

「……こんばんはぁ、まゆずみ様、どうされました?」
「急にごめんなさいねぇ、さっきワイヤーが外れたのか歯茎に触れちゃってぇ」
「それは大変ですね。ちょっと混みあってくるので少しお待ちいただくかと思いますけど……なるべく早く対応させていただきますね!お待ちください!」
 桃瀬は対応そこそこに慌てて香苗のもとへ走った。

「先輩!やばいっす!黛様がAOです!」
「え?!今?」
 香苗も驚いて時計を見る。17時20分、タイミング的に最悪だった。

「何で来たの?先生には伝えた?」
「ワイヤーが外れたかもって。先生今一番チェアーでお話し中でまだ伝えていません」
 二人で顔を見合わせた。その瞬間ピンポンと音がして二人の脳内も同時に察した。

「「!!」」

 二人でバタバタと受付に走った。初めて見る患者に何も言わずとも双方顔を見合わせて頷く。

 〈この子に違いない〉

 桃瀬がまずは先陣を切って得意の受付嬢スマイルで迎え入れた。

「こんばんはぁ!診察券お持ちですかぁ?」
「……こんばんは、あの、先日は休診のところご無理を言いまして……」
 そう言い差し出してきた診察券を受け取り名前を確認して香苗にアイコンタクトを送る。

 笹岡百合が来院した。時刻は予約時間5分前、理想的時間配分をしている患者だ。予約時間を守らない患者は多い。それだけで香苗と桃瀬的には好感度が上がってしまう。

「いいえ!こちらこそドクターだけの対応になって申し訳ありませんでした。その後お変わりなかったですか?」
「えっと……まだ少し……痛みがあります」
 言葉の通り右下のえらのあたりがふっくらと腫れているかもしれない。桃瀬はじっと百合の顔を見つめながら思っていた。

(地味だ……)

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