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エピソード4
誠の葛藤⑦
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可愛いとか言われて抱きしめられたら何にも言えなくなった。
(色々ダサすぎる……俺)
「結城さんは素敵な人だとは思うけど、タイプじゃないしそういう目で全然見れない」
あんなに心配していた俺の気持ちを裏切るようにあっさりとそう言う。
「タイプじゃないっていうか……」
体を少し離して首に腕をぶら下げて体の中におさまると見上げてきて言った。
「そもそも好きになる要素がないよね」
(好きになる要素がない……それはまたなんというか)
「結構ぶった斬るな」
「だってそうじゃん。好きになるところないもん。私からしたら結城さんってただのイケメンな人ってだけだよ?」
(だけって……)
「別にそのまま本人に言ってくれていいよ?本人からしたらお前なんかにそんな風に言われる筋合いないって向こうからお断りされるよ、絶対」
サラッと言うから絶句した。
「千夏……お前そんなだったっけ?」
「ごめん、こんなだよ。こんなだし、結城さんにそんな風に思われても全然平気って思ってる」
言葉を失った俺に笑いながら続ける。
「どう思われてもいいから、誠くんが安心できる風に言ってくれていいよ?」そう笑った。
「結城さんのこと、ほんとに何にも思わないんだ?」
「うーん、思わないかなぁ。カッコいいとかは思うよ?客観的にね。でも好意とかそんなんはなんにもないよ。実際結城さんとなんにもないし……挨拶して、仕事のこと少し話しただけ?コーラ代えてくれたくらいではさすがに落ちないよ、私でも。好きになるってそういうことじゃないでしょ?」
首に回された腕に力が込められてギュッと抱きついてきて言う。
「そもそも私、好きな人いるよ?誠くんが好きなんだよ?私」
(ここでそういう事を言うか)
「私の好きな人は誠くんなの」チュッと千夏からキスされて固まった。
「――またスイッチ入った」
「え!なんで?スイッチ緩くない?あ!」服の下に手を入れると声を荒げた。
「千夏のせいだし。てか、この流れでそうならない方がおかしい」
「んんっ!」
何か言いかけそうな口を乱暴に塞いだら逃げるように腰を引いたから捕まえる。
「ん、ま――さっきした!」
「あんなん一回ちょっとしただけじゃん」
「ちょ……明日も仕事……「わかってる」
「まだ水曜……「知ってる」
「お、お風呂入ってな……「さっき抱いたし関係ない」
何を言ったって言い返す。
「またするの……?」
少し怯えたようにそう聞くから余計気持ちが滾りだす。
「する、なんと言ってもする」
絶対的な言葉に千夏は口をパクパクさせて顔を赤くしている。
「好きなら受け入れて」そう言ったら目を見開いて「……はい」と頷いた。
(言いなりか)
「ん……はぁ、なんでぇ」
「動いてほしい?」
「んん、あんっ」
千夏の中に入ったままゆるーくたまに動くだけでいると痺れを切らしたのか喘ぎ始めた。
「や、も、おわってよぉ……あん!」
「だって千夏の中気持ちいいからさ。終わりたくないし」
「おわってぇぇ……んあんっ!それ!や!」
動かないかわりに赤く膨れた突起物を親指の腹で押さえつけると反応した。
「まだ中より外のがイクんだよなぁ……ここも好きだよな、千夏」
「や!やぁ、あんっあ!ダメダメ、それヤッ!イっちゃう、イっ――っ」
クタッとベッドに身を投げて軽くイったら息も絶え絶えになってきてるけど、まだ終わってやれない。
「千夏、まだ寝るな」グイッと腰を持ち上げると覚醒する。
「ふぁっ!あんっ、あ、あ、も……やだぁ」
「やだじゃない」
「ぅ……うっんん、じゃあもうおわって」泣きそうになりながら言われても煽るだけ。
「んー、まだ22時だしいける、がんばれ」
「が、がんばらなぃぃ、がんばる時間じゃな、あう!あん、やぁ、も……っんん」
「あぁ気持ちいい、やばい」奥に打ちつけるように動くと千夏の身体が震え始める。
「あ、あ……も、ホントに、やぁっつ……ま、こ、くっ……んん」
「ん?」
「すきぃ、すき……だからっ、も、終わってぇ……あぁぅっ」
(好きだから終わってってなに)
「好きなら頑張って」そう言うと睨んでくる。
「はぁ、それ……ズルいからね?そん、あ、はぁっ……うっ、んあ、も、がんばったぁよぉぅ……ふぁっ」
頑張ったとか言うから笑えてきた。
可愛すぎて――何を言っても何をしても可愛くて、千夏のすべてが欲しくなる。
結城さんのことで思ってた以上に気持ちが乱れて、千夏に振り回される自分がいる。
「あん!はぁ、あっ!」
「千夏――はぁ、受け止めて」
「ぅ、ああ……は、あっ!あっ、あんんっ」
聞こえているのかいないのか、腕の中で喘ぐ千夏はもう意識が飛びかけている。
俺はお前の全部を受け止めるから、だから千夏も俺を受け止めてほしい。
高まる熱と一緒にその気持ちを千夏に全身でぶつけて抱きしめた。
―――――――――――――――――
早々に報告書が届いた。値もデータも納得の域、久世に電話をかけた。
「報告書うけとったよ、ありがとう」
『細かなバラつきとか見たかったら言ってください。データ送ります』
「うん、なんかあったら頼むよ、よろしく」
『結城さん』
「なに?」
『ちょっと時間もらえませんか?』声の感じで仕事のことじゃないなとわかる。
「……いいよ?急だけど今日の夜なら仕事調整できる」
『合わせます』
「じゃあ今晩、終わったらラインいれるよ」
『了解です』そこで電話が切れる。
「ふぅん」ついに何か言う気になったか、とニヤニヤしてくる。
菱田さんとこないだ話したことも知ったのか。
仕事がとりあえずキリがついたから牽制をかけてくるつもりだろうなと予測すると案の定だった。
開口一番に言ってきた。
「彼女と付き合ってるんで。近づかないで下さい」
「いきなり言うの?」
しかも近づくなときた。
「別になんもしてないじゃん」
「なんかする気でしょ?面白がるのやめてもらえますか」
「だって面白いし」そういうと心底嫌そうにする。
「最初っから言えば良かったのに。変に隠そうとするからじゃんか」
「それは……」
「職場だから内緒ってこと?」
「……まぁ」
「でも職場だから本気で付き合ってるんだろ?」
「そうですけど」
「俺なんかいっときの絡みの人間なんだし秘密も何もないだろ。言って欲しかったなぁ」
そう言うと面白くなさそにビールを飲んだ。
「言いたくないですよ、そんなの」
「なんで?」
「わざわざ認識させたくなかっただけです。結城さんが気にいるの分かってたんで」
「ほら、やっぱり趣味似てんじゃん、俺ら」
「だから嫌なんですって」
そんなに嫌がらなくてもいいのに。趣味が似てるって友情関係を保つのに大事なことだけどなとぼんやり考える。
「心配しなくてもあの子俺に興味ないじゃん」
「え?」
「え、てなんで?話したらわかったし。攻略させるって話ならいい対象だけど……さすがに久世の女だしなぁ」
「やめてくださいよ」
「信用ないな、俺」
「全然ないです」
(ひどくない?)
「興味はあったけど、それは久世が気に入ってるってわかったからってだけだし。そうじゃなかったらわざわざ近づこうなんかしないよ。でも、可愛い子じゃん?警戒心剥き出しの猫みたいで」
爪を立てられたわけじゃないけど明らかに懐く感じはしなかった。
「俺が上司なら口説けてたかもなぁ」
「どういう意味ですか?」
「気づいてないの?」
(頭は切れる割に色恋には疎いんだなぁ)
「上司として惚れ込んでるって感じしたけど。そこを切り離して見てないんじゃないかな、彼女」
そこまで言っても久世はどこか理解できないという顔をしている。
「だからぁ、上司としてのお前に落ちてるって話だよ」
「……はぁ」
「誠実だって言ってたよ?お前がいなきゃ続いてないって。殺し文句だな」
そう言ったら黙ってしまった。
「可愛いねって言って口説いたってホイホイついてこないだろ、あの子。チヤホヤされて喜ぶタイプじゃないよね」
「自己肯定はめっちゃ低いですね」
「良かったなー、上司で」ニヤっと笑うと複雑そうな顔を見せた。
「なんか、喜んでいいんですかね、それ」
「仕事してる自分理解してくれるって最高じゃない?お前だって仕事してる彼女見て好きになってるんじゃないのー?」
「……まぁ」
「いーじゃん、パートナーって感じでー」理想的だろ、と心の中でつぶやく。
「別れたら連絡して?久世のもんじゃなくなったら口説くわ」
「言うこと最低ですよ」その返しに笑った。
「来週本社に戻る」
「え、そうなんですか?」
「値ももらえたし、とりあえずこっちですることはあとは青木に任せられるしもういいかな。本社の方が動きやすいしね。そのままあっちに戻るし今夜は飲み納めだな」
今度日本に帰ってくる時にはこの生意気な後輩は彼女と結婚しているかもしれない、その気持ちを込めて久世のグラスに乾杯をした。
(色々ダサすぎる……俺)
「結城さんは素敵な人だとは思うけど、タイプじゃないしそういう目で全然見れない」
あんなに心配していた俺の気持ちを裏切るようにあっさりとそう言う。
「タイプじゃないっていうか……」
体を少し離して首に腕をぶら下げて体の中におさまると見上げてきて言った。
「そもそも好きになる要素がないよね」
(好きになる要素がない……それはまたなんというか)
「結構ぶった斬るな」
「だってそうじゃん。好きになるところないもん。私からしたら結城さんってただのイケメンな人ってだけだよ?」
(だけって……)
「別にそのまま本人に言ってくれていいよ?本人からしたらお前なんかにそんな風に言われる筋合いないって向こうからお断りされるよ、絶対」
サラッと言うから絶句した。
「千夏……お前そんなだったっけ?」
「ごめん、こんなだよ。こんなだし、結城さんにそんな風に思われても全然平気って思ってる」
言葉を失った俺に笑いながら続ける。
「どう思われてもいいから、誠くんが安心できる風に言ってくれていいよ?」そう笑った。
「結城さんのこと、ほんとに何にも思わないんだ?」
「うーん、思わないかなぁ。カッコいいとかは思うよ?客観的にね。でも好意とかそんなんはなんにもないよ。実際結城さんとなんにもないし……挨拶して、仕事のこと少し話しただけ?コーラ代えてくれたくらいではさすがに落ちないよ、私でも。好きになるってそういうことじゃないでしょ?」
首に回された腕に力が込められてギュッと抱きついてきて言う。
「そもそも私、好きな人いるよ?誠くんが好きなんだよ?私」
(ここでそういう事を言うか)
「私の好きな人は誠くんなの」チュッと千夏からキスされて固まった。
「――またスイッチ入った」
「え!なんで?スイッチ緩くない?あ!」服の下に手を入れると声を荒げた。
「千夏のせいだし。てか、この流れでそうならない方がおかしい」
「んんっ!」
何か言いかけそうな口を乱暴に塞いだら逃げるように腰を引いたから捕まえる。
「ん、ま――さっきした!」
「あんなん一回ちょっとしただけじゃん」
「ちょ……明日も仕事……「わかってる」
「まだ水曜……「知ってる」
「お、お風呂入ってな……「さっき抱いたし関係ない」
何を言ったって言い返す。
「またするの……?」
少し怯えたようにそう聞くから余計気持ちが滾りだす。
「する、なんと言ってもする」
絶対的な言葉に千夏は口をパクパクさせて顔を赤くしている。
「好きなら受け入れて」そう言ったら目を見開いて「……はい」と頷いた。
(言いなりか)
「ん……はぁ、なんでぇ」
「動いてほしい?」
「んん、あんっ」
千夏の中に入ったままゆるーくたまに動くだけでいると痺れを切らしたのか喘ぎ始めた。
「や、も、おわってよぉ……あん!」
「だって千夏の中気持ちいいからさ。終わりたくないし」
「おわってぇぇ……んあんっ!それ!や!」
動かないかわりに赤く膨れた突起物を親指の腹で押さえつけると反応した。
「まだ中より外のがイクんだよなぁ……ここも好きだよな、千夏」
「や!やぁ、あんっあ!ダメダメ、それヤッ!イっちゃう、イっ――っ」
クタッとベッドに身を投げて軽くイったら息も絶え絶えになってきてるけど、まだ終わってやれない。
「千夏、まだ寝るな」グイッと腰を持ち上げると覚醒する。
「ふぁっ!あんっ、あ、あ、も……やだぁ」
「やだじゃない」
「ぅ……うっんん、じゃあもうおわって」泣きそうになりながら言われても煽るだけ。
「んー、まだ22時だしいける、がんばれ」
「が、がんばらなぃぃ、がんばる時間じゃな、あう!あん、やぁ、も……っんん」
「あぁ気持ちいい、やばい」奥に打ちつけるように動くと千夏の身体が震え始める。
「あ、あ……も、ホントに、やぁっつ……ま、こ、くっ……んん」
「ん?」
「すきぃ、すき……だからっ、も、終わってぇ……あぁぅっ」
(好きだから終わってってなに)
「好きなら頑張って」そう言うと睨んでくる。
「はぁ、それ……ズルいからね?そん、あ、はぁっ……うっ、んあ、も、がんばったぁよぉぅ……ふぁっ」
頑張ったとか言うから笑えてきた。
可愛すぎて――何を言っても何をしても可愛くて、千夏のすべてが欲しくなる。
結城さんのことで思ってた以上に気持ちが乱れて、千夏に振り回される自分がいる。
「あん!はぁ、あっ!」
「千夏――はぁ、受け止めて」
「ぅ、ああ……は、あっ!あっ、あんんっ」
聞こえているのかいないのか、腕の中で喘ぐ千夏はもう意識が飛びかけている。
俺はお前の全部を受け止めるから、だから千夏も俺を受け止めてほしい。
高まる熱と一緒にその気持ちを千夏に全身でぶつけて抱きしめた。
―――――――――――――――――
早々に報告書が届いた。値もデータも納得の域、久世に電話をかけた。
「報告書うけとったよ、ありがとう」
『細かなバラつきとか見たかったら言ってください。データ送ります』
「うん、なんかあったら頼むよ、よろしく」
『結城さん』
「なに?」
『ちょっと時間もらえませんか?』声の感じで仕事のことじゃないなとわかる。
「……いいよ?急だけど今日の夜なら仕事調整できる」
『合わせます』
「じゃあ今晩、終わったらラインいれるよ」
『了解です』そこで電話が切れる。
「ふぅん」ついに何か言う気になったか、とニヤニヤしてくる。
菱田さんとこないだ話したことも知ったのか。
仕事がとりあえずキリがついたから牽制をかけてくるつもりだろうなと予測すると案の定だった。
開口一番に言ってきた。
「彼女と付き合ってるんで。近づかないで下さい」
「いきなり言うの?」
しかも近づくなときた。
「別になんもしてないじゃん」
「なんかする気でしょ?面白がるのやめてもらえますか」
「だって面白いし」そういうと心底嫌そうにする。
「最初っから言えば良かったのに。変に隠そうとするからじゃんか」
「それは……」
「職場だから内緒ってこと?」
「……まぁ」
「でも職場だから本気で付き合ってるんだろ?」
「そうですけど」
「俺なんかいっときの絡みの人間なんだし秘密も何もないだろ。言って欲しかったなぁ」
そう言うと面白くなさそにビールを飲んだ。
「言いたくないですよ、そんなの」
「なんで?」
「わざわざ認識させたくなかっただけです。結城さんが気にいるの分かってたんで」
「ほら、やっぱり趣味似てんじゃん、俺ら」
「だから嫌なんですって」
そんなに嫌がらなくてもいいのに。趣味が似てるって友情関係を保つのに大事なことだけどなとぼんやり考える。
「心配しなくてもあの子俺に興味ないじゃん」
「え?」
「え、てなんで?話したらわかったし。攻略させるって話ならいい対象だけど……さすがに久世の女だしなぁ」
「やめてくださいよ」
「信用ないな、俺」
「全然ないです」
(ひどくない?)
「興味はあったけど、それは久世が気に入ってるってわかったからってだけだし。そうじゃなかったらわざわざ近づこうなんかしないよ。でも、可愛い子じゃん?警戒心剥き出しの猫みたいで」
爪を立てられたわけじゃないけど明らかに懐く感じはしなかった。
「俺が上司なら口説けてたかもなぁ」
「どういう意味ですか?」
「気づいてないの?」
(頭は切れる割に色恋には疎いんだなぁ)
「上司として惚れ込んでるって感じしたけど。そこを切り離して見てないんじゃないかな、彼女」
そこまで言っても久世はどこか理解できないという顔をしている。
「だからぁ、上司としてのお前に落ちてるって話だよ」
「……はぁ」
「誠実だって言ってたよ?お前がいなきゃ続いてないって。殺し文句だな」
そう言ったら黙ってしまった。
「可愛いねって言って口説いたってホイホイついてこないだろ、あの子。チヤホヤされて喜ぶタイプじゃないよね」
「自己肯定はめっちゃ低いですね」
「良かったなー、上司で」ニヤっと笑うと複雑そうな顔を見せた。
「なんか、喜んでいいんですかね、それ」
「仕事してる自分理解してくれるって最高じゃない?お前だって仕事してる彼女見て好きになってるんじゃないのー?」
「……まぁ」
「いーじゃん、パートナーって感じでー」理想的だろ、と心の中でつぶやく。
「別れたら連絡して?久世のもんじゃなくなったら口説くわ」
「言うこと最低ですよ」その返しに笑った。
「来週本社に戻る」
「え、そうなんですか?」
「値ももらえたし、とりあえずこっちですることはあとは青木に任せられるしもういいかな。本社の方が動きやすいしね。そのままあっちに戻るし今夜は飲み納めだな」
今度日本に帰ってくる時にはこの生意気な後輩は彼女と結婚しているかもしれない、その気持ちを込めて久世のグラスに乾杯をした。
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