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番外編
その後の話・3
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ゆっくり扉を開けると部屋の奥からカタカタとキーボードを叩く音がする。ソロリと顔を覗かせて中の様子を伺いつつももう一度声をかけてみる。
「失礼、します……」
鳴り響くキーボード音だけでとくに返事がない。一哉はおそらくいるはずなのにこういうものか? 集中していると声をかけても返事はない、は来栖から聞かされていたが……。
ーーそれにしたってこんなに聞こえないもの?
凪沙は小首を傾げつつもそんなことを思いつつデスクまで近寄っていく。大きなデスクトップパソコンの影から陽に透ける綺麗な黒髪が見えた。
「い……じゃなかった。社長」
カタ、となり続けていた音が止んで「はぁぁ……」と大きなため息が聞こえた。
そのまま椅子がガクンと揺れて一哉が空を仰ぐように身体を椅子の背に預ける。その綺麗な横顔には疲れが滲み瞳は静かに閉じられていた。
仕事をしている一哉を見るのは当たり前に初めてだ。家でパソコンを叩いている姿を見たことはあっても雰囲気はオフモード。今目の前にいる一哉はL&MのCEOである。
——疲れてそう。でもどうしよう、かっこよすぎて無理……。
そんな風にときめいても凪沙も仕事だ、家ではない。気持ちを一瞬で切り替えて思いきって一歩を踏み出すとデスクにコーヒーを置いた。
「失礼します。コーヒーをお持ちしました」
「……」
声をかけられてパチッと瞳を開けた一哉、声で相手が誰かわかったのか。勢いよく視線を声の方に向けてくるので目が合った。
「……」
いきなり訪れた自分に驚いているのか、一哉は目を見開いて凪沙を見つめてくる。凪沙もその瞳に負けじと緊張している息を整えてから挨拶をこぼす。
「今日からお世話になります。浅川凪沙です。慣れないことでご迷惑をおかけするかもしれませんが精一杯務めさせていただきます。よろしくお願いします」
「……」
それでも一哉は何も言ってくれない。下げていた頭の上で椅子から立ち上がる音がしたので思わず凪沙も頭を上げるのだが。
「? 天澤社長?」
「なんか、やばい」
じっと見つめてくる一哉がいる。その真っ直ぐな視線に無駄に照れる凪沙。それは自分こそまだこの秘書という立場に、この着慣れない姿に単純に慣れていないのだ。だから一哉に真っ直ぐに見つめられると恥ずかしさが増すだけだった。
「や、やっぱり変?」
「え?」
「に、似合ってなくない? こんな素敵なオフィスの社長秘書ってどんなカッコするのか調べて琴美にも相談乗ってもらって……ちょっと、ううん、だいぶん大人っぽいというか……」
淡いピンクのリボンタイになった光沢のあるブラウス。白のタイトなスカートはウエスト位置も高めで足長効果を促してくれる。ただ下腹が出ていないかと凪沙は若干心配しているが、身体の線が綺麗に出て気に入ったデザインだ。デコルテが大きく出ていることもなく基本清楚なイメージだが、大人びたいつもとは少しだけ違う雰囲気のコーデ。足元は七センチヒールと若干おぼつかない。
「な、慣れてなくてごめんなさい」
「いや? 新鮮ですごくいい」
――え?
「失礼、します……」
鳴り響くキーボード音だけでとくに返事がない。一哉はおそらくいるはずなのにこういうものか? 集中していると声をかけても返事はない、は来栖から聞かされていたが……。
ーーそれにしたってこんなに聞こえないもの?
凪沙は小首を傾げつつもそんなことを思いつつデスクまで近寄っていく。大きなデスクトップパソコンの影から陽に透ける綺麗な黒髪が見えた。
「い……じゃなかった。社長」
カタ、となり続けていた音が止んで「はぁぁ……」と大きなため息が聞こえた。
そのまま椅子がガクンと揺れて一哉が空を仰ぐように身体を椅子の背に預ける。その綺麗な横顔には疲れが滲み瞳は静かに閉じられていた。
仕事をしている一哉を見るのは当たり前に初めてだ。家でパソコンを叩いている姿を見たことはあっても雰囲気はオフモード。今目の前にいる一哉はL&MのCEOである。
——疲れてそう。でもどうしよう、かっこよすぎて無理……。
そんな風にときめいても凪沙も仕事だ、家ではない。気持ちを一瞬で切り替えて思いきって一歩を踏み出すとデスクにコーヒーを置いた。
「失礼します。コーヒーをお持ちしました」
「……」
声をかけられてパチッと瞳を開けた一哉、声で相手が誰かわかったのか。勢いよく視線を声の方に向けてくるので目が合った。
「……」
いきなり訪れた自分に驚いているのか、一哉は目を見開いて凪沙を見つめてくる。凪沙もその瞳に負けじと緊張している息を整えてから挨拶をこぼす。
「今日からお世話になります。浅川凪沙です。慣れないことでご迷惑をおかけするかもしれませんが精一杯務めさせていただきます。よろしくお願いします」
「……」
それでも一哉は何も言ってくれない。下げていた頭の上で椅子から立ち上がる音がしたので思わず凪沙も頭を上げるのだが。
「? 天澤社長?」
「なんか、やばい」
じっと見つめてくる一哉がいる。その真っ直ぐな視線に無駄に照れる凪沙。それは自分こそまだこの秘書という立場に、この着慣れない姿に単純に慣れていないのだ。だから一哉に真っ直ぐに見つめられると恥ずかしさが増すだけだった。
「や、やっぱり変?」
「え?」
「に、似合ってなくない? こんな素敵なオフィスの社長秘書ってどんなカッコするのか調べて琴美にも相談乗ってもらって……ちょっと、ううん、だいぶん大人っぽいというか……」
淡いピンクのリボンタイになった光沢のあるブラウス。白のタイトなスカートはウエスト位置も高めで足長効果を促してくれる。ただ下腹が出ていないかと凪沙は若干心配しているが、身体の線が綺麗に出て気に入ったデザインだ。デコルテが大きく出ていることもなく基本清楚なイメージだが、大人びたいつもとは少しだけ違う雰囲気のコーデ。足元は七センチヒールと若干おぼつかない。
「な、慣れてなくてごめんなさい」
「いや? 新鮮ですごくいい」
――え?
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