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番外編
その後の話・4
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そう思っていたらグイッと腕を引っ張られた。
「凪沙ってこういう雰囲気も似合うんだな」
「え……そ、そう?」
いつもとは確かに雰囲気は違う。普段になら絶対着ないような身体の線が出ている大人びたスタイル。一哉のオフィスに恥ない自分でいれているのかな、そんな気持ちで心が緩みかけた時だ。
「なんかエロいもん」
「……」
とんだ発言に凪沙は白けてしまう。エロさなど必要ないのだが、と冷静に脳内でツッコミむしろそれはいいのかと思えてくる。
「なにそれ。仕事中なんですけど」
「仕事集中できないかも」
「……それは困りますね。来栖さんに言って辞めさせてもらいます」
「なんでだよ」
「お仕事に悪影響ならいる意味がありません。このお話はなかったことで」
「待て待て、辞めるな」
笑いながらそう言って腰を抱き寄せてくる一哉に凪沙は慌てる。
「いっくん! ここ会社!」
しかも社長室である。個室空間、誰もが気軽に足を踏み入れる場所ではないとはいえ……抱き合う場ではない。
「なんかメイクもいつもと違う?」
「そ、そりゃ……病院とは違うし、その……」
秘書だ。キチンと感を出すのは当たり前でいつもよりも丁寧にそして濃い目にメイクをした。いつどこでどんな人と会うかわからない。そんな時に社のイメージを自分で崩させたくはない。
「ふぅん? 唇が……いつもより赤い」
そう言って一哉が色っぽい目で見つめてくる。一哉の目が凪沙のその赤く濡れた唇を舐めるように見るので凪沙の方が生唾を飲んだ。
「い……」
ではない。社長だ、ここはオフィスで社長室で、そして自分はその秘書で……頭の中でぐるぐる整理しながらも抱きしめられる腕の中で身体を委ねる凪沙がいる。
「ん……だめ。離して?」
「突き放してみな?」
「そんなっ……」
「押し退けて振り解けばいいよ」
無茶なことを言う。凪沙が一哉を押し退けて振り払うことなど到底できるわけがないのに。
「か、会社ですっ……」
「……知ってる」
そう言ってくちびるが近付いてくる。鼻と鼻がかすかに擦れて一哉の吐息が凪沙の肌をなぞる。熱くて心地よいほどの熱は凪沙の神経を震わせる。
「ぁ、んっ……」
「オフィスでなんて声だすんだよ」
「ご、ごめんなさ……」
「凪沙のエッチ」
「なぁっ!」
自分の方がよっぽどエッチな顔とエッチな声で人を誘惑してきて責めるなどズルい! と、凪沙は思うがこの至近距離、そんな色気を放ち誘うような一哉相手になにと言い返せるのか。
「もう……いっくんのバカ」
「いいな。オフィスに凪沙がいるって」
「ンッ……」
一哉の熱い吐息がくちびるを撫で、そのまま柔らかく押しつけられる。軽く、食むように。凪沙は一哉からされるその甘噛みするようなキスがたまらなく好きだった。くちびるを可愛がるように、柔くくすぐったいような刺激を繰り返されるほど身体の奥に火をつけられる。
「だからだめ……」
だから仕事なのだ。それに今は家でもずっと一緒に過ごしている。会えていなかった五年が嘘のように一哉と過ごす時間が濃くなって凪沙こそ嬉しさの中に戸惑う気持ちが溢れそうなほどで。ずっと一緒に入れる幸せを噛みしめている。
「んんっ」
繰り返されるキスが徐々に深くなる。戯れてしていたキスだったのにいつしか舌が絡んで意識が朦朧とするような熱いキスになった。求められるとフワフワして受け入れたらクラクラして……凪沙はその思考の中で何とか一哉の身体を押し除けようと腕に力を込めた。
「は、ぁ。いっくん、もう……」
無理だ。これ以上は凪沙こそ耐えられない。このままずっと触れていたくなる。だからこそ触れているくちびるから息を吐きつつそう窘める。全くキスをやめそうにない一哉になけなしの抵抗、弱々しくも逃げようとするその腰を一哉はもう一度深く抱えなおした。
「じゃあ最後は凪沙からして?」
「ええ?」
「凪沙からしてくれたらすぐに離すよ」
そんな言い方はズルくないか? 凪沙は思うものの理性はあるのだ。オフィスで一から仕事を覚えて頑張ろうと思っている。一哉の負担を少しでも減らせるように、そばで自分に出来ることを精一杯務めたいと。だからこそ――。
――ちゅっ!
「……」
押しつけるだけの簡単なキスに一哉は眉を顰めて不満げな表情を浮かべている。
「終わり! 離して!」
「……雑じゃない?」
すぐ離すという割に腰に回る腕が離れる気配がない。凪沙は少し膨れ面で一哉を見上げるがその頬は桃色に染まったままだ。
「もう! 約束! 離して!」
甘い雰囲気はもうどこかへ行ってしまった。それを察した一哉はつまらなさそうにため息をひとつこぼすと腕の拘束を解いたのだが。
「続きは夜……」
「え?」
「夜は私からする……待ってるから早く帰ってきてね」
そして最後に頬にチュッと軽く口付けて凪沙は一哉の腕の中から抜け出すと、逃げるように社長室を出て行った。
「凪沙ってこういう雰囲気も似合うんだな」
「え……そ、そう?」
いつもとは確かに雰囲気は違う。普段になら絶対着ないような身体の線が出ている大人びたスタイル。一哉のオフィスに恥ない自分でいれているのかな、そんな気持ちで心が緩みかけた時だ。
「なんかエロいもん」
「……」
とんだ発言に凪沙は白けてしまう。エロさなど必要ないのだが、と冷静に脳内でツッコミむしろそれはいいのかと思えてくる。
「なにそれ。仕事中なんですけど」
「仕事集中できないかも」
「……それは困りますね。来栖さんに言って辞めさせてもらいます」
「なんでだよ」
「お仕事に悪影響ならいる意味がありません。このお話はなかったことで」
「待て待て、辞めるな」
笑いながらそう言って腰を抱き寄せてくる一哉に凪沙は慌てる。
「いっくん! ここ会社!」
しかも社長室である。個室空間、誰もが気軽に足を踏み入れる場所ではないとはいえ……抱き合う場ではない。
「なんかメイクもいつもと違う?」
「そ、そりゃ……病院とは違うし、その……」
秘書だ。キチンと感を出すのは当たり前でいつもよりも丁寧にそして濃い目にメイクをした。いつどこでどんな人と会うかわからない。そんな時に社のイメージを自分で崩させたくはない。
「ふぅん? 唇が……いつもより赤い」
そう言って一哉が色っぽい目で見つめてくる。一哉の目が凪沙のその赤く濡れた唇を舐めるように見るので凪沙の方が生唾を飲んだ。
「い……」
ではない。社長だ、ここはオフィスで社長室で、そして自分はその秘書で……頭の中でぐるぐる整理しながらも抱きしめられる腕の中で身体を委ねる凪沙がいる。
「ん……だめ。離して?」
「突き放してみな?」
「そんなっ……」
「押し退けて振り解けばいいよ」
無茶なことを言う。凪沙が一哉を押し退けて振り払うことなど到底できるわけがないのに。
「か、会社ですっ……」
「……知ってる」
そう言ってくちびるが近付いてくる。鼻と鼻がかすかに擦れて一哉の吐息が凪沙の肌をなぞる。熱くて心地よいほどの熱は凪沙の神経を震わせる。
「ぁ、んっ……」
「オフィスでなんて声だすんだよ」
「ご、ごめんなさ……」
「凪沙のエッチ」
「なぁっ!」
自分の方がよっぽどエッチな顔とエッチな声で人を誘惑してきて責めるなどズルい! と、凪沙は思うがこの至近距離、そんな色気を放ち誘うような一哉相手になにと言い返せるのか。
「もう……いっくんのバカ」
「いいな。オフィスに凪沙がいるって」
「ンッ……」
一哉の熱い吐息がくちびるを撫で、そのまま柔らかく押しつけられる。軽く、食むように。凪沙は一哉からされるその甘噛みするようなキスがたまらなく好きだった。くちびるを可愛がるように、柔くくすぐったいような刺激を繰り返されるほど身体の奥に火をつけられる。
「だからだめ……」
だから仕事なのだ。それに今は家でもずっと一緒に過ごしている。会えていなかった五年が嘘のように一哉と過ごす時間が濃くなって凪沙こそ嬉しさの中に戸惑う気持ちが溢れそうなほどで。ずっと一緒に入れる幸せを噛みしめている。
「んんっ」
繰り返されるキスが徐々に深くなる。戯れてしていたキスだったのにいつしか舌が絡んで意識が朦朧とするような熱いキスになった。求められるとフワフワして受け入れたらクラクラして……凪沙はその思考の中で何とか一哉の身体を押し除けようと腕に力を込めた。
「は、ぁ。いっくん、もう……」
無理だ。これ以上は凪沙こそ耐えられない。このままずっと触れていたくなる。だからこそ触れているくちびるから息を吐きつつそう窘める。全くキスをやめそうにない一哉になけなしの抵抗、弱々しくも逃げようとするその腰を一哉はもう一度深く抱えなおした。
「じゃあ最後は凪沙からして?」
「ええ?」
「凪沙からしてくれたらすぐに離すよ」
そんな言い方はズルくないか? 凪沙は思うものの理性はあるのだ。オフィスで一から仕事を覚えて頑張ろうと思っている。一哉の負担を少しでも減らせるように、そばで自分に出来ることを精一杯務めたいと。だからこそ――。
――ちゅっ!
「……」
押しつけるだけの簡単なキスに一哉は眉を顰めて不満げな表情を浮かべている。
「終わり! 離して!」
「……雑じゃない?」
すぐ離すという割に腰に回る腕が離れる気配がない。凪沙は少し膨れ面で一哉を見上げるがその頬は桃色に染まったままだ。
「もう! 約束! 離して!」
甘い雰囲気はもうどこかへ行ってしまった。それを察した一哉はつまらなさそうにため息をひとつこぼすと腕の拘束を解いたのだが。
「続きは夜……」
「え?」
「夜は私からする……待ってるから早く帰ってきてね」
そして最後に頬にチュッと軽く口付けて凪沙は一哉の腕の中から抜け出すと、逃げるように社長室を出て行った。
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