24 / 26
番外編
その後の話・5
しおりを挟む
バタバタと一日は慌ただしく過ぎていった。習うより慣れろ、それでも慣れないことが多くて初日からいい意味で疲労している。
ーー覚えることいっぱいだったな。頑張らないと。
期限付きでもその期間はきちんと仕事をこなしたい。自分のできることをひとつでも増やしてオフィスに……一哉に貢献できれば……そう思いつつ凪沙は今日習ったことを復習しつつ時計を見上げた。
ーーいっくん、遅いなぁ。もう21時回っちゃった。
早く帰ってきてね、そんな風に囁いた日中。あの時を思い出して凪沙はひとり頬を染める。一哉は早く帰ってくるのだと自惚れていた自分に余計に恥ずかしさが増した。待っているのは自分ばかり……結局、今も凪沙の方が一哉を追いかけている。
でもそれでいいと思った。自分が一哉を追いかけること、それはもう当たり前でそれが全てだったからこそ、今もそれを許されるのなら全力で追いかける。そしてもう一哉はそんな自分を両手で受け止めてくれるから。
――ガチャ、と音が鳴って身体を跳ねさせてしまう自分は飼い犬のようだと思う。さすがに扉を開けて駆け出していくことは……もうしない。
「おかえり、なさい」
言い淀んだのは扉を開けて入ってきた一哉がひどく疲れていたからだ。
「……はぁー、ただいま」
髪をゆるくかきあげながら、ネクタイを緩めつつ重いため息をこぼす一哉。疲労感滲む姿だが色気がダダ漏れなだけで凪沙は無駄にときめいている。
「遅かったね……なんかあったの?」
「んー……まぁちょっと」
話す気がない、より話すのが面倒、そんなニュアンスを感じ取りそれ以上追求するのはやめた。明日また来栖に聞けばわかるかもしれない、そう思いつつ一哉がソファに投げ捨てたスーツを手に取ったらいきなり身体が後ろに引き寄せられる。
「う、わ!」
腕を引かれたと思ったら腰に巻きつく腕が抱えるように凪沙を抱きしめてくる。背後を見上げようとしたところを待ち構えていたかのように一哉の顔とぶつかってそのまま口づけられた。
「ぅんん!」
いきなりの激しいキスに凪沙も一瞬面食らう。なにか言おうとしたくてもとてもじゃないが言葉を発する隙もない。ただ鼻から漏れる甘い声が落ちるのみ。なんなら息をするので精一杯なほどだ。
「ん、あ……」
「帰るの遅くなっちゃった」
チュッと可愛いキスを落として一哉が困ったように微笑む。
「ん……お疲れさま。ご飯食べた? お腹空いてない? 欲しいものあったら準備するよ?」
「じゃあしてもらおう」
一哉がニコリと微笑むので小首を傾げたとこだった。一哉の手が徐に伸びてきて凪沙の羽織るパーカのチャックに手がかかり……。
ーーん?
そう思った瞬間のことだった。
グッと引っ張られたと思ったらそのまま一気にチャックを引き下げられた。
ーー覚えることいっぱいだったな。頑張らないと。
期限付きでもその期間はきちんと仕事をこなしたい。自分のできることをひとつでも増やしてオフィスに……一哉に貢献できれば……そう思いつつ凪沙は今日習ったことを復習しつつ時計を見上げた。
ーーいっくん、遅いなぁ。もう21時回っちゃった。
早く帰ってきてね、そんな風に囁いた日中。あの時を思い出して凪沙はひとり頬を染める。一哉は早く帰ってくるのだと自惚れていた自分に余計に恥ずかしさが増した。待っているのは自分ばかり……結局、今も凪沙の方が一哉を追いかけている。
でもそれでいいと思った。自分が一哉を追いかけること、それはもう当たり前でそれが全てだったからこそ、今もそれを許されるのなら全力で追いかける。そしてもう一哉はそんな自分を両手で受け止めてくれるから。
――ガチャ、と音が鳴って身体を跳ねさせてしまう自分は飼い犬のようだと思う。さすがに扉を開けて駆け出していくことは……もうしない。
「おかえり、なさい」
言い淀んだのは扉を開けて入ってきた一哉がひどく疲れていたからだ。
「……はぁー、ただいま」
髪をゆるくかきあげながら、ネクタイを緩めつつ重いため息をこぼす一哉。疲労感滲む姿だが色気がダダ漏れなだけで凪沙は無駄にときめいている。
「遅かったね……なんかあったの?」
「んー……まぁちょっと」
話す気がない、より話すのが面倒、そんなニュアンスを感じ取りそれ以上追求するのはやめた。明日また来栖に聞けばわかるかもしれない、そう思いつつ一哉がソファに投げ捨てたスーツを手に取ったらいきなり身体が後ろに引き寄せられる。
「う、わ!」
腕を引かれたと思ったら腰に巻きつく腕が抱えるように凪沙を抱きしめてくる。背後を見上げようとしたところを待ち構えていたかのように一哉の顔とぶつかってそのまま口づけられた。
「ぅんん!」
いきなりの激しいキスに凪沙も一瞬面食らう。なにか言おうとしたくてもとてもじゃないが言葉を発する隙もない。ただ鼻から漏れる甘い声が落ちるのみ。なんなら息をするので精一杯なほどだ。
「ん、あ……」
「帰るの遅くなっちゃった」
チュッと可愛いキスを落として一哉が困ったように微笑む。
「ん……お疲れさま。ご飯食べた? お腹空いてない? 欲しいものあったら準備するよ?」
「じゃあしてもらおう」
一哉がニコリと微笑むので小首を傾げたとこだった。一哉の手が徐に伸びてきて凪沙の羽織るパーカのチャックに手がかかり……。
ーーん?
そう思った瞬間のことだった。
グッと引っ張られたと思ったらそのまま一気にチャックを引き下げられた。
40
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。