25 / 26
番外編
その後の話・6
しおりを挟む
ジャッ! と、いきなり着ていたパーカーのチャックを勢いよく下げられる。
「きゃあ! なに!?」
「あれ、下着てる」
「き、着るよ! いつも着てる!」
「そうなんだ。肌触りいいから直接着てるんだと思ってた」
少しお値打ちな淡い白色のルームウェア。先日ようやく手に入れたお気に入りだ。触れるだけで気持ちいい、それはそうだが直接着るには躊躇われる。薄手のインナーは身につけていたのだが。
「ちょ、ちょっと……いっくん?」
気づくとパーカーは脱がされて、一哉の手は迷いなく下も脱がしインナーに手がかかってくる。そのサクサクと脱がせる手腕に戸惑いつつも凪沙はその手を掴んだ。
「なに? ご飯は?」
「食ったよ」
「え? 食べたの?」
「来栖と食って帰ってきたよ」
なんだ、と拍子抜けしたのも束の間。
「ひゃあ!」
いきなりソファに押し倒される。
「いい、いっくん! ここ! リビング!」
「やだ?」
「やだ、とかじゃなく……やだ、というよりその……」
性急すぎやしないか? それに戸惑う凪沙だがもう自分はショーツ一枚姿にさせられている。目の前にいる一哉はまだほぼスーツ姿なのに。
「そ、それダメ……」
「それ? どれ?」
一哉は凪沙の言葉に首を傾げる。
「き、今日さ……初めて仕事してるいっくん、見た」
「……」
「スーツ姿、毎日見てたし珍しいとかなかったはずなのに、全然違って……カッコよくて。また知らないいっくん知って……ドキドキしたの。だから……」
「……」
「もうスーツ姿、余計ときめくから、やめて……」
そう言って、かぁぁ! っと自分の頬が熱くなる。日中のパリッとスーツを着こなしてオフィスにいた一哉が今は目の前でそのスーツを乱して凪沙を組み敷いている。それを下から見上げてなんとも言えない気持ちになった。
オンオフが混じり合い、直視できない。
「それ言うなら凪沙もだよなー」
「え?」
「オフィスでエロいカッコしてさ」
「……心外です。そんなカッコしてないんですけど」
なんだそれは、と一瞬で脳が冷えて冷たい声を発した凪沙に一哉が噴き出す。
「あの身体の線が出る服やめてくれる?」
「え?」
「誘ってんのかな、て思うから」
「誘ってませんが」
「他の人間が見ると思うと落ち着かないからやめて。マジで仕事にならないから」
「……」
笑いながらもどこか本気の声に聞こえて凪沙はまた頬を赤く染める。
「いっくんも、ドキドキとかした?」
肌を露わにして、なにひとつ隠さず頬を染めて見上げてくる凪沙。それがより一哉を煽っていることに気づかないのか。
「したし、今もしてる」
「え?」
「凪沙にずっとドキドキしてるよ?」
「ぁ、ん!」
かぶりつくようなキスを落とされて凪沙も細腕を一哉の背に回した。張りのあるシャツが指先に触れて衣擦れの音に胸がドキリと高鳴る。
日中見ていた一哉が、オフィスでは羨望の目で見つめられる一哉が……今自分の腕の中にいる。
帰宅して何よりもすぐに自分を求めてくる一哉がいるのだ、その優越感と充足感をなにで例えればいいのか。
胸が震える。
どうしようもないほどに……震えて止まない。
「ぁ、ん」
「……なんだ、凪沙も待ってたんじゃん」
くちびるが離れたら名残惜しくて。絡み合っていた舌が一哉を追いかけてしまう。軽く開いた口から舌先を伸ばす凪沙に一哉はクスリと笑ってそんな風に揶揄うから。
「オフィスでエッチなことするからでしょ」
「あんなのエッチなことに入らない」
「いっくんは存在がもうエッチなの!」
「……それこそ心外なんですけど」
そんな風に言い合ってふたりで噴き出した。
「ん……もっと、キスして」
せがむように、そのくちびるを差し出せば一哉は受け止めてくれる。もう凪沙自身が自信を持って言えるのだ。
――いっくんの全部、私のもの。
「あっ……」
一哉の手がショーツの上からなぞるように触れてきて腰が跳ねた。それでも逃げることはない、受け止めて受け入れる。もっととせがむほどに。
「ん……」
「濡れてる……俺のこと待ってた?」
揶揄うような言葉に凪沙は身体をフルフルと震わせつつも素直に頷いた。
「ん……待ってた」
「素直だな」
「んぁ……オフィスでも会えたから……もっと離れてるの嫌になったっ」
離れて過ごす時間がある。誰しもがそれぞれの社会で時間を過ごす。それは当たり前のことで、凪沙にとっても当たり前と受け止めていたのに。
「一緒にいられる時間が増えたら……だめ」
もっとと求めてしまう。
一緒にいられる時間をもっとと……我儘になるばかり。
「前よりずっと一緒にいられるのに、変だよね? 一緒にいられるようになったからこそ、いっくんのそばにもっといたいってなったんだよ?」
「……」
「責任、取ってよね」
拗ねるように言ったら一哉は笑った。
「困ったな」
一哉はそう言いくしゃりと笑う。それでもその笑顔はとても嬉しそうに柔らかく微笑むのだ。
「きゃあ! なに!?」
「あれ、下着てる」
「き、着るよ! いつも着てる!」
「そうなんだ。肌触りいいから直接着てるんだと思ってた」
少しお値打ちな淡い白色のルームウェア。先日ようやく手に入れたお気に入りだ。触れるだけで気持ちいい、それはそうだが直接着るには躊躇われる。薄手のインナーは身につけていたのだが。
「ちょ、ちょっと……いっくん?」
気づくとパーカーは脱がされて、一哉の手は迷いなく下も脱がしインナーに手がかかってくる。そのサクサクと脱がせる手腕に戸惑いつつも凪沙はその手を掴んだ。
「なに? ご飯は?」
「食ったよ」
「え? 食べたの?」
「来栖と食って帰ってきたよ」
なんだ、と拍子抜けしたのも束の間。
「ひゃあ!」
いきなりソファに押し倒される。
「いい、いっくん! ここ! リビング!」
「やだ?」
「やだ、とかじゃなく……やだ、というよりその……」
性急すぎやしないか? それに戸惑う凪沙だがもう自分はショーツ一枚姿にさせられている。目の前にいる一哉はまだほぼスーツ姿なのに。
「そ、それダメ……」
「それ? どれ?」
一哉は凪沙の言葉に首を傾げる。
「き、今日さ……初めて仕事してるいっくん、見た」
「……」
「スーツ姿、毎日見てたし珍しいとかなかったはずなのに、全然違って……カッコよくて。また知らないいっくん知って……ドキドキしたの。だから……」
「……」
「もうスーツ姿、余計ときめくから、やめて……」
そう言って、かぁぁ! っと自分の頬が熱くなる。日中のパリッとスーツを着こなしてオフィスにいた一哉が今は目の前でそのスーツを乱して凪沙を組み敷いている。それを下から見上げてなんとも言えない気持ちになった。
オンオフが混じり合い、直視できない。
「それ言うなら凪沙もだよなー」
「え?」
「オフィスでエロいカッコしてさ」
「……心外です。そんなカッコしてないんですけど」
なんだそれは、と一瞬で脳が冷えて冷たい声を発した凪沙に一哉が噴き出す。
「あの身体の線が出る服やめてくれる?」
「え?」
「誘ってんのかな、て思うから」
「誘ってませんが」
「他の人間が見ると思うと落ち着かないからやめて。マジで仕事にならないから」
「……」
笑いながらもどこか本気の声に聞こえて凪沙はまた頬を赤く染める。
「いっくんも、ドキドキとかした?」
肌を露わにして、なにひとつ隠さず頬を染めて見上げてくる凪沙。それがより一哉を煽っていることに気づかないのか。
「したし、今もしてる」
「え?」
「凪沙にずっとドキドキしてるよ?」
「ぁ、ん!」
かぶりつくようなキスを落とされて凪沙も細腕を一哉の背に回した。張りのあるシャツが指先に触れて衣擦れの音に胸がドキリと高鳴る。
日中見ていた一哉が、オフィスでは羨望の目で見つめられる一哉が……今自分の腕の中にいる。
帰宅して何よりもすぐに自分を求めてくる一哉がいるのだ、その優越感と充足感をなにで例えればいいのか。
胸が震える。
どうしようもないほどに……震えて止まない。
「ぁ、ん」
「……なんだ、凪沙も待ってたんじゃん」
くちびるが離れたら名残惜しくて。絡み合っていた舌が一哉を追いかけてしまう。軽く開いた口から舌先を伸ばす凪沙に一哉はクスリと笑ってそんな風に揶揄うから。
「オフィスでエッチなことするからでしょ」
「あんなのエッチなことに入らない」
「いっくんは存在がもうエッチなの!」
「……それこそ心外なんですけど」
そんな風に言い合ってふたりで噴き出した。
「ん……もっと、キスして」
せがむように、そのくちびるを差し出せば一哉は受け止めてくれる。もう凪沙自身が自信を持って言えるのだ。
――いっくんの全部、私のもの。
「あっ……」
一哉の手がショーツの上からなぞるように触れてきて腰が跳ねた。それでも逃げることはない、受け止めて受け入れる。もっととせがむほどに。
「ん……」
「濡れてる……俺のこと待ってた?」
揶揄うような言葉に凪沙は身体をフルフルと震わせつつも素直に頷いた。
「ん……待ってた」
「素直だな」
「んぁ……オフィスでも会えたから……もっと離れてるの嫌になったっ」
離れて過ごす時間がある。誰しもがそれぞれの社会で時間を過ごす。それは当たり前のことで、凪沙にとっても当たり前と受け止めていたのに。
「一緒にいられる時間が増えたら……だめ」
もっとと求めてしまう。
一緒にいられる時間をもっとと……我儘になるばかり。
「前よりずっと一緒にいられるのに、変だよね? 一緒にいられるようになったからこそ、いっくんのそばにもっといたいってなったんだよ?」
「……」
「責任、取ってよね」
拗ねるように言ったら一哉は笑った。
「困ったな」
一哉はそう言いくしゃりと笑う。それでもその笑顔はとても嬉しそうに柔らかく微笑むのだ。
40
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。