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4話 索敵

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鑑定で雑踏の中の人を遊び感覚で流し見していたら、とんでもないものが引っ掛った。

それは誘拐犯。

近頃浅い森で出没する子供を拐う輩だろうか。
オークで分かった自分の絶対防御のスキル頼りだが、屋台を楽しむ振りで追いかけてみる。

大雑把に広範囲に鑑定をしているから、対象者が消えたり現れたりしているが、それを追い接近しながら範囲を狭めて行く。

百メートルくらい人混みの中追いかけると、その人間の背中が見えて来た。
特徴を掴むと、藍染の長袖シャツに長ズボン。
ブーツは膝下の長い物。
胸当てと肩にパットは土色の革製。
シャツの脇とズボンの内股には土色の革が縫い付けて有る。
頭にも土色の革の帽子に縁は金属の鉢だ。
簡素では有るが完全な冒険者用の装備で有る。
腰には長めの山刀を差しているが、つば付きマチェーテで脇差しくらいの物。
背負子には大型のバッグなど。

金剛杖みたいなのを持っているが、両端には青銅の石突が付いている。
更に鑑定すると杖術使いの誘拐犯。

付かず離れず後をつける。

賑やかな大通りの屋台が切れた辺りで脇道に入った。
その先の坂道を降りると海沿いの道に出る。
祭りの日なのでこの辺りも人が何時もより多い。
漁に勤しむ人もいる。
暫くつけると漁師小屋の所を海の岩屋方向へと曲った。

「うっ···」
「小僧俺に何か用か」
その言葉が合図の様に岩屋から二人の男が僕の後ろに回り込んだ。

あタア~。
「バレてたのか」

「はっ、アホか」
「「クク」フハッ」
「足音が素人だからな」
抜き足差し足忍び足って言葉が頭に浮かんだよ。
「で、どうすんの誘拐犯さん」
「···ほう」
そう言うと、後ろの二人はショートソードを、つけた男は杖を構えた。

問答無用の介かよ。杖が正面からショートソードが後ろから、僕の体を突いて来る。
分かってるけど怖かった。
バチバチバチッ!!。
杖の男は少し後退りしたが、後ろの二人は弾き飛ばされて気絶した。
柄があるとはいえ電撃が通ったみたいだ。
杖の男は木の部分が長いので助かったみたい。

「······なっ何だコイツ。魔法使いか?」
かなり焦った風だ。
暫く手を出せずにいると杖を投げつけて来た。
バチーィッ。
いちおう避けたつもりだったけど、絶対防御に触れてしまった。
その刹那男は山刀を抜いて僕の腹を抉っる処まで達していた。
バシーイィッ!。

「あが、あががっ」
男は泡を吹いて痙攣し地面でビクビクしている。
青い顔で喉を掻き毟り数分して動かなく成った。
後ろの二人はどうやら息はありそうだが···。


その後僕は衛士さんを近くを歩いていた人に頼み、気絶した二人を見張っていた。
衛士が四·五人来て気絶してた二人を縛った後起こして連れて行った。
杖術の男は吐瀉物が喉に詰まり、チアノーゼを起こし窒息死したみたい。

町の衛兵詰所に冒険者ギルドの職員も来て、僕は衛士の偉いさんと冒険者ギルドの職員さんに、鑑定して男の跡をつけた事、そしてその後の顛末を詳しく話した。

それから数日衛兵詰所に泊まらされたので、宿には連絡して貰い宿泊予定はキャンセルにしてもらう。

生き残った二人の尋問結果から、誘拐犯組織は壊滅したが、何人かの子供は帰る事はなかった。
永遠に。


犯人は数名の死刑者を出し、後は一生強制労働に回されるらしい。
殺した子供達の案件が彼らの罪を大きくしたが、自業自得。


この事で僕は鑑定と強力な結界魔法の使い手として、衛兵と冒険者ギルドの上層部には知られる羽目になったよ。
仕方ないけどね。


それからしばらくして冒険者ギルドから呼び出された。

「この前の誘拐犯組織摘発の報奨金だ受け取ってくれ」
そう冒険者ギルドのサブマスからお金を革袋で渡された。
ギルマスはその件で王都へ行っているらしい。

「わっ金貨100枚も有る!」
「おう、ちゃんと数えられたな。
それじゃこれにサインしてくれ。
数年前から国が追ってた組織でな、賞金が出てたんだ」
「そうだったんですね」
「亡くなった子供達の仇も取れたしな、···ありがとよ。
事も無げに『抵抗したから殺した』って言いやがった。
思わずその場でぶん殴りそうになったよ」
「このお金そのご家族に···」
「気持ちは分かるが、それは断らせてもらう。
賞金首ってのは受け取る者も危険を承知で討伐する。
安易に報奨金を返納する事案は作っちゃ駄目なんだ。
世の中にはそれを糧にしてる奴もいるしな」
コスプレ(時代劇)の中の話がこの世界には有るのだと初めて知った。


「捜索の依頼を頼む」
「何処を捜索されるのですか?」
「南西沖にある島だ。三男が渡って帰って来ない」

服装から貴族みたいな背の高い40代の男性が捜索依頼を出しに来たみたい。

「エルファン島ですと、かなり高額に成りますがよろしいでしょうか」
「ああ確かそのような名前だった。
魔物が多く生息していて、かなり大きな島らしい。
2つのパーティーで8人くらいだと聞いている。
その全員が帰って来ないと船を出した者が屋敷に来たのだ。
もう8日になるが、当初は長くて5日の予定だった筈だ。
2隻の内の帰って来た一隻の船頭がそう言った。
一隻は島の海岸に待機している。
何かしらあったと思うからぜひ捜索してほしい」
「ギルマスに聞いてまいります。少しお待ち下さい」

ギルマス帰ってたんだ。

少ししてその貴族らしき人は個室に呼ばれて行った。

その日僕は気になったので、ゆ~ちゃん(飛行艇の名前をそう決めた)のコックピットに、宿の部屋から搭乗してAIさんにその島へ行って貰った。

「大きいね」
「はい南の森6個分は有りますね。人も安全な海岸線に2百人は住んでいる様です」
「えったった200人」
「魔物が多く安全な場所は少ないので、しかも漁場は豊かですが海の魔物を避けられる水道も一つです」
「海の魔物を避ける水道?」
「大型の海棲魔物が通れない海の道ですね。ただ岩が多く流れは速いですよ」
凄いなそんな島で漁師とかやってる人達がいるなんて、しかも畑も少しは耕してるよね。

半日は上空を飛んだけど山の中に人の気配すら感じられなかった。
「上空からは人の魔力すらも感じられないし、鑑定を広範囲にかけてもそれらしきものは無いね」
「隠れているか、既に生きてないかですね」

「···一旦戻ろうか」













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