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5話 再調査

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魔力の感知も出来ないと言う事は、既に亡くなっているのだろうか。
いやそれにしても戦った魔力の痕跡すら無い。
生きているとしたら、何故信号も出ない。
狼煙とか有るだろうに。

『ご主人様、地下に潜っているとかは?』
「えっ、洞窟とかあるの」
『あの島には自然の洞窟は有りませんが、ダンジョンが発生したなら』
「ダンジョン!」
『はい、過去にあの島では発生した事実があります』
「明日また行ってみようか」
『ですがダンジョンとなると、地上に降りて探索せねばなりません』
「ダンジョンから搭乗出来る?」
『ダンジョンは魔物の内蔵みたいなものなので可能です』
内蔵って···。

「じゃあ危険な時や寝るときは搭乗するね」
『ご主人様、救助者を搭乗させますか』
「救助者を搭乗させなければ成らないとなるとバレちゃうね。仕方無い」
『それでは救助者搭乗の登録とおっしゃって下さい』
「それは今?」
『はいもしもの時の為に』
「分かった、救助者搭乗の登録」
『···登録完了しました。
これで何かの時には、ご主人様の意思で何時でも救助者は搭乗可能ですが、同時に危険人物削除も登録お願いします』
「うん、危険人物削除登録」
『···はい完了です。
因みに危険人物はその場に置いてけ掘りになります』
「それってまずくないの?」
『救助者に危害が有れば本末転倒ですから、自業自得となります』
「厳しいね」
『そう言う世界ですので』

本当に厳しい異世界だ。


宿の部屋でAIさんと会話して2つの機能を登録した僕は、翌日朝ご飯を食べると早速宿を出て、ゆ~ちゃんに搭乗し島へ向かった。


「降機」
うわあ安全な所へ降りたとはいえ、鬱蒼とした山の密林だねえ。
結界があるから滑落とかも大丈夫らしい。
落ちたくは無いけど。

探索する事3時間。
「搭乗」  

僕は疲れ果てて飛行艇で休んでいる。
「あ~ジュースが美味い」 
でも遭難してたらこんなのも飲めなくて辛いだろうなあ。
「昼食をお取りになり、一時間の休息の後に探索を開始して下さい。
無理をしても良い事はございません。
それとアイテム鞄に10人分の食料をお入れしました」
「有難う」


昼食はカレーライスだった。
久しぶりのカレーは美味かった。
そして一時間の後に探索の為降機した。


「う~ん、無いねえダンジョン」
『この島は広いですから、簡単には見つかりません』
「何か探す手立てがないかなあ」
そういえばダンジョンは魔物の内臓と同じってAIさんは言ったよな。
中は兎も角入り口は人数人が入れる大きさなら、かなり大きな魔物ではないだろうか?。

大きな魔物索敵。
五百メートル先にでっかいのがいるね。

「うわっ、キモい!」
大きなヒルだった。
えっと中に入るの嫌なんだけど。
消化されないかなあ。
『大丈夫です。結界がありますから』
「あっそ···」
いとも簡単にAIさんは言った。
入る人の身にも成って欲しい。

巨大ヒルは動かない。
血を吸うと言うよりは、中に獲物が入るのを待つかの様に、崖に同化して口を開けているが、入り口の周りをよく見たら小さな歯が沢山有る。
噛むなよ、噛むなよ、噛むなよ。
バックン。

「ええ~!」
噛まれはしなかったが口が閉じた。
まあそりゃそうか。
「しかし明るいね」
『やはりダンジョンでしたか』
「いやいや、こんなダンジョン誰も入りたく無いし」


さて、ちょっと魔力探索掛けてみますか。
「魔力鑑定」
あっ!。
微妙にあっちで反応が有る。
「え~と、もう一度鑑定」
うんこの壁の向こうだ。

そうか大きな魔物とはいえ、普通の民家サイズだからそんなに遠くにいる訳ない。
魔物の体内で迷わされているだけだ。
だったらこの壁を。

ガッ!。
かっ硬い。
『ご主人様その剣は神剣で魔剣でもありますから、一度魔力をお通し下さい』
「へっ,そっそうなの」

僕は剣に魔力を通してみた。
「通れ!」
あっ光った。
「でや!」
ズブズブスブっと剣が入り込むと、緑の液体が溢れ出る。
「臭っ」
ゴブリンを退治した時と同じ体液。
そして同じ臭い。

そういえばゴカイとか切った時にも緑とか赤とか出るなあ。

臭いが我慢して壁の様な内壁を切って行くと少し広目の部屋に出た。
そこには壁に寄り掛かり、意識が虚ろな8人の冒険者がいた。


それぞれに栄養ドリンクを飲ませて行く。
AIさんがアイテム鞄に入れてくれたお粥のパックを開け、プラスチックのお椀に入れていく。
温かくは無いが仕方ない。
先割れスプーンを付けて皆に配る。
少し塩味の玉子粥。
美味しそうだ。
多分ほとんど何も食べてはいないのだろうから、消化の良いものでないと死ぬ危険性がある。
流石遭難救助機の食料だ。

「う~ん、ちょっと皆歩けそうも無いね。AIさん皆搭乗で」
『了解しました』

あっ、こう言う時は搭乗者席なんだ。
何故か皆席に座っている。
僕も席に座っている。
いるが、外から何やらバリバリと音がする。
コックピットに行って驚いた。
飛行艇の機銃であの巨大ヒルが細切れにされていた。


ヒルの無惨さに哀れみを覚えてしまう。
「ご主人様、魔剣を持つものはそう沢山おりません。
しかも御主人様のは神剣です。
なのであれは危険ですから処分致しました」
「そうなの?」
「はい稀にダンジョンで発見されます魔剣ですが、持つ者は十万人に一人いれば良いでしょうね。
しかもあの魔物の内壁を切るには相当の魔力量を有します。
そして神剣を持つのはご主人様唯お一人です」
「成る程(汗)、何ちゅう物もたせんねん神様」

直ぐにゆ~ちゃんと僕らは町に帰還して、海運ギルドの裏庭に降機させて貰った。
偶々人がいなかったのだ。
直ぐに海運ギルドから冒険者ギルドへ知らせてもらい、8人を海運ギルドの一室で寝かせてもらった。

8人は疲労と空腹で少しふらついてはいるが、栄養ドリンクも卵粥も食べられたから、大丈夫だろう。
あっそうだと思い、今度はスポーツドリンクを飲ませてみた。
もしかして脱水症状があるかも。
何故に気が付かないかなあ。


程なくして冒険者ギルドから職員さんと、捜索依頼を出してた貴族の男の人がこちらに来た。

それから8人は3日間海運ギルドの部屋で養生がてら、事情徴収を受けている。
僕も同室で事情を聞かれた。
その間島に残ってたもう一艘の船頭さんも帰った様だ。

僕は8人に栄養ドリンクを飲ませてあげていた時、あの貴族の男の人にお礼を言われて、ついでに助けた手順も話していた。
勿論冒険者と海運両ギルド長も一緒に。

もうねバレバレですから、いざとなれば逃げましょう、ゆ~ちゃんで。
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