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本編
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チュンチュンと小鳥の囀る声が響き、朝日がひょっこり顔を出す早朝。
私───アリス・ベネット伯爵令嬢はぼんやりとする意識の中、ゆっくりと体を起こした。
凄く懐かしい夢だったわね·······。
もう10年以上前の出来事なのに、今でもこんなに鮮明に覚えているなんて······不思議な感じだわ。
朝から気分がいい私はチリンチリンと呼び鈴を鳴らしながら、ベッドから降りた。
すると────ノックと共に数人のメイドが部屋の中へ入ってくる。
メイド達が着替えや化粧の準備を進めていく中、ある一人のメイドが私の元へやってきた。
「お嬢様、お客様がお見えです」
こんな時間にお客様······?今日は誰かが訪問してくる予定なんて、なかった筈だけど······。
「訪問者の名前は?」
「────ノア・アレクサンダー公爵令息です」
「!!」
メイドが口にした名前に、私は思わず目を見開いた。
寝起きでぼんやりしていた意識が一瞬にして、覚醒する。
────ノア・アレクサンダー公爵令息。
アレクサンダー公爵家唯一の跡取りであり、現国王陛下の甥っ子。
そして────私の婚約者。
他の誰かならともかく、ノア様の訪問は無視出来ないわね。
「ノア様を客室へ、お通しして。準備が出来次第、すぐに向かうわ」
「畏まりました」
深々と頭を下げて、退室していくメイドを見送り、私は化粧台の前に座った。
鏡に映る自分をじっと見つめる。
艶やかな黒髪に、アザレアを連想させる紫色の瞳······。
母親譲りの美しい顔立ちをした少女は鏡の中で暗い表情をしていた。
あのノア様がわざわざ我が家に足を運んでまで私に会いに来るだなんて·······なんだか、嫌な予感がするわ。
◇◆◇◆
その後、すぐに身支度を整えた私は無駄に豪華な客室で、ノア・アレクサンダーと顔を合わせていた。
私の前に座る金髪碧眼の美青年は偉そうにふんぞり返っている。
予想はしていたけど、突然家に押し掛けておいて謝罪もないとは·······礼儀知らずにも程があるわ。
現国王陛下の甥だから何をしても許されるとでも思っているのかしらね·····。
「早速ですが、我が家を訪問した理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「いや、その前に私を長時間待たせたことに対する謝罪が先じゃないか?」
「謝罪、ですか······?」
「ああ、そうだ。私はベネット伯爵家を訪れてから、今に至るまで一時間近く待たされているんだぞ?謝罪するのは当然のことだろう?」
ティーカップ片手に肩を竦める彼はこちらを馬鹿にするように、鼻で笑った。
いや、何で私が責められないといけないの·····?
待たされた云々の前に、突然訪問して来たのはそっちだし······それもこんな朝早く。
非があるのはどちらかと言うと、ノア様の方だと思うけど·······。
「それは大変失礼致しました。事前に知らせがなかったものですから、身支度を整えるのに時間が掛かってしまいました。ノア様が伝書鳩一つでも飛ばして下されば、到着前に身支度を整えることが出来たのですが·····」
「わ、私が悪いとでも言うのか!?」
「いえ、そういう訳ではありません。ただ事前にお知らせ頂ければ、こちらも迅速に対応出来るとお伝えしたかっただけですわ」
そう言って、ニッコリ微笑めば金髪碧眼の青年は少し怯んだ。
が、しかし·····すぐにいつもの調子に戻る。
「そ、そうか。なら、今度からはそうしよう······まあ、『今度』があるかどうか分からないが·····」
最後の方に意味深なセリフを吐いたノア様は場の空気を変えるため、コホンと咳払いする。
少し遠回りしてしまったが、ようやく本題に入る気になったらしい。
「時間が勿体ないので、本題に入らせてもらう。アリス、君との婚約を────白紙に戻して欲しい」
私───アリス・ベネット伯爵令嬢はぼんやりとする意識の中、ゆっくりと体を起こした。
凄く懐かしい夢だったわね·······。
もう10年以上前の出来事なのに、今でもこんなに鮮明に覚えているなんて······不思議な感じだわ。
朝から気分がいい私はチリンチリンと呼び鈴を鳴らしながら、ベッドから降りた。
すると────ノックと共に数人のメイドが部屋の中へ入ってくる。
メイド達が着替えや化粧の準備を進めていく中、ある一人のメイドが私の元へやってきた。
「お嬢様、お客様がお見えです」
こんな時間にお客様······?今日は誰かが訪問してくる予定なんて、なかった筈だけど······。
「訪問者の名前は?」
「────ノア・アレクサンダー公爵令息です」
「!!」
メイドが口にした名前に、私は思わず目を見開いた。
寝起きでぼんやりしていた意識が一瞬にして、覚醒する。
────ノア・アレクサンダー公爵令息。
アレクサンダー公爵家唯一の跡取りであり、現国王陛下の甥っ子。
そして────私の婚約者。
他の誰かならともかく、ノア様の訪問は無視出来ないわね。
「ノア様を客室へ、お通しして。準備が出来次第、すぐに向かうわ」
「畏まりました」
深々と頭を下げて、退室していくメイドを見送り、私は化粧台の前に座った。
鏡に映る自分をじっと見つめる。
艶やかな黒髪に、アザレアを連想させる紫色の瞳······。
母親譲りの美しい顔立ちをした少女は鏡の中で暗い表情をしていた。
あのノア様がわざわざ我が家に足を運んでまで私に会いに来るだなんて·······なんだか、嫌な予感がするわ。
◇◆◇◆
その後、すぐに身支度を整えた私は無駄に豪華な客室で、ノア・アレクサンダーと顔を合わせていた。
私の前に座る金髪碧眼の美青年は偉そうにふんぞり返っている。
予想はしていたけど、突然家に押し掛けておいて謝罪もないとは·······礼儀知らずにも程があるわ。
現国王陛下の甥だから何をしても許されるとでも思っているのかしらね·····。
「早速ですが、我が家を訪問した理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「いや、その前に私を長時間待たせたことに対する謝罪が先じゃないか?」
「謝罪、ですか······?」
「ああ、そうだ。私はベネット伯爵家を訪れてから、今に至るまで一時間近く待たされているんだぞ?謝罪するのは当然のことだろう?」
ティーカップ片手に肩を竦める彼はこちらを馬鹿にするように、鼻で笑った。
いや、何で私が責められないといけないの·····?
待たされた云々の前に、突然訪問して来たのはそっちだし······それもこんな朝早く。
非があるのはどちらかと言うと、ノア様の方だと思うけど·······。
「それは大変失礼致しました。事前に知らせがなかったものですから、身支度を整えるのに時間が掛かってしまいました。ノア様が伝書鳩一つでも飛ばして下されば、到着前に身支度を整えることが出来たのですが·····」
「わ、私が悪いとでも言うのか!?」
「いえ、そういう訳ではありません。ただ事前にお知らせ頂ければ、こちらも迅速に対応出来るとお伝えしたかっただけですわ」
そう言って、ニッコリ微笑めば金髪碧眼の青年は少し怯んだ。
が、しかし·····すぐにいつもの調子に戻る。
「そ、そうか。なら、今度からはそうしよう······まあ、『今度』があるかどうか分からないが·····」
最後の方に意味深なセリフを吐いたノア様は場の空気を変えるため、コホンと咳払いする。
少し遠回りしてしまったが、ようやく本題に入る気になったらしい。
「時間が勿体ないので、本題に入らせてもらう。アリス、君との婚約を────白紙に戻して欲しい」
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