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本編
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私との婚約を白紙に、ですか·····。
これはまた随分と·······思い切った申し出ですね。
冷めた目でノア様を見つめていれば、彼は頼んでもないのに婚約解消の理由を力説し始めた。
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!」
「はあ·····」
「婚約者の君には本当に申し訳ないと思っている!だが、どうしても自分の気持ちに嘘はつけない!私が愛しているのは君ではなく、クレアなんだ!」
「そうですか······」
「君に辛い決断を迫っている自覚はある!だが、どうか受け入れて欲しい!私はクレアを心の底から愛してるんだ!婚約を解消してくれ!」
「───いいですよ」
「そうだよな。いきなり、婚約解消を突き付けられても困·····って、えぇ!?良いのか!?」
私があっさり婚約解消を承認したのがそんなに可笑しいのか、彼は大きく目を見開いた。
予想外だと言わんばかりの表情に、私は内心溜め息を零す。
ノア様は私に好かれているとでも思っていたのかしら?
だとしたら、相当鈍い方ね。
私はノア様を慕うどころか、嫌っていたのに······。
そもそも、この婚約は互いの両親が勝手に結んだもの。
言うならば、これは政略結婚だ。
決して、私の意思で結ばれたものではない。
婚約解消できるなら、喜んでさせて貰おう。
「ええ、構いません。この婚約に執着などはありませんから」
「そ、そうか······」
婚約解消を快諾されたのがプライドにさわったのか、ノア様はなんとも言えない表情を浮かべた。
つくづく、面倒臭い男である。
「ところで────婚約解消の理由はどうなさるおつもりですか?」
私とノア様の婚約はあくまで政略結婚。
当人達の意思だけで解消出来るものじゃない。
この婚約を白紙に戻すには、両家の当主を納得させられるだけの理由を用意しなければならない。
当然ながら、『真実の愛を見つけたから~』なんて、ふざけた理由で当主は納得しないだろう。
果たして、彼はどんな説得材料を用意しているのだろうか?
「あぁ、その事なんだが────アリスに何らかの問題があって、婚約を解消するに至ったという事にしてくれないか?」
「·······はいっ?」
ケロッとした顔で、とんでもない事を口走るノア様。
世間知らずな彼は自分の言い分がどれだけ理不尽なものなのか、理解していないらしい。
適齢期間近の18歳で、婚約解消されるだけでも貴族令嬢としては痛手なのに······その上、婚約解消の理由をこちらに非があるようにしろですって······?
そんなことしたら、私の人生が滅茶苦茶になるどころか、ベネット伯爵家自体が危険に晒されるわ!リスクが大きいとか、そんな次元の話じゃない!!
それなら、『真実の愛に生きたいから』という理由で公爵家から一方的に婚約を解消された方がまだマシだ。
「申し訳ありませんが、そのお願いは聞けません。ベネット伯爵家へのダメージが大き過ぎます」
私はフツフツと沸き上がる怒りを抑え、出来るだけ冷静に対応した。
が、しかし······この男は尚も食い下がる。
「そこをなんとか頼む······!私の名誉を守ってくれ······!!」
彼は両膝に手を置き、座った状態で勢いよく頭を下げた。
プライドの高い彼にしては誠意を見せた方だ。
だが·······自分の名誉を守るために、他人の名誉を傷付けようとする男の誠意など微塵も心に響かない。
「誠に申し訳ありませんが、何度頼まれようとその願いは叶えられません。お引き取り下さい」
私は扉指さし、冷たくそう言い放った。
これはまた随分と·······思い切った申し出ですね。
冷めた目でノア様を見つめていれば、彼は頼んでもないのに婚約解消の理由を力説し始めた。
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!」
「はあ·····」
「婚約者の君には本当に申し訳ないと思っている!だが、どうしても自分の気持ちに嘘はつけない!私が愛しているのは君ではなく、クレアなんだ!」
「そうですか······」
「君に辛い決断を迫っている自覚はある!だが、どうか受け入れて欲しい!私はクレアを心の底から愛してるんだ!婚約を解消してくれ!」
「───いいですよ」
「そうだよな。いきなり、婚約解消を突き付けられても困·····って、えぇ!?良いのか!?」
私があっさり婚約解消を承認したのがそんなに可笑しいのか、彼は大きく目を見開いた。
予想外だと言わんばかりの表情に、私は内心溜め息を零す。
ノア様は私に好かれているとでも思っていたのかしら?
だとしたら、相当鈍い方ね。
私はノア様を慕うどころか、嫌っていたのに······。
そもそも、この婚約は互いの両親が勝手に結んだもの。
言うならば、これは政略結婚だ。
決して、私の意思で結ばれたものではない。
婚約解消できるなら、喜んでさせて貰おう。
「ええ、構いません。この婚約に執着などはありませんから」
「そ、そうか······」
婚約解消を快諾されたのがプライドにさわったのか、ノア様はなんとも言えない表情を浮かべた。
つくづく、面倒臭い男である。
「ところで────婚約解消の理由はどうなさるおつもりですか?」
私とノア様の婚約はあくまで政略結婚。
当人達の意思だけで解消出来るものじゃない。
この婚約を白紙に戻すには、両家の当主を納得させられるだけの理由を用意しなければならない。
当然ながら、『真実の愛を見つけたから~』なんて、ふざけた理由で当主は納得しないだろう。
果たして、彼はどんな説得材料を用意しているのだろうか?
「あぁ、その事なんだが────アリスに何らかの問題があって、婚約を解消するに至ったという事にしてくれないか?」
「·······はいっ?」
ケロッとした顔で、とんでもない事を口走るノア様。
世間知らずな彼は自分の言い分がどれだけ理不尽なものなのか、理解していないらしい。
適齢期間近の18歳で、婚約解消されるだけでも貴族令嬢としては痛手なのに······その上、婚約解消の理由をこちらに非があるようにしろですって······?
そんなことしたら、私の人生が滅茶苦茶になるどころか、ベネット伯爵家自体が危険に晒されるわ!リスクが大きいとか、そんな次元の話じゃない!!
それなら、『真実の愛に生きたいから』という理由で公爵家から一方的に婚約を解消された方がまだマシだ。
「申し訳ありませんが、そのお願いは聞けません。ベネット伯爵家へのダメージが大き過ぎます」
私はフツフツと沸き上がる怒りを抑え、出来るだけ冷静に対応した。
が、しかし······この男は尚も食い下がる。
「そこをなんとか頼む······!私の名誉を守ってくれ······!!」
彼は両膝に手を置き、座った状態で勢いよく頭を下げた。
プライドの高い彼にしては誠意を見せた方だ。
だが·······自分の名誉を守るために、他人の名誉を傷付けようとする男の誠意など微塵も心に響かない。
「誠に申し訳ありませんが、何度頼まれようとその願いは叶えられません。お引き取り下さい」
私は扉指さし、冷たくそう言い放った。
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