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第一章

協力者の正体②

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「もう起きたのか?まだ眠っていてもいいぞ」

 そう言って、シーツを掛け直すのは────銀髪の美丈夫だった。
ベッドの脇に腰掛ける彼は優しい手つきで私を寝かせ、ポンポンとお腹を叩く。
寝かせつける気満々彼の前で、私はパチパチと瞬きを繰り返した。

「お、お父様いつからそちらに……?」

「さっきだ」

「えっ?じゃあ、もう朝に……?」

「いや、まだ深夜三時だ」

「あれ?でも、朝に到着するって……」

山を越えて最短ルートで来たから、予定より早く着いた」

 深夜の山越えを苦とも思っていない様子の父に、私は絶句した。
いくら世間知らずの私でも、夜間の移動……それも登山などは危険だと知っているから。

「それでは、かなり疲れているのでは?お父様こそ、お休みになった方が……」

「娘の顔を見ていれば、疲れなど吹き飛ぶ」

 『全く問題ない』と言ってのけ、父はそっと私の目元を覆った。
早く寝なさい、とでも言うように。

 お父様の手、ひんやりしていて気持ちいい。

 スッと目を細める私は、眠気に誘われるまま意識を手放した。
────そして再び目を覚ますと、もうそこに父の姿はなくて……ちょっとだけ、ガッカリする。
でも、ずっと寝顔を見られるよりかはマシかと思い、気持ちを切り替えた。

 とりあえず、身支度を済ませなきゃ。

 と思い立ち、侍女を呼んで黄色のドレスに着替える。
ついでに髪も結ってもらい、いつもより少し豪華なアクセサリーを身に付けた。
『お父様と久々の食事だから』と気合いを入れ、私は食堂へ向かう。
その途中、遠征帰りの騎士と何度かすれ違い、挨拶を交わした。

 皆、疲れ切った顔をしていたわね……まあ、予定より早く帰ってこられて良かったと口を揃えて言っていたけど。
やっぱり、住み慣れた土地を離れるのは嫌みたい。

 『寂しくなっちゃうものね』と思いつつ、私は食堂へ足を踏み入れた。
と同時に、絶句する。
だって────昨日出会ったあの人が、食卓に居たから。

「えっ?あの、これは……?」

 不機嫌そうな父とニコニコ笑顔の青年を交互に見やり、私は戸惑う。
何が起こっているのかイマイチ掴めずにいると、青年がおもむろに席を立った。

「やあ、こうして会うのは初めてだね。私は────グランツ・レイ・ルーチェ。一応、この国の第一皇子だよ。先日はウチの弟が失礼したね」
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