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第二章

勇気②

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「それと────ありがとな、守ってくれて」

 『すげぇ勇気のいる行動だっただろ』と言い、ルカはスッと目を細めた。

「マジで成長したな」

 『偉いぞ』と手放しで褒めるルカに、私は小さく首を縦に振る。
緩む頬を必死に押さえながら。
『せ、戦闘中なんだから集中しないと』と自制しつつ、私は弓を引く。
まだ恐怖も不安も残っているが、不思議と緊張はしておらず……私はいつものように風の矢を放った。
すると、またルカが矢をサポートしてくれる。
おかげで、魔物の体に大きな穴を開けることに成功した。

「あれ?いつもより、威力が上がってますね」

 『練習のときはもうちょっと弱かったのに』と首を傾げ、イージス卿はまじまじと弓を眺める。
相変わらず勘の鋭い彼に、私はビクッと肩を揺らした。

「ぁ……えっと、いつもより多めに魔力を込めたからかもしれないわ」

「なるほど!それは嬉しい誤算ですね!魔道具は基本、決まった効力しか発揮しないものなので!」

 『凄い!』と素直に感心し、イージス卿はキラキラと目を輝かせる。
子供のような純粋さを見せる彼に、私は少しばかり胸を痛めた。
『嘘なの……ごめんなさい』と心の中で謝りながら。

「と、ところで戦況はどうかしら?この調子なら、お父様の到着まで持ち堪えられそう?」

 居た堪れない気持ちになって話題を変えると、イージス卿は間髪容れずに首を縦に振る。

「はい!ベアトリスお嬢様やバハル様のおかげで大分楽になりましたし、余裕で持ち堪えられると思いますよ!それどころか、公爵様が到着する前に魔物を片付けられるかもしれません!」

 今はこちらが優勢であることを明言し、イージス卿はニコニコと笑う。
もう先程までの緊迫した空気はなかった。

「とはいえ、お嬢様の安全が最優先なので引き続き時間稼ぎに徹します!」

「分かったわ」

 無茶をして皆の身に何かあっては困るため、イージス卿の指示に従った。
『討伐よりも、まずは全員生存』と考えつつ、私は弓を引く。
その瞬間、イージス卿が弾かれたように顔を上げた。
パチパチと瞬きを繰り返し、少し考え込むような動作を見せると、私の前に立つ。

「全員、一度下がってください」
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