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第六章.Let's get married
74.ジョエルはどこ?
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村の宿屋の私の部屋のベッドで目覚めた。シュバルツのところから、元の時間軸に戻ってきたことを実感した。
海の城での出来事は唐突で不思議で終わったが、クロの工場の出来事を通して、ガラリと印象は変わった。誰の仕業かは知らないが、これは偶然ではない。私とシュバルツが、出会うように仕組まれているとしか思えない。そう思わずにはいられなかった。
元の時間軸に戻るのは、決められた時間内ではなかった。名前を付けた時と、創薬を教えた時だ。他にも何か条件があったかもしれないが、それらの条件を満たすと戻るのかもしれない。
シュバルツが滞在した場所に行くと、シュバルツのところへ飛んで、条件を満たすと戻る。どうしたらそんなことが仕組めるのかは不明だが、そうだと仮定すると、しっくりと?!
大変だ! 大変だ! ジョエルは、どうなった?
私は、慌てて部屋から飛び出し、ジョエルを探した。
私が出した食べ物や家具や服は戻って来なかった。ならば、巻き込まれたジョエルは、どうなる?
宿のジョエルの部屋は空だった。食堂にもいない。 ちょっと待って。部屋にも食堂にもいない時って、何処にいるのよ!
創薬ルームで、村人Dを捕まえた。
「ダコタさん、ジョエルを知らない?」
「あ、シャルルちゃん、おはよう。身体は痛くない? シャルルちゃん、1人で外に倒れてたんだよ。ジョエルさんもキーリーさんも帰ってきてないけど、1人で帰って来たの?」
なんてことだ! キーリーたちはいい。多分、普通に工場跡付近にいる。だが、ジョエルは。
「あとさ。ずっと指摘しなきゃと思ってたんだけど、この村の人、皆、黒髪だよね。染料で染めてないよね」
「そうだね。初回は染めたけど、後は地毛だね。シャルルちゃんは、シャルル様でしょ? 言ってもいいかと思ってたけど、ジョエルさんたちに見つからずに話す機会がなかったからさ。他の人には、秘密だよ」
初回は、謎のキャンペーン企画で無料で村人に配ったが、売る分も足りてない現在、村人に配布をしていない。だが、いつまでもみんなは黒髪だった。あんな高い染料を買う村人はいない。でも、未だにずっと黒髪を保って、染料すごいなー、って言っていた。
今回の事件で知ったことだが、村人はクロ製造工場の末裔だ。その後、関係ない血も混ざったかもしれないが、黒髪で普通だ。村人全員美男美女だった。おじいちゃんも赤ちゃんも全員美形だ。とんでもない村だった。
シュバルツ、やりやがったな。
それはともかく、ジョエルだ。どこへ行けば見つかるか知らないが、とりあえず外に出る。そして見つけた。
「なんじゃこりゃあ!」
村の真ん中に、銅像が立っていた。聞かなくてもなんとなくわかる。私とシュバルツの全身像だ。手を繋いで幸せそうに見つめ合っている。
シュバルツ、何がしたいんだよ! 結婚云々よりも、壁画をヤメロと言うべきだった。シュバルツの力が増えるのに比例して、段々と作品が大袈裟になっている。シュバルツには会いたいが、毎回こんなん作られるなら、考えちゃうよ!
見なかったことにして、村の門に向かって走る。すると、虎型タケルがこちらに走ってきた。近くまで来たら、人型になった。
「タケル! ジョエルを探して」
「える? すぐそこ」
「え?」
タケルは、銅像のあたりを指さしている。ジョエルはいないのに。
「るるがいなくなったときと、おなじ」
ということは、やっぱり!
「キーリーと先生は?」
「しらない。おいてきた」
「キーリーのところに連れて行って。もうどうしたらいいか、わからないの」
タケルを虎に戻して、ハーネスを付けて騎乗する。もう怖いなんて言ってられない。全速力で走ってもらう。魔獣の本気は、かなり速い。ジョエルへの愛では乗り越えられなかった。
「おい。シャルル、起きろ! シャル!」
目を開けると、キーリーがいた。また倒れたのかな? 何があったんだっけ? と考え始めたところで覚醒した。
「ジョエルを助けて! お願い!!」
許可も取ってないけど、シュバルツの世界で起きたことを、ざっくりかいつまんで説明した。細かいところは、どうでもいい。ジョエルを置いて来てしまったことと、シュバルツの世界に行き来するための条件の考察を伝えられれば、それでいい。
「まあ、一旦、落ち着け。異常事態だが、とりあえずあいつは、放っておいても死なねぇ。助けに行く条件がそれなら、急いでも迎えに行ける時点が変わる訳でもねぇ。白髪男は、そこにいる。大丈夫だ、落ち着け」
なんでキーリーは、そんなに冷静でいられるんだよ! 言ってることは正しいかもしれないけど、人間ってそういう物じゃないでしょう?
「落ち着けないよ。ジョエルがいないんだよ。ジョエルに甘えてた、私の所為だよ」
「おい、先生。シュバルツに遭遇しそうな場所はあるか?」
「お嬢さん、博士は何歳くらいだった?」
「わからない。前よりは、ちょっと大きくなってた。クロの工場で、ツガイを待ってるところだった」
「それならば、結婚式場はどうだろう? 博士は、ツガイにならずに結婚していた。博士が、お嬢さん以外と結婚するとは、思えない。式場には、お嬢さんがいたハズだよね」
そうだった! 次に会うと、シュバルツと結婚しなくちゃいけないんだった。シュバルツは、ひいじいさんか何かなのに、なんでだよ。シャルルは、シャルルの子孫ってこと? 次は、子どもを産むまで帰れないの? 産んで育てないで置いて帰るの? なんだそれ!
「ちょっと待て、結婚って何だ。シャルルが結婚しなきゃなんねぇなら、ジョエルなんて帰って来なくていいだろう。ジョエルだって、きっとそう言うぞ」
「そんなことないよ。ジョエルは、お母様の大事な息子だよ。ああ、ジョエル! どうしたらいいの? 先生、他の場所はないの?」
「最短でなくても良ければ、あるかもしれないが。博士は、基本城にいた。城に行けば、またあちらに行けるのであれば、そちらの方が早いかもしれない」
「よし、城に行くか」
そのまま海街まで移動することになった。だけど、城じゃあダメなんじゃないかなぁ? という気はした。村で転移できなかったからだ。
シュバルツの軌跡を追うだけならば、村も転移ポイントだと思う。でも、今のところ、そんな現象は起きてない。
それに比べて、結婚式なら私がいそう度が、非常に高い。だが、結婚してどうする。
無人島で2人きりの時は、他に相手がいないよね、と思ったこともあった。だが、結婚したって、どうせ何日も一緒にいられないし、シュバルツは多分、血縁だ。従兄弟同士で結婚する感覚だろうか? 私は、双子の弟ができた気分でいたのだが。
先生の話では結婚をしたようなので、適当に式だけあげてこちらに戻ってくるのか。話せばわかってくれるのを信じて、断るべきだろうか。断って嫌われたら、シャルルは生まれて来ないんじゃなかろうか。
どうしたら、いいのだろう! シュバルツのスペックが高すぎるので、勝てる気がしないのが、問題だ。
海の城での出来事は唐突で不思議で終わったが、クロの工場の出来事を通して、ガラリと印象は変わった。誰の仕業かは知らないが、これは偶然ではない。私とシュバルツが、出会うように仕組まれているとしか思えない。そう思わずにはいられなかった。
元の時間軸に戻るのは、決められた時間内ではなかった。名前を付けた時と、創薬を教えた時だ。他にも何か条件があったかもしれないが、それらの条件を満たすと戻るのかもしれない。
シュバルツが滞在した場所に行くと、シュバルツのところへ飛んで、条件を満たすと戻る。どうしたらそんなことが仕組めるのかは不明だが、そうだと仮定すると、しっくりと?!
大変だ! 大変だ! ジョエルは、どうなった?
私は、慌てて部屋から飛び出し、ジョエルを探した。
私が出した食べ物や家具や服は戻って来なかった。ならば、巻き込まれたジョエルは、どうなる?
宿のジョエルの部屋は空だった。食堂にもいない。 ちょっと待って。部屋にも食堂にもいない時って、何処にいるのよ!
創薬ルームで、村人Dを捕まえた。
「ダコタさん、ジョエルを知らない?」
「あ、シャルルちゃん、おはよう。身体は痛くない? シャルルちゃん、1人で外に倒れてたんだよ。ジョエルさんもキーリーさんも帰ってきてないけど、1人で帰って来たの?」
なんてことだ! キーリーたちはいい。多分、普通に工場跡付近にいる。だが、ジョエルは。
「あとさ。ずっと指摘しなきゃと思ってたんだけど、この村の人、皆、黒髪だよね。染料で染めてないよね」
「そうだね。初回は染めたけど、後は地毛だね。シャルルちゃんは、シャルル様でしょ? 言ってもいいかと思ってたけど、ジョエルさんたちに見つからずに話す機会がなかったからさ。他の人には、秘密だよ」
初回は、謎のキャンペーン企画で無料で村人に配ったが、売る分も足りてない現在、村人に配布をしていない。だが、いつまでもみんなは黒髪だった。あんな高い染料を買う村人はいない。でも、未だにずっと黒髪を保って、染料すごいなー、って言っていた。
今回の事件で知ったことだが、村人はクロ製造工場の末裔だ。その後、関係ない血も混ざったかもしれないが、黒髪で普通だ。村人全員美男美女だった。おじいちゃんも赤ちゃんも全員美形だ。とんでもない村だった。
シュバルツ、やりやがったな。
それはともかく、ジョエルだ。どこへ行けば見つかるか知らないが、とりあえず外に出る。そして見つけた。
「なんじゃこりゃあ!」
村の真ん中に、銅像が立っていた。聞かなくてもなんとなくわかる。私とシュバルツの全身像だ。手を繋いで幸せそうに見つめ合っている。
シュバルツ、何がしたいんだよ! 結婚云々よりも、壁画をヤメロと言うべきだった。シュバルツの力が増えるのに比例して、段々と作品が大袈裟になっている。シュバルツには会いたいが、毎回こんなん作られるなら、考えちゃうよ!
見なかったことにして、村の門に向かって走る。すると、虎型タケルがこちらに走ってきた。近くまで来たら、人型になった。
「タケル! ジョエルを探して」
「える? すぐそこ」
「え?」
タケルは、銅像のあたりを指さしている。ジョエルはいないのに。
「るるがいなくなったときと、おなじ」
ということは、やっぱり!
「キーリーと先生は?」
「しらない。おいてきた」
「キーリーのところに連れて行って。もうどうしたらいいか、わからないの」
タケルを虎に戻して、ハーネスを付けて騎乗する。もう怖いなんて言ってられない。全速力で走ってもらう。魔獣の本気は、かなり速い。ジョエルへの愛では乗り越えられなかった。
「おい。シャルル、起きろ! シャル!」
目を開けると、キーリーがいた。また倒れたのかな? 何があったんだっけ? と考え始めたところで覚醒した。
「ジョエルを助けて! お願い!!」
許可も取ってないけど、シュバルツの世界で起きたことを、ざっくりかいつまんで説明した。細かいところは、どうでもいい。ジョエルを置いて来てしまったことと、シュバルツの世界に行き来するための条件の考察を伝えられれば、それでいい。
「まあ、一旦、落ち着け。異常事態だが、とりあえずあいつは、放っておいても死なねぇ。助けに行く条件がそれなら、急いでも迎えに行ける時点が変わる訳でもねぇ。白髪男は、そこにいる。大丈夫だ、落ち着け」
なんでキーリーは、そんなに冷静でいられるんだよ! 言ってることは正しいかもしれないけど、人間ってそういう物じゃないでしょう?
「落ち着けないよ。ジョエルがいないんだよ。ジョエルに甘えてた、私の所為だよ」
「おい、先生。シュバルツに遭遇しそうな場所はあるか?」
「お嬢さん、博士は何歳くらいだった?」
「わからない。前よりは、ちょっと大きくなってた。クロの工場で、ツガイを待ってるところだった」
「それならば、結婚式場はどうだろう? 博士は、ツガイにならずに結婚していた。博士が、お嬢さん以外と結婚するとは、思えない。式場には、お嬢さんがいたハズだよね」
そうだった! 次に会うと、シュバルツと結婚しなくちゃいけないんだった。シュバルツは、ひいじいさんか何かなのに、なんでだよ。シャルルは、シャルルの子孫ってこと? 次は、子どもを産むまで帰れないの? 産んで育てないで置いて帰るの? なんだそれ!
「ちょっと待て、結婚って何だ。シャルルが結婚しなきゃなんねぇなら、ジョエルなんて帰って来なくていいだろう。ジョエルだって、きっとそう言うぞ」
「そんなことないよ。ジョエルは、お母様の大事な息子だよ。ああ、ジョエル! どうしたらいいの? 先生、他の場所はないの?」
「最短でなくても良ければ、あるかもしれないが。博士は、基本城にいた。城に行けば、またあちらに行けるのであれば、そちらの方が早いかもしれない」
「よし、城に行くか」
そのまま海街まで移動することになった。だけど、城じゃあダメなんじゃないかなぁ? という気はした。村で転移できなかったからだ。
シュバルツの軌跡を追うだけならば、村も転移ポイントだと思う。でも、今のところ、そんな現象は起きてない。
それに比べて、結婚式なら私がいそう度が、非常に高い。だが、結婚してどうする。
無人島で2人きりの時は、他に相手がいないよね、と思ったこともあった。だが、結婚したって、どうせ何日も一緒にいられないし、シュバルツは多分、血縁だ。従兄弟同士で結婚する感覚だろうか? 私は、双子の弟ができた気分でいたのだが。
先生の話では結婚をしたようなので、適当に式だけあげてこちらに戻ってくるのか。話せばわかってくれるのを信じて、断るべきだろうか。断って嫌われたら、シャルルは生まれて来ないんじゃなかろうか。
どうしたら、いいのだろう! シュバルツのスペックが高すぎるので、勝てる気がしないのが、問題だ。
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