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愛を掴み取れ<その後のオマケ話:ロイ視点>
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「気になりますね。」
峠に行った私はその光景を目にした。目の前には動物を捕まえて食べた後が残っていた。
「この辺りは肉食の動物は少ないんだ。狼やキツネと思いたいが、これは、調べたほうがよさそうだな。」
「魔獣の仕業だと厄介ですね。」
「はぐれなんかだと助かるんだが、群れだと面倒だ。まあ、あんたが始末してくれるなら問題ないだろうが。」
「取りあえず森を回って痕跡を追います。」
「そっちはお願いする。私は獣族の鑑定家を連れて鼻効きをしてもらうよう手配する。もう一人腕のいいハンターがいると聞いたが?」
「え?あ、か……彼女は私の妻なので。」
「妻?女?珍しいな。しかし、腕が立つなら出来れば協力していただきたい。」
「そうですか。聞いておきます。」
久しぶりのハンターの仕事に胸が高鳴るのも正直な話だった。塞ぎがちのスウだっていい気分転換になるかもしれない。動物を襲うくらいならスウと私には動作もない魔物に違いなかった。だから、すんなりスウがこの話を引き受けると思っていた。
「ごめん、調子が悪くて」
「え!? スウ? 大丈夫なのですか!? 診療所にすぐ行きましょう!」
「いや、診療所には行ったんだ。病気じゃないから平気なんだけど、魔物退治は無理だから」
「見立てはどうだったんですか?」
「えと……。その、初潮だって……」
「え?」
女性にそれがあることは知っていた。それが理由で女性はハンターになれない。魔獣が血のにおいを異常に嗅ぎつけるからだ。喜んでいいやら、どうしていいか気まずい空気が流れた。
「ごめん、腹痛くてさ。奥でちょっと休んででていいか?」
「あ、はい」
スウがホントに女性になったことを一番わかっていないのはどうやら私の方かもしれない。青ざめた顔のスウが二階に消えていくのを黙って見守ることしかできなかった。
***
スウに生理が来ると一週間ほどはセックスができない。
別にスキンシップはあるのだから平気なのだが、スウは気になるらしくやたら『口で……』とか『胸で……』とか、私の心配をしてくれたのだが私はスウの体が心配でそれどころではない。なんたって、血が流れるのだ、血が……。
体調が優れなくなると気持ちも落ち込むようで、スウは益々塞ぎがちだ。腹部の痛みにも慣れないだろうし仕方ない。安静にするように言ってお腹に毛布をかけて出かけようとするとスウが私の袖をキュッとひっぱった。
「スウ?」
「あ、……その」
「どうかしましたか?」
「……なんでもない」
袖を放してスウは毛布に潜ってしまった。どうかしたのだろうか。情緒不安定になるとは聞いていたけれど……。
「少し出かけてきます」
ポンポンと毛布の上から頭をなでるように軽く合図して部屋をでて、少し考える。不安そうなスウの顔。ここのところずっと。聞いても「なんでもない」しか返って来ないのでお手上げだ。ここは非常にやりたくなかった方法だが愛しいスウの為だ。そう思って私は町へと向かった。
「で、今頃、のこのこ私のところに話を聞きに来たと」
「すいません」
まず初めにスウが悩んでいると教えてくれたトッチさんのところを訪ねた。訪ねてきた私を見て心底驚いたようだが、ここじゃ目立つからと店の奥でお茶を振舞ってくれた。
「スウちゃんと話してないのかい?」
「聞いても、なんでもないとしか言わないのです」
「はあ。そうか。あの子も難儀な子だよ。あんたたちがどんなにお互いを思い合ってるかは私にもわかるよ。人嫌いなエルフが私に聞きにくるくらいなんだもの、相当大事にしてるんだろ」
「それは、もちろん」
「スウちゃんもね、あんたを相当大事に思ってる……で、想いすぎてこじらせてんのさ。あんたの為に、そしてあんたを繋ぎ止めておきたい自分の為に」
「私の為に?」
「どうしても子どもが欲しんだって」
「え……」
そう言えば、と変な体操や食事のことが思いだされた。前に軽くその話題に触れた時は『出産こえーだろなぁ……』と言っていたのに。
峠に行った私はその光景を目にした。目の前には動物を捕まえて食べた後が残っていた。
「この辺りは肉食の動物は少ないんだ。狼やキツネと思いたいが、これは、調べたほうがよさそうだな。」
「魔獣の仕業だと厄介ですね。」
「はぐれなんかだと助かるんだが、群れだと面倒だ。まあ、あんたが始末してくれるなら問題ないだろうが。」
「取りあえず森を回って痕跡を追います。」
「そっちはお願いする。私は獣族の鑑定家を連れて鼻効きをしてもらうよう手配する。もう一人腕のいいハンターがいると聞いたが?」
「え?あ、か……彼女は私の妻なので。」
「妻?女?珍しいな。しかし、腕が立つなら出来れば協力していただきたい。」
「そうですか。聞いておきます。」
久しぶりのハンターの仕事に胸が高鳴るのも正直な話だった。塞ぎがちのスウだっていい気分転換になるかもしれない。動物を襲うくらいならスウと私には動作もない魔物に違いなかった。だから、すんなりスウがこの話を引き受けると思っていた。
「ごめん、調子が悪くて」
「え!? スウ? 大丈夫なのですか!? 診療所にすぐ行きましょう!」
「いや、診療所には行ったんだ。病気じゃないから平気なんだけど、魔物退治は無理だから」
「見立てはどうだったんですか?」
「えと……。その、初潮だって……」
「え?」
女性にそれがあることは知っていた。それが理由で女性はハンターになれない。魔獣が血のにおいを異常に嗅ぎつけるからだ。喜んでいいやら、どうしていいか気まずい空気が流れた。
「ごめん、腹痛くてさ。奥でちょっと休んででていいか?」
「あ、はい」
スウがホントに女性になったことを一番わかっていないのはどうやら私の方かもしれない。青ざめた顔のスウが二階に消えていくのを黙って見守ることしかできなかった。
***
スウに生理が来ると一週間ほどはセックスができない。
別にスキンシップはあるのだから平気なのだが、スウは気になるらしくやたら『口で……』とか『胸で……』とか、私の心配をしてくれたのだが私はスウの体が心配でそれどころではない。なんたって、血が流れるのだ、血が……。
体調が優れなくなると気持ちも落ち込むようで、スウは益々塞ぎがちだ。腹部の痛みにも慣れないだろうし仕方ない。安静にするように言ってお腹に毛布をかけて出かけようとするとスウが私の袖をキュッとひっぱった。
「スウ?」
「あ、……その」
「どうかしましたか?」
「……なんでもない」
袖を放してスウは毛布に潜ってしまった。どうかしたのだろうか。情緒不安定になるとは聞いていたけれど……。
「少し出かけてきます」
ポンポンと毛布の上から頭をなでるように軽く合図して部屋をでて、少し考える。不安そうなスウの顔。ここのところずっと。聞いても「なんでもない」しか返って来ないのでお手上げだ。ここは非常にやりたくなかった方法だが愛しいスウの為だ。そう思って私は町へと向かった。
「で、今頃、のこのこ私のところに話を聞きに来たと」
「すいません」
まず初めにスウが悩んでいると教えてくれたトッチさんのところを訪ねた。訪ねてきた私を見て心底驚いたようだが、ここじゃ目立つからと店の奥でお茶を振舞ってくれた。
「スウちゃんと話してないのかい?」
「聞いても、なんでもないとしか言わないのです」
「はあ。そうか。あの子も難儀な子だよ。あんたたちがどんなにお互いを思い合ってるかは私にもわかるよ。人嫌いなエルフが私に聞きにくるくらいなんだもの、相当大事にしてるんだろ」
「それは、もちろん」
「スウちゃんもね、あんたを相当大事に思ってる……で、想いすぎてこじらせてんのさ。あんたの為に、そしてあんたを繋ぎ止めておきたい自分の為に」
「私の為に?」
「どうしても子どもが欲しんだって」
「え……」
そう言えば、と変な体操や食事のことが思いだされた。前に軽くその話題に触れた時は『出産こえーだろなぁ……』と言っていたのに。
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