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ガイ様は王都に戻っても会いに来てくれると約束した。
交際しようと言ってくれたのが夢みたいで体がフワフワ浮いている気さえした。だが、そんな浮ついたまま部屋に入るとケイさんが部屋でしゃがんでいるのが見えた。
「ケイさん!?」
「……ルネ」
「どうしたんですか!? ひとまず、ベッドに行きましょう」
急いで駆け寄るとふらふらしたケイさんをベッドに運んだ。
「ルネ……ルネ……!」
ケイさんは私のシャツをぎゅっと掴んで泣いている。シャツはガイ様のものを貰ったものだった。
「……ルネとは違う匂いがする」
「そ、それは」
「まさか、団長と寝たの?」
「あ、あの、その……」
あれをセックスしたと言えるのかは分からないが繋がったのは確かだったのでケイさんの言葉に返せなかった。
「ダメよ、ルネ。上位種でも特に竜種はダメなの。竜種は『運命の番』というものがあるのだから。知ってるでしょう? 例えどんなに愛し合えてもそれが現れたら竜種は運命を選ぶの。それでなくとも上位種は私たちの事なんてこれっぽっちも考えていない。生まれながらに婚約者がいる身なのよ。私が今までどこにいたと思う? 元旦那に都合の良いように抱かれてきたのよ! アイツ、もう一人子供が欲しいって、私を、私を!」
「ケ、ケイさん……」
「私は子供を産む道具なんかじゃないわ! しかも生まれたのが猫種だったらどうなのよ! 捨てるに決まっているわ! 私を捨てたくせに、これ以上苦しませるなんて、人間じゃない!」
ケイさんの言葉に『ガイ様はそうじゃない』と言えなかった。ケイさんだって結婚当初はとても大事にされていたと聞いていたからだ。愛されていると信じて子供を産んだらあっさりと捨てられたとケイさんが言っていた。現にケイさんの元旦那さんには今立派な同じ虎種の妻がいる。
「のこのこついて行った私が悪かったのよ。……子供に会わせてやるって言われて。悔しい、悔しいよ、ルネ……馬鹿なの、迎えに、もしかしたら……私を迎えに来てくれたのかもって……」
震えるケイさんを抱きしめる。なんて悪い男なのだろう。可哀想なケイさん……。
私たち下位種の扱いは酷い。魔法も使えない弱い存在だ。上位種にしてみれば子供が生まれやすいだけの種だ。
上位種でも特に竜種は強くて魔法に秀でている。そして、国の王になれるのはその中でも黄金の竜だけだった。王は世襲制ではない。突然生まれる黄金の竜だけにその資格がある。そして『運命の番』から産まれるのが黄金竜だった。今の王も運命の番から産まれた黄金竜で飛びぬけた魔力を持って生まれている。今の王はまだ運命の番には出会っておらず、現在は獅子種のお妃さまを貰っている。――当然運命が訪れるまでのつなぎの妃だと言われていた。
ケイさんが落ち着くまでずっと背中をさすった。私も同じ道を辿る未来だと分かっているのに私はガイ様を拒絶することは出来ない。
それから、ガイ様は週末ごとに私に会いに来てくれた。皆の目が怖かったので逢瀬は隠れてした。ケイさんには『ルネがそれでいいならいいと思う』と言われている。既に体は繋げてしまったが執拗に体を迫られることも無かった。会う度にガイ様を好きだと言う気持ちが止められそうになかった。人目がつかないところ限定だったがデートもした。流石竜種は空も魔法で飛べて山や海なども連れて行ってくれた。
「ルネ、舌を出して。そう、そうして俺の真似をして」
その週末も山頂近くのお花畑に連れて行ってくれた。岩の上で私が作ったお弁当でランチを済ませてからガイ様とキスをした。初めの性急さなどその後は微塵も見せずにゆっくりと関係を進めてくれていた。
「胸を見せて」
その言葉にゆっくりと服の前を寛げて胸を見せるとガイ様がそこに顔を埋める。大きな手で優しく掴まれて悪戯っ子のような瞳で私を窺っている。人差し指が胸の先をつぶすようにコリコリと刺激されるとぷっくりと乳首が立つのが恥ずかしい。
「あ、んんっ」
「ルネは敏感で可愛いな」
「ふ、う」
その日は、あれ以来触られていなかった下肢にもガイ様の手が伸びた。ショーツの上から軽く指で撫ぜられると体がびくりと跳ねた。
「まだ、怖いか? それとも痛むか?」
心配そうに聞かれて私は首を横に振った。
「痛くもないし、怖くもありません」
デートの度に少しづつ体に触れられはしたが最後まですることはなかった。
「今日は……いいか?」
ガイ様にそう言われて頷いた。きっとガイ様が今まで付き合ってきた女性とは比べようもなく私はお子様なのだと思う。我慢させるつもりは無かったのだが随分時間をかけてもらった気がした。面倒だと思わなかったのかな。大切に想ってもらえているのだろうか。ちょっとしたことで期待してしまう。本当に私の事を想ってくれているのではないかと。
「ガイ様、あの、す、好きです……」
覚悟してそう、告白する。でも決まってガイ様の答えは
「嬉しいよ、ルネ」
だった。
交際しようと言ってくれたのが夢みたいで体がフワフワ浮いている気さえした。だが、そんな浮ついたまま部屋に入るとケイさんが部屋でしゃがんでいるのが見えた。
「ケイさん!?」
「……ルネ」
「どうしたんですか!? ひとまず、ベッドに行きましょう」
急いで駆け寄るとふらふらしたケイさんをベッドに運んだ。
「ルネ……ルネ……!」
ケイさんは私のシャツをぎゅっと掴んで泣いている。シャツはガイ様のものを貰ったものだった。
「……ルネとは違う匂いがする」
「そ、それは」
「まさか、団長と寝たの?」
「あ、あの、その……」
あれをセックスしたと言えるのかは分からないが繋がったのは確かだったのでケイさんの言葉に返せなかった。
「ダメよ、ルネ。上位種でも特に竜種はダメなの。竜種は『運命の番』というものがあるのだから。知ってるでしょう? 例えどんなに愛し合えてもそれが現れたら竜種は運命を選ぶの。それでなくとも上位種は私たちの事なんてこれっぽっちも考えていない。生まれながらに婚約者がいる身なのよ。私が今までどこにいたと思う? 元旦那に都合の良いように抱かれてきたのよ! アイツ、もう一人子供が欲しいって、私を、私を!」
「ケ、ケイさん……」
「私は子供を産む道具なんかじゃないわ! しかも生まれたのが猫種だったらどうなのよ! 捨てるに決まっているわ! 私を捨てたくせに、これ以上苦しませるなんて、人間じゃない!」
ケイさんの言葉に『ガイ様はそうじゃない』と言えなかった。ケイさんだって結婚当初はとても大事にされていたと聞いていたからだ。愛されていると信じて子供を産んだらあっさりと捨てられたとケイさんが言っていた。現にケイさんの元旦那さんには今立派な同じ虎種の妻がいる。
「のこのこついて行った私が悪かったのよ。……子供に会わせてやるって言われて。悔しい、悔しいよ、ルネ……馬鹿なの、迎えに、もしかしたら……私を迎えに来てくれたのかもって……」
震えるケイさんを抱きしめる。なんて悪い男なのだろう。可哀想なケイさん……。
私たち下位種の扱いは酷い。魔法も使えない弱い存在だ。上位種にしてみれば子供が生まれやすいだけの種だ。
上位種でも特に竜種は強くて魔法に秀でている。そして、国の王になれるのはその中でも黄金の竜だけだった。王は世襲制ではない。突然生まれる黄金の竜だけにその資格がある。そして『運命の番』から産まれるのが黄金竜だった。今の王も運命の番から産まれた黄金竜で飛びぬけた魔力を持って生まれている。今の王はまだ運命の番には出会っておらず、現在は獅子種のお妃さまを貰っている。――当然運命が訪れるまでのつなぎの妃だと言われていた。
ケイさんが落ち着くまでずっと背中をさすった。私も同じ道を辿る未来だと分かっているのに私はガイ様を拒絶することは出来ない。
それから、ガイ様は週末ごとに私に会いに来てくれた。皆の目が怖かったので逢瀬は隠れてした。ケイさんには『ルネがそれでいいならいいと思う』と言われている。既に体は繋げてしまったが執拗に体を迫られることも無かった。会う度にガイ様を好きだと言う気持ちが止められそうになかった。人目がつかないところ限定だったがデートもした。流石竜種は空も魔法で飛べて山や海なども連れて行ってくれた。
「ルネ、舌を出して。そう、そうして俺の真似をして」
その週末も山頂近くのお花畑に連れて行ってくれた。岩の上で私が作ったお弁当でランチを済ませてからガイ様とキスをした。初めの性急さなどその後は微塵も見せずにゆっくりと関係を進めてくれていた。
「胸を見せて」
その言葉にゆっくりと服の前を寛げて胸を見せるとガイ様がそこに顔を埋める。大きな手で優しく掴まれて悪戯っ子のような瞳で私を窺っている。人差し指が胸の先をつぶすようにコリコリと刺激されるとぷっくりと乳首が立つのが恥ずかしい。
「あ、んんっ」
「ルネは敏感で可愛いな」
「ふ、う」
その日は、あれ以来触られていなかった下肢にもガイ様の手が伸びた。ショーツの上から軽く指で撫ぜられると体がびくりと跳ねた。
「まだ、怖いか? それとも痛むか?」
心配そうに聞かれて私は首を横に振った。
「痛くもないし、怖くもありません」
デートの度に少しづつ体に触れられはしたが最後まですることはなかった。
「今日は……いいか?」
ガイ様にそう言われて頷いた。きっとガイ様が今まで付き合ってきた女性とは比べようもなく私はお子様なのだと思う。我慢させるつもりは無かったのだが随分時間をかけてもらった気がした。面倒だと思わなかったのかな。大切に想ってもらえているのだろうか。ちょっとしたことで期待してしまう。本当に私の事を想ってくれているのではないかと。
「ガイ様、あの、す、好きです……」
覚悟してそう、告白する。でも決まってガイ様の答えは
「嬉しいよ、ルネ」
だった。
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