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1章
【35】テルティア誕生会
しおりを挟む王都に帰って来て、着替えてまた出掛ける。
みんなでカタスティマ・ジューイットに行ってルーシの初報酬でお買い物。
「何にするか決まった?」
王都への帰り道でも考えていたけど思い付かなかったみたい。
まぁ、考えてる時間、気晴らしになってたから良かったかな。
「じゃぁ、テルティアにプレゼント買って上げたらどう?」
明日はテルティアの誕生会。確かにプレゼントあったら喜ぶわね。きっと。
「うん、プレゼントにする。でも、どんなのがいいんだろう」
「着いてから考えてもいいんじゃない?」
カタスティマ・ジューイットで女の子にあげる様な品なんてあるのかなとも思ったけど、取り敢えず行って見ますか。
「いらっしゃいませ。あ、皆さんこんにちわ」
「こんにちわ。ちょっと商品見せて下さい」
「ええ。ご遠慮なく」
ラプシモが迎えてくれる。
セドが彼女と何やら話してる間にリネット付き添いで並んでる品を見て回る。
洋服とか布製品も揃ってるからそれなりな物があるかも。
「テルティア様へのプレゼントをお探しなんですって?」
セドと話終えたラプシモが話し掛けてくれた。
「そうなんです。ルーシからと、わたし達からとで。何かありますか?」
「そうですね、でしたら丁度良いのがありますよ。まだお店に並べて無いのでちょっと待ってて下さい」
ラプシモがそう言って奥から持って来たのは端がレースの白いハンカチと、これまた裾がレースの白い手袋だった。
「素材はリッツェルマンさん方の手袋や、エイミラットさんの衣装のリボンと同じ何ですけど、最近やっとこう言ったレースに出来る様になったんですよ」
鉄が織り込まれてるって奴ね。
鉄を織り込むのはラプシモのスキルだったりするのかな?
鉄が入ってると黒っぽく成りそうだけど、これは真っ白で可愛いし、いざとなれば防御にも使える優れもの。
「うん!可愛い。これがいい」
「そうね。わたしも良いと思う」
他のメンバーも見て、次々と賛成する。
「ルーシがハンカチで、わたし達が手袋にしよっか」
「いいけど、ちょっと一品物感欲しくない?刺繍入れて貰う事って出来ますか?」
「ええ。可能ですよ」
ヴィオラ、良い提案するじゃないの。
「どんな刺繍にします?」
「ナナチャがいい!」
ルーシがピンと来たのか即答する。
「ナナチャ?ウサギって事かしら」
「うん」
「ちょっと待ってね、今書いて見るから」
ラプシモには絵心があって、座ってるウサギの横姿を可愛くデフォルメして書いてくれた。
「可愛い」
ルーシが満足そうな笑顔を見せる。
「良いじゃない」
みんなも良さげ。
「ルーシ、手袋にも同じ刺繍して貰ってもいい?」
「もちろん!」
「じゃぁ、お願い出来ますか」
「畏まりました。直ぐに仕上げますので、お時間頂けますか?」
明日渡したいの分かってるから頑張ってくれるみたい。
ラプシモも優しいなぁ。
「その間にギルド寄って、ルーシのパーティー登録済ませちゃおうか」
「あたし、用があるから抜けるわ」
そこからヴィオラが別行動。
登録は簡単な手続きで済むものだったけど、みんなに認められたって感じがして嬉しかった。
ルーシもそうだっただろうな。
カタスティマ・ジューイットに戻ると作業は終わってて確認させてくれた。
ハンカチの一角と手袋の裾の外側に1ヶ所づつ、絵に書いてくれた通りの刺繍が施されている。
「可愛いね」
「うん。可愛い」
「宜しければプレゼント用にお包みしますね」
ラプシモが女性らしい丁寧な梱包をサービスでしてくれる。
「喜んでくれるといいですね」
「うん。ありがとう」
プレゼントを受けとると、帰り道ルーシはずっとホクホクした笑みを浮かべていた。
テルティアの誕生日会は昼から。
昼からってアバウトなお誘いだったから遅刻とかないんだろうけど、着いた時には何やら始まっている雰囲気。
「いらっしゃいませ」
中年のメイドさんが出迎えてくれる。
「すみません、遅れてしまいましたか?」
「いえ。ご親族様方が早めに始められただけで、決してお遅れになったわけではございませんから、お気になさらないで下さい」
それはひと安心。
裏庭に通されると、バーベキュー的な事をやっていた。
親族がって言ってたけど、見る限りガイウス邸の皆さんと、ジークリットさん、メルヴィルさん、エミリーしか見当たらない。
親戚は母方だけかしら。
昨日本邸で本チャン催されてるから父方はそっちで出席したのかもね。
今日は身内だけとか言ってたから貴族は来ないよ的な。
「皆さん、いらっしゃい」
ガイウスさんが気付いてロジィさんと共に来た。
ジークリットさんも気付いて、肉に噛り付きながら手を上げて挨拶してくれる。
「あ、みんな!」
テルティアが駆け寄ってくる。
淡いピンク色のドレス。肩が大きく開いてて大人っぽいのにスカートは膝が見える丈で、前から後ろにかけて長くなっていてヒラヒラしてる。
大人と子供の混合みたいな衣装が幼さの残る金髪美人に良くマッチしている。
「来てくれてありがとう!」
ヒールは低いけどおしゃれな靴履いててちょっと歩き辛そう。
それにしても、テルティアの耳ってあんなに尖ってたかしら。
「テルティアおめでとう」
「とても素敵なドレスね」
「ありがとう」
「耳は受紋の影響?」
「うん。加護授かったら尖っちゃった」
気恥ずかしそうに両耳を触る。それで一瞬、上目使いになって可愛かった。
リネットみたいに翼が生えたり、ナミルみたいに毛むくじゃらになる人も居るくらいだから大した変化じゃないけど、どう捉えるかは本人次第よね。
「可愛いね」
と笑顔でルーシ。
「ホント?」
「うん。とっても似合ってる」
「ありがと」
今のでコンプレックスがチャームポイントに変わったわね。
さすがルーシ。
「ネックレスも素敵ね」
胸には金色の半透明なガラスなのか宝石なのかペンダント。
ドロップカットだから比較しにくいけど、彼女の瞳より大きいわ。
「お父様から貰ったの」
カナリア石って言って、受紋のお祝いに贈るのが貴族の習慣なんですって。
「ロジバールが現地まで行って良い品を選んで来てくれたんですって」
あ、それでロジィさんは旅してたのね。
「ワタシ達からも、はいプレゼント」
「え、ありがとう」
貰えると思ってなかったみたいで、少し驚いてる。
「ルーシからもあるのよね」
とリネット。
「うん。はい」
「ルーシが初めて稼いだお金で買ったのよ」
とヴィオラ。
「わぁ、嬉しい! 開けていい?」
テルティアはルーシのから開けた。
「可愛い!ウサギの刺繍だ。ナナチャみたい」
続いてリネット達のも開ける。
「あ、こっちにもウサギ!」
「ルーシの選んだ刺繍が可愛かったから真似しちゃった」
「うん。可愛い。ありがとう、大事にするね」
「良かったねテルティア。 皆さんありがとうございます」
とガイウスさん。
「料理も色々用意してますので、皆さんも召し上がって下さい。早くしないとジークリットに全部食べられてしまいますから」
「食えるかそんなに!」
超いじられ役のジークリットさんが居るからガイウスさんも何だか普段より楽しそう。
ジークリットさんがまだ面識のないメンバーをメルヴィルさんに紹介してくれた後は、各々談笑してる。
セドはジークリットさんと難しい顔してるから仕事絡みかな。
メルヴィルさんに表情を注意されてる。
テルティアはニコラにヒソヒソと耳打ちしてる。魔法か加護の事でしょうね。
徐々に来賓者が増えて来て対応に追われてるからしっかり話せてないみたいだけど。
訪れるのがガイウスさんの仕事絡みの大人ばかりね。部下とかはテルティアも顔見知りではあるみたいだけど、同年代がいない。
友達居ないのかしら?
あ、友達も貴族か。
夕方には来賓さん達は帰って行き、アタシ達とそれより前から居た親族だけになった。
そろそろお開きになりそう。
「それじゃぁ、第2部始めますか」
とガイウスさん。まだ何かあるの?
それが合図だったのかホールケーキが運ばれてくる。
アタシの知り得るこの国の食事からすると、あのケーキは希少で高価よきっと。
テーブルに置かれたケーキには『ルーシおめでとう』のプレート。
「遅くなったけど、ルーシもお誕生日おめでとう」
「「「おめでとう」」」
ルーシは呆気に取られてる。アタシもビックリ。
「ビックリした? ルーシの受紋て私達と旅してる最中だったじゃない。その時祝ってあげられ無かったから、今日一緒に祝おうってなってたの」
そんな話しになってたのね。
「いいの?ボク、家族じゃないけど‥‥」
「家族じゃなきゃ祝っちゃいけない訳じゃないぞ」
とジークリットさん。
そうね。その通りよルーシ。
「後見人は親代わりだから、僕は家族みたいなものじゃない?」
とガイウスさんが言うと、リネットがルーシの前に来てしゃがむ
「それなら私達も受紋に立ち会ったんだから家族みたいなものよ」
「それに同じパーティーの仲間になったんだから、これから家族同然の付き合いになるね」
とセドも言う。
すると、ルーシの目がうるみ出して、顔がくしゃくしゃになる。
苦しそうと言うか、辛そうと言うか、そんな表情今までする事なかったから、みんな少し戸惑ってる。
「ルーシどうしたの?」
「うぅ、うれしいの‥‥ ボク、家族いないから‥‥」
リネットが抱き締める。
自分のじゃない家族の記憶が頭にあって、悩んでたものね。
アタシも最近まで知らなかったし、独りで寂しかったのよね。
リネット。今日は許すから、もっと強く抱き締めてあげて‥‥
「‥‥これからは私達がいるよ」
「‥‥うん。ありがと、う」
ルーシの目から大粒の涙がこぼれる。
みんながルーシを温かく見つめてくれる。
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