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◇大恋愛がしたいのに③
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「私、名前がひなたなのに雨女だから皮肉だって話をしていたの。この人も自分は雨男だって言ってたのに、名前を見て? 日下だよ! 日下来人……“お日様の下に来る人”。しかも会社も“サンシャイン”。面白いよね」
私もこの人も、なんの因果だろう。
お日様に好かれているような名前なのに、実は雨に好かれているなんて。
あらためてそう考えたら、お互い皮肉すぎて笑えてきた。
「日の下だから、会社の名前をサンシャインにしたんだろ」
窪田さんがそう教えてくれた。
「そうなんですか?!」
「……たぶんな。創業者は父親で、そいつは二代目らしいから」
あぁ、なるほど。そうでなければ三十二歳という若さで副社長になどなれるはずがない。
彼は父親の跡を継いで、いずれは大企業の社長になる人なのだろう。
「いいですよねぇ~、若きイケメン副社長。ひなたさん、絶対狙い目ですよ!」
「でも……もうここには来ないんじゃないかな。私たちとは違う世界の人だもん」
いわゆる、お金持ちの令息なのだ。
宝石を扱うように、ご両親から大切に育てられたに違いない。
ほら、経歴のところにもアメリカへ留学経験有りと書いてある。
帝王学を学ぶなど、小さいころから英才教育を受けてきたのだろう。
そうやって立派な人間に育て上げられた人間と、一般庶民の私とでは最初から住む世界が違う。
「でも、ハンカチ返しに来るって言ってたじゃないですか」
「……そうだけど」
「じゃあ、万が一来たら連絡先を聞いてくださいね!」
「万が一、ね。でも来ないと思うよ」
渋々私が要求を受け入れると、萌奈ちゃんは満足そうににっこりと微笑んだ。
連絡先を聞いても教えてもらえるとは限らないし、彼女は私になにを期待しているのだろう。
「こら、寺沢! あんまり梅宮をけしかけるなよ。本当にあの男とどうにかなったりしたら、さすがに棚野が気の毒だ」
窪田さんの言葉に、萌奈ちゃんも「それもそうですね~」などと言って同調する。
「アイツ、丹沢がいなくなってから梅宮にべったりだもんな。わかりやすいわ」
「ほんとに。ひなたさんはモテモテですよね」
私はそれを聞き、即座にブンブンと手を振って否定した。
「モテてないよ。みんななにか誤解してる」
「誤解? 棚野のこともそうだって言うならキツい冗談だな」
窪田さんにフンッと鼻で笑われても、自分がモテていると自覚したことは一度もない。
至って普通の、彼氏のいないアラサー女子だと思っている。
「ほら、噂をすれば来たぞ。棚野だ」
そう言われ、視線を入り口のほうへ向けると、「こんにちは」と今日も爽やかな笑みをたたえて棚野さんが現れた。
私もこの人も、なんの因果だろう。
お日様に好かれているような名前なのに、実は雨に好かれているなんて。
あらためてそう考えたら、お互い皮肉すぎて笑えてきた。
「日の下だから、会社の名前をサンシャインにしたんだろ」
窪田さんがそう教えてくれた。
「そうなんですか?!」
「……たぶんな。創業者は父親で、そいつは二代目らしいから」
あぁ、なるほど。そうでなければ三十二歳という若さで副社長になどなれるはずがない。
彼は父親の跡を継いで、いずれは大企業の社長になる人なのだろう。
「いいですよねぇ~、若きイケメン副社長。ひなたさん、絶対狙い目ですよ!」
「でも……もうここには来ないんじゃないかな。私たちとは違う世界の人だもん」
いわゆる、お金持ちの令息なのだ。
宝石を扱うように、ご両親から大切に育てられたに違いない。
ほら、経歴のところにもアメリカへ留学経験有りと書いてある。
帝王学を学ぶなど、小さいころから英才教育を受けてきたのだろう。
そうやって立派な人間に育て上げられた人間と、一般庶民の私とでは最初から住む世界が違う。
「でも、ハンカチ返しに来るって言ってたじゃないですか」
「……そうだけど」
「じゃあ、万が一来たら連絡先を聞いてくださいね!」
「万が一、ね。でも来ないと思うよ」
渋々私が要求を受け入れると、萌奈ちゃんは満足そうににっこりと微笑んだ。
連絡先を聞いても教えてもらえるとは限らないし、彼女は私になにを期待しているのだろう。
「こら、寺沢! あんまり梅宮をけしかけるなよ。本当にあの男とどうにかなったりしたら、さすがに棚野が気の毒だ」
窪田さんの言葉に、萌奈ちゃんも「それもそうですね~」などと言って同調する。
「アイツ、丹沢がいなくなってから梅宮にべったりだもんな。わかりやすいわ」
「ほんとに。ひなたさんはモテモテですよね」
私はそれを聞き、即座にブンブンと手を振って否定した。
「モテてないよ。みんななにか誤解してる」
「誤解? 棚野のこともそうだって言うならキツい冗談だな」
窪田さんにフンッと鼻で笑われても、自分がモテていると自覚したことは一度もない。
至って普通の、彼氏のいないアラサー女子だと思っている。
「ほら、噂をすれば来たぞ。棚野だ」
そう言われ、視線を入り口のほうへ向けると、「こんにちは」と今日も爽やかな笑みをたたえて棚野さんが現れた。
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