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第6章 デイエル 統治者
第3話 ジル・オーデイン視点
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アイシャと結婚してからデイエルとは疎遠になった。デイエルは前から異様に醒めきったところがあった。
俺はそんな性質も愛したが、俺がアイシャに欲望を抱いたことをデイエルは敏感に悟って、嫌悪し始めた。
デイエルは醜い嫉妬を抱き始めた。俺が嫌悪している女の面をデイエルが持っていたとは・・驚愕していた。
俺が原因だと悟った俺は目をふせた。
見たくなかったのだ。
デイエルは必死で怒りを抑えながらも手が震えていた。
その後、デイエルは地位の高い老人の貴族の元へ養子縁組をした。俺は驚愕したが、このまま従者として埋もれるよりはいいかもしれないと思って彼の出世を内心祝った。
だがその道のりは決して順調ではなかったようだ。
数年後、新しい養子の事故死と、老人の老衰死。 時期が重なっている。これは偶然か?俺は不安になった。
まさか・・あの可愛いデイエルが・・
俺は間抜けにも俺に向けられたデイエルの純粋で可愛い面だけを信じていた。
狡猾で醒めた面もあることは分かっていたはずなのに・・
デイエルは辛酸を舐めたらしく、かつてのデイエルの愛らしさはなくなり、冷ややかな美貌をもった男になった。
デイエルが継いだ家は発展した。だがその分邪魔な敵も多く彼は容赦なく葬った。
彼は領土を収める統治者として成長していた。
久しぶりに森の館で彼と逢瀬した時、彼はすっかり変わっていた。
どこか残忍な目をした美しい男。
俺はかつて愛した弟のような恋人を惜しんだ。
「ぼくは変わったかい。ジル。ぼくはぼくなりに生きただけだよ。ジル。」
「ああ。お前は野望があった。お前は見事に自分の夢を叶えるだけに自分に忠実に生きた。
その成功は大したものだと思うぞ。デイエル。」
「ふん。君は愛らしい者が好きだったからね。もう僕の事は愛していないの?」
デイエルは分かり切ったことを言った。
俺は失望した。「デイエル。俺は弟のようなお前を愛していた。しかしもうお前は子どもじゃない。戦う男だ。
野望や野心に満ちた男だ。俺はもうお前を愛していない。」
デイエルは不思議にも裏切られた子どものような表情をした。
お前だってわかっていたはずなのに・・
「そんなに奥さんが良かった?女嫌いだったくせに。男しか愛せないんじゃなかったの。なんで女なの?」
デイエルは嫉妬深く詮索し始めた。まるで嫉妬深く貪欲な醜い女だ。
俺は身勝手にもデイエルを疎ましく思った。そしてぞっとした。直感的にわかった。
こいつはやはり老人や養子を殺している。人殺しの目だ。
目が違っている。
俺は無意識にアイシャを妻を庇った。
「妻に近づくな。」
俺は牽制した。デイエルは俺と妻にとって敵になるかもしれない。
「妻は立派な女だ。良き母親になれる器だ。オーデイン家にとっても必要な存在になりつつある。」
「悔しいが父の目は正しかった。俺の子を孕むのは彼女が一番望ましい女だ。俺も気に入っている。」
俺は正直にアイシャを妻として受け入れた。俺の子を孕む女として母として繋ぎ止めたかった。
欲を満たす俺だけの女でいてほしかった。
俺はアイシャとの性交や、触れあいを愛していた。
強制とはいえ、アイシャを知るたびに俺は女の綺麗な面、美しい面、柔らかな面、母親としての包容力に赤子のように満足した。
俺は身勝手だ。男にも汚い面、醜悪な面があると解っていたはずなのに・・
俺は男でも女でも醜い面があると分かった。 唯、俺は女の嫌なところを見すぎたから、身勝手にも裏切られたと女を嫌悪し恨んでいたのだ。
俺が馬鹿だった。人間である限り綺麗なばかりだけじゃないのに・・
なのに俺はアイシャを慕っている。勿論アイシャも醜い面はあるだろう。嫌な面もあるだろう。だがアイシャはそれを上回る魅力と包容力があった。
デイエルは悪いほうに変わった。
だんだん狡猾で貪欲で残忍な目をする美しい男になった。
俺の手には負えない化け物になるかも知れない。
俺は人間は良くも悪くも変わる生き物であることを知った。
運命は皮肉だ。かつての恋人を嫌悪し、敵になるかも知れないと危惧するなんで・・
俺は悟った。俺も醜い人間だ。身勝手で卑怯で弱い人間だ。
デイエルは俺の拒絶の言葉を暗い暗い目で見た。それがデイエルとの恋人しての最後の別れだった。
俺はそんな性質も愛したが、俺がアイシャに欲望を抱いたことをデイエルは敏感に悟って、嫌悪し始めた。
デイエルは醜い嫉妬を抱き始めた。俺が嫌悪している女の面をデイエルが持っていたとは・・驚愕していた。
俺が原因だと悟った俺は目をふせた。
見たくなかったのだ。
デイエルは必死で怒りを抑えながらも手が震えていた。
その後、デイエルは地位の高い老人の貴族の元へ養子縁組をした。俺は驚愕したが、このまま従者として埋もれるよりはいいかもしれないと思って彼の出世を内心祝った。
だがその道のりは決して順調ではなかったようだ。
数年後、新しい養子の事故死と、老人の老衰死。 時期が重なっている。これは偶然か?俺は不安になった。
まさか・・あの可愛いデイエルが・・
俺は間抜けにも俺に向けられたデイエルの純粋で可愛い面だけを信じていた。
狡猾で醒めた面もあることは分かっていたはずなのに・・
デイエルは辛酸を舐めたらしく、かつてのデイエルの愛らしさはなくなり、冷ややかな美貌をもった男になった。
デイエルが継いだ家は発展した。だがその分邪魔な敵も多く彼は容赦なく葬った。
彼は領土を収める統治者として成長していた。
久しぶりに森の館で彼と逢瀬した時、彼はすっかり変わっていた。
どこか残忍な目をした美しい男。
俺はかつて愛した弟のような恋人を惜しんだ。
「ぼくは変わったかい。ジル。ぼくはぼくなりに生きただけだよ。ジル。」
「ああ。お前は野望があった。お前は見事に自分の夢を叶えるだけに自分に忠実に生きた。
その成功は大したものだと思うぞ。デイエル。」
「ふん。君は愛らしい者が好きだったからね。もう僕の事は愛していないの?」
デイエルは分かり切ったことを言った。
俺は失望した。「デイエル。俺は弟のようなお前を愛していた。しかしもうお前は子どもじゃない。戦う男だ。
野望や野心に満ちた男だ。俺はもうお前を愛していない。」
デイエルは不思議にも裏切られた子どものような表情をした。
お前だってわかっていたはずなのに・・
「そんなに奥さんが良かった?女嫌いだったくせに。男しか愛せないんじゃなかったの。なんで女なの?」
デイエルは嫉妬深く詮索し始めた。まるで嫉妬深く貪欲な醜い女だ。
俺は身勝手にもデイエルを疎ましく思った。そしてぞっとした。直感的にわかった。
こいつはやはり老人や養子を殺している。人殺しの目だ。
目が違っている。
俺は無意識にアイシャを妻を庇った。
「妻に近づくな。」
俺は牽制した。デイエルは俺と妻にとって敵になるかもしれない。
「妻は立派な女だ。良き母親になれる器だ。オーデイン家にとっても必要な存在になりつつある。」
「悔しいが父の目は正しかった。俺の子を孕むのは彼女が一番望ましい女だ。俺も気に入っている。」
俺は正直にアイシャを妻として受け入れた。俺の子を孕む女として母として繋ぎ止めたかった。
欲を満たす俺だけの女でいてほしかった。
俺はアイシャとの性交や、触れあいを愛していた。
強制とはいえ、アイシャを知るたびに俺は女の綺麗な面、美しい面、柔らかな面、母親としての包容力に赤子のように満足した。
俺は身勝手だ。男にも汚い面、醜悪な面があると解っていたはずなのに・・
俺は男でも女でも醜い面があると分かった。 唯、俺は女の嫌なところを見すぎたから、身勝手にも裏切られたと女を嫌悪し恨んでいたのだ。
俺が馬鹿だった。人間である限り綺麗なばかりだけじゃないのに・・
なのに俺はアイシャを慕っている。勿論アイシャも醜い面はあるだろう。嫌な面もあるだろう。だがアイシャはそれを上回る魅力と包容力があった。
デイエルは悪いほうに変わった。
だんだん狡猾で貪欲で残忍な目をする美しい男になった。
俺の手には負えない化け物になるかも知れない。
俺は人間は良くも悪くも変わる生き物であることを知った。
運命は皮肉だ。かつての恋人を嫌悪し、敵になるかも知れないと危惧するなんで・・
俺は悟った。俺も醜い人間だ。身勝手で卑怯で弱い人間だ。
デイエルは俺の拒絶の言葉を暗い暗い目で見た。それがデイエルとの恋人しての最後の別れだった。
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