水底の恋 天上の花

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第6章 デイエル 統治者

第8話 地獄の悪鬼たち

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デイエルはジルと完全に決別した瞬間、嫉妬と逆恨みに満ちた怨嗟に満ちた悪鬼のような心を持った。

それ以降、デイエルは荒淫を止め、かつての美しさを取り戻すため鍛錬をした。いや、かつて以上に美しさと若さに執着を持つようになった。

統治者として表向き有能な美しい顔を見せたが、裏では弱者や不要な者達を嬲っては残虐に殺していた。

特に、深く愛し合っている恋人が目障りで、恋人たちを捕え、相手の目の前で慕うものを殺したり、犯したり地獄を見せたりした。

八つ当たり。逆恨み。人格破綻者。異常者。なんとよばれようかかまわなかった。

デイエルは血のにじむような思いをしてここまで来たのだ。デイエルは汚い爺の尻さえも舐めて汚辱に塗れながら恋人とも別れた。

その後は全然楽しくなかった。それどころが心が休まる時は無かった。デイエルは代償に統治者として栄華を得たのだ。それが危うい砂上の楼閣であったとしてもだ。醜い敵を排除した血まみれの王への道。


なのに、下賤な者達はいともたやすく心を満たし満たしあう恋人や伴侶を得ている。
そんな幸福をデイエルは疎んだ。忌々しい思いで壊したかった。

そんな幸福な姿を見せられるたびに、デイエルは己が進んだ道を後悔したくなるからだ。
あの時、従者として身分相応に幸福を見つければよかったのだろうか?
だが、あの時はこれが出世のチャンスだと思った。穢い醜い老人の玩具として弄ばれてどこか心が壊れても、それを望んだのは、若く愚かな愚かな自分だ。

今更戻れない。 かつての恋人ジルは昏い血を引きながらも、アイシャという良き妻を得て以前より幸福そうに見えた。

ゆるせない。 傲慢にも身勝手にもデイエルはそう思い続けた。
いつかジルとアイシャの幸福を壊してやる。 そうだ。アイシャの姉。ネリアとかいうハリアン公爵に寵愛されている女も。 シンとかいう弟も。 全て壊してやる。彼の黒い破壊衝動は止まることを知らなかった。

それを諫めていた従者。ジョンとかいう平凡ななんの特徴もない若者は顔面蒼白になりながらも制止しようとしていた。
「おやめ下さい。デイエル様。そんなことをして何になるのですか?デイエル様はこのままでは破滅なされます。
せっかくその栄誉を得たというのに、何故自ら壊すような真似をするのですか?わたしにはわかりません。デイエル様。正気に戻られて下さい。」
必死でデイエルの事を主人としてまだ忠実に愚劣に思っている従者の諫めの言葉だった。

だが狂っているデイエルの耳には届かなかった。
それどころが煩わしいハエの音のようにしか聞こえなかった。
デイエルを唯一 愚直に思っている愚かな従者の言葉は鳥の羽のように軽かった。

デイエルはにこりと笑って、傍らの悪鬼のような処刑人に命じた。
「この不遜な下賤な者の首を刎ねよ。」
その時のジョンという若者の顔は見ものだった。
公開処刑で、ジョンはデイエルを侮辱したという罪で、ギロチン刑にされた。
ジョンの髪はサンバラに斬られ、首筋が見えた。痛々しい白い首筋。震えている姿。
デイエルは、愉悦と共に、ジョンはわりと美しい身体をしていたのだなと他人事のように思った。

何のとりえもない若者と思っていたが、ジョンの白い首筋が印象的であった。
ふと舐めたい気持ちにかられた。彼は震えながらも己の運命を受け入れていた。

その様子は狂ったデイエルにとって煽情的だった。
彼は一度だけデイエルを、かつては主人として仕えた人を見上げた。
そこには諦観の目が合った。なぜかデイエルは苛立ちがあった。

彼は黙って処刑された。

それを面白がって囃す大衆の歓声。 デイエルは笑った。君たちもすぐにこうしてあげる。

ジョンの首は生前より美しく見えた。遺体はデイエルの元へ運ばれた。

愚かにも誠実に間違いは間違いだと言い張ったジョン。哀れな義人。

ここには狂った王と貴族。無知な自分が何をやっているかもわからない民。盲目の民しかいないのに・・。

狂ったデイエルは、苦悶に満ちた死に顔のジョンの生首をみて、白い首を舐めた。血の味がする。
はしたなくも勃起した。
彼は男として蹂躙した従者の遺体をさらに蹂躙するために冷たく硬くなっていく身体を開き犯した。
まだ柔らかく熱い穴はだんだん冷たくなっていく。
それが酷くデイエルは寂しかった。 デイエルは何度も甘えるようにジョンの遺体を犯し続けた。

それを興奮して視姦している貴族たちはうっとりと淫蕩な雰囲気を出した。彼らも地獄の悪鬼なのだ。
死体を見ながら発情した彼らは乱交し始めた。

真っ当な心を持っている者や正気を保っている者は蒼白になりながら逃げ続けた。

この領土は狂った。もう駄目だ。彼らはそう心の中で叫びながら逃げ続けた。

地獄の悪鬼たちに追われる獲物のように彼らは逃げ続けた。
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