【証拠はいらない】夢を諦められない

夢を諦めたまま、生きてきた男がいた。

結婚し、家庭を持ち、会社員として真っ当に暮らしている。
不満があるわけでも、やり直したいわけでもない。

ただ――
「このままでいいのか」
それだけが、胸に残っていた。

探偵は、背中も押さない。
諦めろとも、戻れとも言わない。

証拠も、正解も、用意しないまま、
男がすでに持っている答えだけを、静かにすくい上げる。

夢は、叶わなくてもいい。
持ったまま、生きていれば。

それだけで、もう――証拠はいらない。
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