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一人の飼い主と二人の妖精②
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朝、いつものように彼女が帰ってくる。
首元に新しい痕。
手には、また箱。
「服、増えちゃった」
困ったように笑う。
薄い布と、紐ばかりのドレス。
外では着られない。
男妖精は箱を受け取り、静かに言う。
「似合うよ」
彼女は少しだけ目を細める。
「……羨ましい?」
一瞬、言葉に詰まる。
「呼ばれるだけでも」
彼女は小さく息を吐いた。
「呼ばれてるんじゃないよ。使われてるの」
それでも。
それでも。
使われることすら、許されない自分がいる。
無言でドレスを見つめる。
透ける布地。細い紐。
これだって、それなりに値段はするだろう。
自分には、一度もない。
「……そんなに、好き?」
振り向かずに問う。
何を思っているのか、彼女には分かっている顔だった。
「うん」
迷いなく。
「ただのエロじじいよ?」
「僕にとっては……特別なんだ」
声が少し震える。
彼女は箱を閉じながら、低く言う。
「抱くのは、愛してるからだなんて思ってないよね?」
答えられない。
彼女は首元の痕に触れる。
「私は愛されてない。利用されてるだけ」
沈黙が落ちる。
男妖精は拳を握る。
胸の奥が、じりじりと痛む。
「壊れるよ」
彼女がぽつりと言う。
「そんなふうに思ってたら」
喉が渇く。
言ってはいけないと分かっているのに、
言葉がこぼれた。
「……僕は、君になりたい」
空気が止まる。
彼女がゆっくり振り向く。
「……何それ」
彼女の首筋の痕を見るたび、胸が締め付けられた。
自分には、残らないもの。
「君みたいに、呼ばれて」
「君みたいに、触れられて」
声が少し震える。
「君みたいに……見られたかった」
沈黙。
喉が詰まる。
目の奥が熱い。
言わなければよかった。
それでも。
一度でいい。
欲しい、と言われてみたい。
ぽたり、と涙が落ちた。
自分でも、止められなかった。
彼女が、ゆっくり近づく。
指先が頬に触れる。
「……ばか」
優しくもなく、責めるでもない声だった。
首元に新しい痕。
手には、また箱。
「服、増えちゃった」
困ったように笑う。
薄い布と、紐ばかりのドレス。
外では着られない。
男妖精は箱を受け取り、静かに言う。
「似合うよ」
彼女は少しだけ目を細める。
「……羨ましい?」
一瞬、言葉に詰まる。
「呼ばれるだけでも」
彼女は小さく息を吐いた。
「呼ばれてるんじゃないよ。使われてるの」
それでも。
それでも。
使われることすら、許されない自分がいる。
無言でドレスを見つめる。
透ける布地。細い紐。
これだって、それなりに値段はするだろう。
自分には、一度もない。
「……そんなに、好き?」
振り向かずに問う。
何を思っているのか、彼女には分かっている顔だった。
「うん」
迷いなく。
「ただのエロじじいよ?」
「僕にとっては……特別なんだ」
声が少し震える。
彼女は箱を閉じながら、低く言う。
「抱くのは、愛してるからだなんて思ってないよね?」
答えられない。
彼女は首元の痕に触れる。
「私は愛されてない。利用されてるだけ」
沈黙が落ちる。
男妖精は拳を握る。
胸の奥が、じりじりと痛む。
「壊れるよ」
彼女がぽつりと言う。
「そんなふうに思ってたら」
喉が渇く。
言ってはいけないと分かっているのに、
言葉がこぼれた。
「……僕は、君になりたい」
空気が止まる。
彼女がゆっくり振り向く。
「……何それ」
彼女の首筋の痕を見るたび、胸が締め付けられた。
自分には、残らないもの。
「君みたいに、呼ばれて」
「君みたいに、触れられて」
声が少し震える。
「君みたいに……見られたかった」
沈黙。
喉が詰まる。
目の奥が熱い。
言わなければよかった。
それでも。
一度でいい。
欲しい、と言われてみたい。
ぽたり、と涙が落ちた。
自分でも、止められなかった。
彼女が、ゆっくり近づく。
指先が頬に触れる。
「……ばか」
優しくもなく、責めるでもない声だった。
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