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第二章 一ノ谷来栖の女装で世界はほんの少しだけいいほうへ変わる 1
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やめてくれ。
来栖は叫んだ。
だが、相手は意にも介さない。
どうしてこんなことをするんだ。
いけない。
あなたがおれに、そんなことをしては。
自分が正しいはずだ。
悪いことをしてはいけない。
それは誰だって分かってくれるはずだ。この人だって。
なのに、ちっともやめてくれない。
言葉が通じない。
気持ちも。
こんなにも簡単に、それらは、踏みにじられてしまうものなのか。
やめてくれ。
そんなことをしないでくれ。
だって、あなたは。
あなたは。
■
目が覚めると、汗びっしょりだった。
十二月の中旬を迎え、暖房は夜中に切れるようタイマーをセットしてあるので、朝は毎日それなりに冷える。
にもかかわらず、この夢を見た時の来栖は、パジャマにしているスウェットに染みるほどの汗をかく。すべて、冷や汗だ。
「あー……気持ち悪っ」
来栖の家は、二階建ての一軒家だった。
着替えとバスタオルを用意して、手早くシャワーを浴びてから、リビングに向かう。
髪は、乾くなりすぐにウイッグをかぶるのが日課になっていた。
「ああ、おはようクルス」
「おはよ、カラス兄」
「……その頭、地毛じゃないんだよね?」
「そ。カツラ」
兄の一ノ谷空栖は、トーストと紅茶で簡単な朝食を済ませたところだった。来栖の三つ上で、今は大学に通っている。来栖と違い飾り気のないいでたちをしており、大人しく下ろした黒髪は彼の細面によく似合っていた。
両親が家を空けがちな中、生活時間が食い違う兄弟は、朝に顔を合わせるのは珍しかった。
「クルス、我が弟ながらまた美しさに磨きがかかったなあ」
「カラス兄だって同等以上の素材だろ。あ、洗い物おれがまとめてやるから置いといていいよ」
来栖も湯を沸かし、ダージリンの缶を出した。
その間に空栖が、フライパンを出してスクランブルエッグを作る。
見たところ、二人分の量だ。
「なんだよ、今食べ終わったんだろ?」
「追加で食べたくなったんだよ。クルスも食べてね。放っておくとクルス、お茶しか飲まないことあるでしょ。それじゃ、美貌が保てないよ。パンも焼くからね」
気が向かなければつい食事を後回しにしてしまう来栖に対し、空栖は三度三度の食事を適切にとる主義だった。
兄のほうが正しいことが分かっているので、来栖は大人しく従う。確かに、食生活は美容に直結もする。
兄は、小さいころから来栖を守ってきた。
生まれつき線が細かった来栖は、時折悪餓鬼のいじめの対象になったが、そのたびに、さらに線の細い空栖が助けにきた。
来栖が、いくらしょうもない男を見ても男性不信にならないのは、静二の前にこの兄の存在がある。
せっかくなので来栖がトマトを切って、レタスも出し、二人分のサラダを作る。
思いがけず、整った朝食になった。
「いただきます、カラス兄」
「いただきます、クルス」
そういえば、ウイッグ以外に女装していない状態でものを食べるのは朝くらいだ。
身も心も素の状態で、来栖は、兄が適量のバターを塗ってくれたトーストにかじりついた。
■
「……今日は、結構さわやかな朝を迎えたから、なんとなくいい日になると思ったんだけどなあ」
高校の廊下で、半眼でうめく来栖――完全に女装状態を仕上げて登校している――に、静二がまあまあと苦笑した。
寿永高校は、学年ごとに教室棟の階が分かれている。一年が二階、二年が三階、三年が四階。一応エレベーターはついているが、年頃の高校生たちにはそれを待つ時間がもどかしく、日常的に階段ばかり使う生徒も珍しくない。
その階段を二階まで上がると、廊下でちょっとした騒ぎが起きていた。
「なー、君かわいいな。おれとつき合わない? 楽しいこといろいろ教えてあげるよ。あっ、君、君はどう? おれいろんなところに詳しいから、どっか遊びに行こうや。えー、だめかー? おれ、彼女募集中なんだよー」
そう言って、道行く女子をナンパしている二年生がいる。
見ず知らずの他人であれば、適当に鎮静化させる方法はいくつか思いつくのだが。
そのアッシュグレーの長髪には、不本意ながら来栖は見覚えがあった。
確か、梶原樹、だったか。
「あの人、この間クルスに告白してきた人だよね?」
「よく覚えてるな、お前」
「あの頭だからね。てことは今クルスが出ていくと、ややこしくなるかもね」
「くそ。おれの美しさで腰砕けにして、その隙に排除してやろうかと思ったが、やめておくか」
「……いつもそんなことしてるの?」
「冗談だ冗談。にしても、なんであんなところでナンパなんかしてるんだ?」
ぼそりとつぶやいた来栖に、すぐ横から何者かが答えた。
「たぶん純粋に、彼女が欲しいんだと思う。クリスマスを一人で過ごすのは耐えられないってよく言ってたから
「うお!?」
いつの間にか来栖の間近に、美乃梨と、そのすぐ後ろへあやめが立っていた。
「お、おお、二人ともおはよう。静二、この二人、1-Bの壇ノ浦あやめと、1-Cの屋島美乃梨さん」
「あやめを下の名前で呼んでいるのなら、私も美乃梨でいいよ、クルスくん」
美乃梨が微笑む。あやめが伝言を伝えてくれたようだった。
静二もあいさつし、自己紹介した。
それから来栖が、再び物陰から梶原を見やる。
「しかし、あれなんとかしないと迷惑だよなあ」
来栖の言葉に、美乃梨が頭を抱えた。
「……うう、なぜか私が、なんだか凄く恥ずかしいというか、情けないというか……。ちょっと注意してくる」
「なんで美乃梨が行くんだよ」
「今は無関係でも、一応まあかつての彼女として、責任があるかなって」
「あるわけないだろ、んな責任。おれもちょっとあの先輩とは微妙な関係だけど、美乃梨が出ていくのはさらにややこしそうだ。ここは、腹決めるか」
それを聞いた静二が、翻しかけていた体をぴたりと止めて行ってきた。
「え、行くのクルス? 僕が今、先生読んでくるよ」
「いや、いっときあそこからどかすだけじゃなく、恒久的に問題解決するには、この場合教師介入は有効とは言えん」
そして、来栖はずんずんと梶原に向かっていった。
梶原のほうもそれと気づき、驚いた表情をする。
「お久しぶりです、梶原先輩」
「あ、ああ、一ノ谷くん。そうか君一年だもんな、ここ通るよなー」
「なにされてるんですか、ここで?」
「なにって、彼女探しだよ! やっぱり出会いは、自分から動いて探さないとなー!」
迷惑な、と小声で毒づきながら、来栖は努めて笑顔を作った。
「先輩、実はおれ、ちょっと先輩にお話があるんですよね。今日、放課後おれにちょっとつき合ってもらえませんか?」
ぎし、と梶原が動きを止めた。
「……つき……?」
「ええ。ちょーっと、お話があって」
そこで、笑顔を強める来栖。
こころなしか、梶原がまぶしそうに目を細めた。
例の光とやらが出ているのかなんなのか、まあどっちでもいいけど、と来栖は胸中でつぶやく。
「おれに?」
「はい」
「君が?」
「そうです。……だめですか?」
小首をかしげる来栖。
「い、いいともいいとも! じゃあ放課後になー! おっと、もうすぐ授業だな! おれ準備しないと! じゃあなー!」
そうして、梶原は三階へと去っていった。
「ちっ。手間のかかる野郎だ」
周囲の女子たちが、わっと来栖を取り囲む。
「ありがとう、一ノ谷くん!」
「もう、なにあの二年! こっわ! こんなんで彼女とかできるわけないじゃん!」
「来栖くん来なかったら永遠にいたのかなー? まじわけ分かんない!」
この扱い。梶原はそこそこもててきたようなのだが、少しのきっかけでずいぶん悪いほうへ変わるものだ。
そう思いながら来栖が首を巡らすと、階段の脇で、羞恥心と罪悪感から死にそうな顔色になっている美乃梨が見えた。
さらに周りの女子の一人が、1-Cの生徒なのか、
「あれ、てか今の人、うちのクラスの子の彼氏じゃなかった?」
などと言い出したので、来栖は強引にこの場を収めることにする。
「みんな、きっと今の先輩もなにか事情があったんだよ! もうこんなこと起きないようにするから、切り替えて授業受けような!」
そして、全力の笑顔を作って、その場で三百六十度くるりと回転する。
すると、女子だけでなく通りすがりの男子たちも、息をのんで目を見開き、それからまぶしそうに目を細めた。
「一ノ谷くんが光ってる! 噂は本当だったんだ!」
「凄い! ガチでまぶしい!」
「なんの光これ!? はっくしょん!」
飛び跳ねる者、感嘆する者、さらにはなぜか拝む者まで出てきたが。
ひと騒ぎし終えると、誰もが先ほどまでの珍事をきれいさっぱり忘れたように、ありがたやありがたやと唱えながら教室へ戻っていった。
そこへ、静二があやめと美乃梨を連れて近づいてくる。
「おお、三人とも。とりあえずこの場は収めたぜ!」
そう、さわやかな笑顔――これは心からの――を浮かべる来栖だったが。
「うん……さすがだね……」と静二。
「あ……ありがとうね、クルスくん……」と美乃梨。
「あれ!? なんか二人とも引いてないか!? あやめ、あやめはどうだった!? おれけっこう頑張っただろ!?」
その、当のあやめは、放心したように。
「はい……」
「だろ! だよな?」
「ただ、あの……」
「ただ?」
「クルスって……なんていうか……凄いですけど……えぐいんですね……」
「えぐ? ……もしかしてあやめ、一番引いてないか?」
「そんなことは、……」
「ないのか? ないよな? あるわけないもんな? おれいいことしたもんな!?」
あやめが、ふいと顔をそむけた時。
予鈴が高らかに鳴り響いた。
■
来栖は叫んだ。
だが、相手は意にも介さない。
どうしてこんなことをするんだ。
いけない。
あなたがおれに、そんなことをしては。
自分が正しいはずだ。
悪いことをしてはいけない。
それは誰だって分かってくれるはずだ。この人だって。
なのに、ちっともやめてくれない。
言葉が通じない。
気持ちも。
こんなにも簡単に、それらは、踏みにじられてしまうものなのか。
やめてくれ。
そんなことをしないでくれ。
だって、あなたは。
あなたは。
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目が覚めると、汗びっしょりだった。
十二月の中旬を迎え、暖房は夜中に切れるようタイマーをセットしてあるので、朝は毎日それなりに冷える。
にもかかわらず、この夢を見た時の来栖は、パジャマにしているスウェットに染みるほどの汗をかく。すべて、冷や汗だ。
「あー……気持ち悪っ」
来栖の家は、二階建ての一軒家だった。
着替えとバスタオルを用意して、手早くシャワーを浴びてから、リビングに向かう。
髪は、乾くなりすぐにウイッグをかぶるのが日課になっていた。
「ああ、おはようクルス」
「おはよ、カラス兄」
「……その頭、地毛じゃないんだよね?」
「そ。カツラ」
兄の一ノ谷空栖は、トーストと紅茶で簡単な朝食を済ませたところだった。来栖の三つ上で、今は大学に通っている。来栖と違い飾り気のないいでたちをしており、大人しく下ろした黒髪は彼の細面によく似合っていた。
両親が家を空けがちな中、生活時間が食い違う兄弟は、朝に顔を合わせるのは珍しかった。
「クルス、我が弟ながらまた美しさに磨きがかかったなあ」
「カラス兄だって同等以上の素材だろ。あ、洗い物おれがまとめてやるから置いといていいよ」
来栖も湯を沸かし、ダージリンの缶を出した。
その間に空栖が、フライパンを出してスクランブルエッグを作る。
見たところ、二人分の量だ。
「なんだよ、今食べ終わったんだろ?」
「追加で食べたくなったんだよ。クルスも食べてね。放っておくとクルス、お茶しか飲まないことあるでしょ。それじゃ、美貌が保てないよ。パンも焼くからね」
気が向かなければつい食事を後回しにしてしまう来栖に対し、空栖は三度三度の食事を適切にとる主義だった。
兄のほうが正しいことが分かっているので、来栖は大人しく従う。確かに、食生活は美容に直結もする。
兄は、小さいころから来栖を守ってきた。
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「いただきます、カラス兄」
「いただきます、クルス」
そういえば、ウイッグ以外に女装していない状態でものを食べるのは朝くらいだ。
身も心も素の状態で、来栖は、兄が適量のバターを塗ってくれたトーストにかじりついた。
■
「……今日は、結構さわやかな朝を迎えたから、なんとなくいい日になると思ったんだけどなあ」
高校の廊下で、半眼でうめく来栖――完全に女装状態を仕上げて登校している――に、静二がまあまあと苦笑した。
寿永高校は、学年ごとに教室棟の階が分かれている。一年が二階、二年が三階、三年が四階。一応エレベーターはついているが、年頃の高校生たちにはそれを待つ時間がもどかしく、日常的に階段ばかり使う生徒も珍しくない。
その階段を二階まで上がると、廊下でちょっとした騒ぎが起きていた。
「なー、君かわいいな。おれとつき合わない? 楽しいこといろいろ教えてあげるよ。あっ、君、君はどう? おれいろんなところに詳しいから、どっか遊びに行こうや。えー、だめかー? おれ、彼女募集中なんだよー」
そう言って、道行く女子をナンパしている二年生がいる。
見ず知らずの他人であれば、適当に鎮静化させる方法はいくつか思いつくのだが。
そのアッシュグレーの長髪には、不本意ながら来栖は見覚えがあった。
確か、梶原樹、だったか。
「あの人、この間クルスに告白してきた人だよね?」
「よく覚えてるな、お前」
「あの頭だからね。てことは今クルスが出ていくと、ややこしくなるかもね」
「くそ。おれの美しさで腰砕けにして、その隙に排除してやろうかと思ったが、やめておくか」
「……いつもそんなことしてるの?」
「冗談だ冗談。にしても、なんであんなところでナンパなんかしてるんだ?」
ぼそりとつぶやいた来栖に、すぐ横から何者かが答えた。
「たぶん純粋に、彼女が欲しいんだと思う。クリスマスを一人で過ごすのは耐えられないってよく言ってたから
「うお!?」
いつの間にか来栖の間近に、美乃梨と、そのすぐ後ろへあやめが立っていた。
「お、おお、二人ともおはよう。静二、この二人、1-Bの壇ノ浦あやめと、1-Cの屋島美乃梨さん」
「あやめを下の名前で呼んでいるのなら、私も美乃梨でいいよ、クルスくん」
美乃梨が微笑む。あやめが伝言を伝えてくれたようだった。
静二もあいさつし、自己紹介した。
それから来栖が、再び物陰から梶原を見やる。
「しかし、あれなんとかしないと迷惑だよなあ」
来栖の言葉に、美乃梨が頭を抱えた。
「……うう、なぜか私が、なんだか凄く恥ずかしいというか、情けないというか……。ちょっと注意してくる」
「なんで美乃梨が行くんだよ」
「今は無関係でも、一応まあかつての彼女として、責任があるかなって」
「あるわけないだろ、んな責任。おれもちょっとあの先輩とは微妙な関係だけど、美乃梨が出ていくのはさらにややこしそうだ。ここは、腹決めるか」
それを聞いた静二が、翻しかけていた体をぴたりと止めて行ってきた。
「え、行くのクルス? 僕が今、先生読んでくるよ」
「いや、いっときあそこからどかすだけじゃなく、恒久的に問題解決するには、この場合教師介入は有効とは言えん」
そして、来栖はずんずんと梶原に向かっていった。
梶原のほうもそれと気づき、驚いた表情をする。
「お久しぶりです、梶原先輩」
「あ、ああ、一ノ谷くん。そうか君一年だもんな、ここ通るよなー」
「なにされてるんですか、ここで?」
「なにって、彼女探しだよ! やっぱり出会いは、自分から動いて探さないとなー!」
迷惑な、と小声で毒づきながら、来栖は努めて笑顔を作った。
「先輩、実はおれ、ちょっと先輩にお話があるんですよね。今日、放課後おれにちょっとつき合ってもらえませんか?」
ぎし、と梶原が動きを止めた。
「……つき……?」
「ええ。ちょーっと、お話があって」
そこで、笑顔を強める来栖。
こころなしか、梶原がまぶしそうに目を細めた。
例の光とやらが出ているのかなんなのか、まあどっちでもいいけど、と来栖は胸中でつぶやく。
「おれに?」
「はい」
「君が?」
「そうです。……だめですか?」
小首をかしげる来栖。
「い、いいともいいとも! じゃあ放課後になー! おっと、もうすぐ授業だな! おれ準備しないと! じゃあなー!」
そうして、梶原は三階へと去っていった。
「ちっ。手間のかかる野郎だ」
周囲の女子たちが、わっと来栖を取り囲む。
「ありがとう、一ノ谷くん!」
「もう、なにあの二年! こっわ! こんなんで彼女とかできるわけないじゃん!」
「来栖くん来なかったら永遠にいたのかなー? まじわけ分かんない!」
この扱い。梶原はそこそこもててきたようなのだが、少しのきっかけでずいぶん悪いほうへ変わるものだ。
そう思いながら来栖が首を巡らすと、階段の脇で、羞恥心と罪悪感から死にそうな顔色になっている美乃梨が見えた。
さらに周りの女子の一人が、1-Cの生徒なのか、
「あれ、てか今の人、うちのクラスの子の彼氏じゃなかった?」
などと言い出したので、来栖は強引にこの場を収めることにする。
「みんな、きっと今の先輩もなにか事情があったんだよ! もうこんなこと起きないようにするから、切り替えて授業受けような!」
そして、全力の笑顔を作って、その場で三百六十度くるりと回転する。
すると、女子だけでなく通りすがりの男子たちも、息をのんで目を見開き、それからまぶしそうに目を細めた。
「一ノ谷くんが光ってる! 噂は本当だったんだ!」
「凄い! ガチでまぶしい!」
「なんの光これ!? はっくしょん!」
飛び跳ねる者、感嘆する者、さらにはなぜか拝む者まで出てきたが。
ひと騒ぎし終えると、誰もが先ほどまでの珍事をきれいさっぱり忘れたように、ありがたやありがたやと唱えながら教室へ戻っていった。
そこへ、静二があやめと美乃梨を連れて近づいてくる。
「おお、三人とも。とりあえずこの場は収めたぜ!」
そう、さわやかな笑顔――これは心からの――を浮かべる来栖だったが。
「うん……さすがだね……」と静二。
「あ……ありがとうね、クルスくん……」と美乃梨。
「あれ!? なんか二人とも引いてないか!? あやめ、あやめはどうだった!? おれけっこう頑張っただろ!?」
その、当のあやめは、放心したように。
「はい……」
「だろ! だよな?」
「ただ、あの……」
「ただ?」
「クルスって……なんていうか……凄いですけど……えぐいんですね……」
「えぐ? ……もしかしてあやめ、一番引いてないか?」
「そんなことは、……」
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