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第三部 天 獄
43淫劇③※
レストルとナシェルはお互いを陥落させようとし、寝台の上でしばし、締めつけたり広げたりという卑猥な格闘めいた行為が続けられた。
だが刻が過ぎゆくにつれ上になった者の優位は明らかとなり、次第にナシェルは汗を滴らせながら突き上げに耐えるしかなくなってくる。
(くそ……こいつ、………巧い……っ!)
ん、ん、と火照った啼き声をシーツに吸わせながら、完膚無きまでに狂わされている己に愕然とする。忌々しいが、事実は認めざるをえない。
感覚がなくなっていた己の花芯にも、再び緊張が戻ってくる。達したくてたまらない。
恐ろしいほどにゆっくりと引き抜かれた男のものが、次の瞬間ナシェルの秘肉を最奥まで穿った。
「あぁッ……は……っ、は……っ、あぅ……ッ……!」
レストルは打ち付ける腰の動きを徐々に早めながら、勝ち誇ったようにナシェルの尻を撫でる。
「どうだ善いだろう? お前のご主人様のペニスだ、これから毎日くれてやるからな」
ナシェルは抵抗するように、最後の力を振り絞り後孔を再度、引き締めた。
「うッ……? ぐ……、」
レストルが耐えかねて声を洩らす。
肉襞の強烈な締め付けによって限界を迎えた男は、次の瞬間、極みにのぼりつめた。
「おおうッ――」
レストルは荒い声を発しながら、迸るものを秘蕾の奥へと解き放った。
「ぁあ――……!!」
ナシェルもまた苦鳴を漏らす。
注ぎ込まれた精液とともに、全身に沁みるように満ち広がってゆくものがあった。
脳天まで焼き串で突き上げられたような、激甚な衝撃。
「………ぅ、く…………!」
神司の崩壊してゆく音が、耳奥に聴こえるようだ。
崩壊と破滅。体内から光神族の司に蝕まれていく。
混濁する意識の中で、何かを手繰り寄せようと指であらぬ方を掻き毟るも、そこにあるのは様々な体液に濡れた白いシーツだけだ。ばったりと、鉤なりに固まった指が白布の上に落ちる。
ナシェルは手の届かない幻へとなおも心の手を伸ばし、声にならない声で救いを求めた。
だが何度叫んでも、白濁する意識のなかに闇の君を見出すことは遂に叶わなかった。
矜持を貶められ、神としての司までも薄められた今、ただそこに残ったのは衰弱してゆくひとつの虚ろな魂、それだけだった。
***
官能の嵐の余韻を楽しむように、レストルは尚も数度、聳りたった屹立でナシェルの内部を穿ち荒らした。掻き回すつど、放った精液が繋がった部分からじゅくじゅくと溢れだしナシェルの白い内股を垂れて伝い落ちた。
掠れた絶鳴を放ったあと動かなくなった虜囚は、もはや抵抗らしい抵抗も見せず寝台の上で脱力している。
「はー……、スゴい眺めだった……こいつ表情もエロいの」
アドリスが傍らからボソリと称賛の声を漏らした。ぱったりと伏したナシェルを見下ろし、
「兄貴のが気持ち良すぎたのかなあ? なんか急にグッタリしちゃったね……あんな強がってたのに」
とナシェルの後頭部に触れ黒髪を梳く。
「さあな……。それにしてもこいつ、俺のモノも締め上げてほとんど強引にイかせやがった……」
「えっ、マジ? 兄貴も無理矢理イかされたの!?」
アドリスが目を丸くする。
「まさかこの俺から、あの状況で主導権を奪うとは……。なんて奴だ」
レストルはようやく余韻から脱し、弛緩した後庭から己のものを引き抜いた。
虜囚の見せた自尊心と痴態と反骨に、彼は感動すら覚えていた。
レストルは倒れ伏したナシェルの背中に覆いかぶさり、なおも抱きしめ、腰を撫で、胸の突起に指を這わせ、耳朶を嬲った。これほどに感慨深いことがあるだろうか……若く尽きせぬ己の性欲に応えうる、素晴らしい肉体を手に入れたのだ。
己を主人と呼べるようになるまで根気強く教え込む――。そのうちこの気高い心もへし折れ、陥落するだろう。
誇りに縋ろうとするナシェルを引きずり落とすのは、それはそれでたとえようのない歓楽……。当分、飽きることなく楽しめそうだ。
黒髪を張りつかせたその背を、レストルは感嘆とともに眺めおろした。
「俺はお前を手放す気はない……。だからもう何もかも諦めて、俺のものになれ。躯だけでなく心も全て俺に委ねてみろ……。そうすればもっと満たしてやるし、快適に過ごさせてやる」
「まあ、あれだよね。大人しく従わないとどのみち迷惑被るのはチビ姫ちゃんだしねー」
「……アドリス。あのガキをダシにするのはもうやめろ。ガキの身柄は伯父貴が預かっている事、さっきこいつにもう話した。俺たちはガキには手は出さん」
「えー何でしゃべっちゃうんだよ、もう脅せないじゃん」
「だが……自分を抱くなら代わりにサリエルを自由にしてくれと、こいつは云ったのさ」
「サリエルを? なんでナシェルがそこまで……」
アドリスは一瞬首を傾げ、半開きの気だるげな眼差しでナシェルの裸体を眺め下す。
「そいえば、地上界で初めて会った時もこいつサリエルを庇ってたもんな。へえ……そうか、冥界で芽生えた堕神どうしの友情ってわけかぁ。美しいねえー」
誉めつつも、アドリスのその口調は冷やかしを含んでいる。
「だけどサリエルは天上界に帰りたかったんだろ? 自由にしてやれってどういうことだよ」
「仕組まれた結果だとか何とか云ってたな、よくは分からん」
「ふーん、ぶっちゃけサリエルの心配なんかしてる場合じゃないんじゃないのぉ? アンタこれから、兄貴の愛玩物になるのにサ」
アドリスがからかうように云い、レストルがナシェルの上腕を掴んで引き起こす。
「そうだ。サリエルは自由にしてやる。代わりにお前は俺のモノになる。ここでずっと飼ってやるからそのつもりで……、」
ナシェルの顎を掴んで上向かせ、蒼白い相貌を見下ろしたその時になって、レストルは漸く異変に気付いた。
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