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第四部 至高の奥園
30幾千の夜より甘く③※
「見てごらん、寝具がそなたの蜜でこんなに濡れてしまったよ……」
膝下のシーツの染みを指摘されるが、ナシェルの表情はもう、とろんとして心ここに在らずだ。
「……どうした、疲れて眠いか?」
「ん……眠い、です……少し……」
連続射精後のナシェルは夢見心地に応える。
「もう少し頑張って……約束のものが欲しいのだろう」
王は、双丘にさまよわせていた指でナシェルの尻の間を弄り、孔に二本の指を容れて少し寛げ始めた。
「う……ぁん……」
指を含まされて、再び嬌声が漏れる。これから起こりうる歓喜への待望で腰が揺れた。
あれほどたくさん絶頂した後だというのに、後ろを満たされたいという欲望はまた別のもの……。
「は、ぁ……父、上っ………」
躯の疼きが、再び頂点に達する。
「もう……挿れて下さい、ね、大きいの、欲しい……」
王は指で中を広げてゆきながら、なおも意地悪を云う。
「ふふ……ねだるのが上手くなったな。だがそなたは、余の神司が欲しいだけなのだろう?
そなたはいつも、神司が欲しいがために渋々、余に抱かれてきたのだからな」
「違う、違います……酷い方だ、もう分かっているくせ…に、私に何度でも言わせようとして。
貴方です、私が求めているのは貴方……! 神司のことなんか、二の次です」
「……本当にそうかな?」
「そんなにいじめないで……。
貴方の存在は、私にとって大きすぎる…与えられたものの量も計り知れない…その重みに、思わず逃げ出したくなるほどでした……。けれど……!
うぅ…も、指、あぁ……そんな、広げないで」
途中で噎せたように言葉を詰まらせ、肩で息をつく。王は指で後ろの蕾を虐めながら先を促す。
「話を続けて……」
「んぅ……っく……。
で、ですが……結局…私の居場所はやはりここでした、貴方の腕の中…ここ以外にはあり得ない……。
私は愚かだから、自分の躯を犠牲にして確かめるまで、認めることが、できませんでしたけど…。
貴方が欲しいです…本当に……これは私の偽らぬ心です…司じゃなく、貴方が欲しい……。
これだけ言ってもまだ駄目ですか……? 信じて……あぅ……」
切々とした叫びに冥王は満足げな吐息をつき、漸く指を抜いた。
「素晴らしい告白だ。嬉しいよ、ナシェル」
「もう…云わせたのは…貴方でしょう、」
頬を赤らめて、ナシェルは俯く。こつんと、柱に額がぶつかる。
「愛の告白が上手にできたから、たくさん御褒美をあげようね……」
背中に唇を押しあてられる。びくんとのけ反ったその瞬間、下肢に押し当てられていた怒張が、背後からゆっくりと優しく秘蕾のなかに侵入してきた。
「はっ……んぅ――……」
何万回と睦いを重ねてきたのに、穿たれる瞬間だけは慣れ切ることはない。
強張ろうとする下肢。息を吐き、なるべく力を抜いて受け入れる。
「あぁ―――父上……!」
待ち望んだ狂熱に、ナシェルは柱に縋りついたまま、ただただ啼き崩れた。
繋がったあとの責めは、これまでの嗜虐的な前戯とはかけ離れた、穏やかなものであった。
こんなにも丁寧に愛されたことはないというほど。
初交をかわしたあの少年の日の夜でさえ、こんなにも王は優しくはなかった……。
手酷い愛撫に慣らされていたナシェルは、ゆるやかに少しづつ繋がりを深めていく父のやり方を妙なものにさえ感じた。それでいて躯は自然と歓び、どこか戸惑い、物足りなくも感じ、また己への慈しみと愛を感じ……。
やがて受け入れたものの圧倒的な感触以外には、何も分からなくなっていった。
王は時間をかけてゆっくりと収め、しばらく動かしたりはせずにナシェルにその満ち足りた圧迫感を味わい尽くさせた。
頬を伝って零れ落ちる雫を掌で受け止め、王は背中から穏やかに問う。
「……何故泣く? 解し足りぬか」
柱に頬を擦りつけたまま涙をこぼすナシェルは、嬉しいのです、と切れ切れに応じ、揺すり入れられたものの熱度と大きさに、また啜り泣きを漏らした。
「余も嬉しいよ……そなたの心をやっと、取り戻した……」
王は咽び泣くナシェルを背後からそっと抱きしめた。
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