泉界のアリア

佐宗

文字の大きさ
上 下
212 / 262
番外編

午餐のあとで②※

しおりを挟む
 待ち切れずに片手をすべらせて王の足の間の性器を探った。服の上からでも、それが固くなり、熱く脈打っているのが分かる。自分だけが溺れているのではない、父ももう既にたまらなく自分を欲して疼いている……、そう思うと、嬉しくなった。

 旨そうな食べ物を前にした時のように唾液が口の中に満ちてくる。許されるならば今すぐこのまま王を押し倒し、衣装をはぎとって陽物をしゃぶり、精液を口で絞り取りたい。しかし王は受動的に振る舞うことを普段あまり好まないので、あまり口淫はさせてくれない。

 眉間に皺をよせ、思い詰めたように王の棹を服越しにさすっていると、その手を取られ、指と指の間を丁寧に舐められた。
「……っん、ァ……」

 王はもう一度嗜虐的な眼をして、命じる。
「さあ、そなたの好きな姿勢になって、欲しくてたまらなくなっている所をよく見せてごらん」

 ナシェルは期待と歓喜に、渇いた唇を舐める。やっと入れてもらえるのかもしれない。
 ふたたびうつ伏せになり、膝を立てて尻を上げ、猫のような姿勢を取った。上下関係が一層明確になるその体位で、角度をつけて深く丁寧に犯してもらうのが、何よりも好きだった。

 孔から伸びる細い鎖が、重く振り子のように股の間に揺れる。

「両手で、拡げて見せて」

 言われた通りに手を伸ばし、尻肉を左右に割り、鎖をくわえたその部分を王に晒す。
 羞恥で神経が高ぶる。見られるだけでもイきそうだ。
 菊壺が、息をするように収縮して王を誘うのだが、王は頓着せずナシェルの尻を観察している。

「鎖が重かっただろう。よく含んでいられたな。どうだった?」
「どうって、……ほとんど座っていました、から」
「立った時は?」
「立ちあがったとき、抜け落ちそうで、……危なかったです、かなり」
「では、ここをすぼめるようにして……この部屋まで、歩いてきたのだね?」
 王はナシェルの尻穴を指で押すようにした。
「ひっ、ん……」
「中の様子を調べよう。力を抜きなさい」

 香油をすくった二本の指に、後孔を検められた。
「中が……熱いな。柔らかくなって……よくほぐれている……」
「っ父上ぇ、…も、……はやくぅ、」

 恥ずかしくて、気持ち良すぎて、目尻に涙が浮かぶ。
 捩じ込まれた王の指先が鎖を押しのけながら進み、腔内にあった小さな責め具を捉えた。

 だが王はすぐには取り出さず、ぐるりと指を廻し、その金属製の性具をさらに奥へ押し込む。

「っあ、アア」

 ズンとした下腹の重みと、それに伴う快感がナシェルに切羽詰まった声を上げさせる。
 先ほどまでは愛撫の快感に朦朧としていたのに、直腸から脳へ、興奮と覚醒が一気に伝播した。

「や、あ、……ッ奥、だめ!」

 その部分を拡げ馴らす為の道具というよりは、端からアナルに埋め込んだまま長時間日常生活をさせる、こうした特殊な責めのために造らせたものなのだろう。大きくはないぶん、かなり深くまで入ってしまう。

「慌てるな、大丈夫だ……こうすれば抜ける」

 腰が引けたナシェルを宥めるように王は囁き、責め具についた鎖をグッと引いた。
 瞬間、下腹を支配していた圧迫感が、最奥から入口へと一息に移動する。

「ひっ……、う!」

 しかし、小さな孔から銀色の張型が目視できるようになると、王は鎖を引くのをやめ、指先でまたそれを奥に埋め戻してしまった。くちゅりと、呑み込む内壁が淫らな音を立てる。

「アぁッ、や……、だめ、も、奥入れないで…!」
「では、こうかな」
「ああぅっ!」

 また、鎖を引っ張られる。
 卵型よりはやや長めの丸みを帯びた異物が、媚肉の中を蠢いて、後ろの口から今にも産まれそうになる。
 ナシェルは尻孔をすぼませ小さな淫具を排出しようとするが、王が指の腹で孔をふさいでしまった。

「まだだ。出して良いとは言っておらぬぞ」
「……ううう……」

 ナシェルは眦に溜まる汗と涙をシーツでぬぐい、わなわなと背を震わせ、呻き声を上げて抗議した。尻肉を拡げさせられているその手で、責め具の鎖を己でひきぬいてしまえたら楽なのに。

 王はわざと強弱をつけて鎖を引き、出て来ようとする銀の異物をまたナシェルの奥処へ含ませる。
 指輪の嵌った長い指に粘膜を凌され、丸みをおびた淫具の尖端に良いところを刺激され続け、ナシェルは射精感と闘って喘ぐしかない。背を丸め、肌をざわざわと粟立て、ふるえ乱れた。

 硬くはりつめた自身ペニスからは透明な蜜が糸を引くようにあふれて、寝具を濡らす。

 王の指の動きが一層細やかになる。ナシェルがいよいよ達しそうになっているのを読み取って、責めと引きを注意深く調節しているのだ。

 王はナシェルを説き伏せるように囁き、なおも限界まで我慢を強いながら、粘膜を責め具と指でとろかせる。射精寸前まで否応なく高められれば、快感も苦しみと同義になる。

「っあぁン……や、んぁ……ア、も、っ……だめ、出ちゃう――」

 ああやばい、もうあとひと突きでイく、というぎりぎりのところで、王の指がようやく淫具を孔から引き抜いた。
「っ………!」
 危うく吐精しかけたがぎりぎりの所で耐える。
 喪失感に、周囲の肉ががひくんひくんと収縮するのを感じる。
 圧迫感から解放され、ナシェルは胸郭に深く息を入れた。

 しかしそれ以上息をつく暇は与えられず、香油をしたたらせた尻の窄みに王の兇大なものがぐいと、押し付けられた。

 固く怒張しきったものが、入口付近をゆるやかに上下移動する。
 ……おいおいまだ焦らすつもりか。それにしても太くて大きい。ナシェルは舌舐めずりした。早く挿れてほしい。挿入してくれたらそれだけで早々にイってしまいそうだ。

 王のカリ首が、あふれた香油を舐め取るように尻穴周辺を迂回する。
 ナシェルは王にすり寄るように無意識に腰を上げ、受け入れやすい体勢を取った。固くて熱い王のそれが最奥まで届いたときの快感を想像しただけでわくわくした。

 興奮で息が上がる。気が触れそうだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

伯爵令嬢は執事に狙われている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:653pt お気に入り:449

攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました

BL / 完結 24h.ポイント:1,480pt お気に入り:2,625

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,130pt お気に入り:33

退廃芸術 大展覧会

BL / 連載中 24h.ポイント:569pt お気に入り:15

殿下、俺でいいんですか!?

BL / 完結 24h.ポイント:1,633pt お気に入り:3,903

転生幼女は幸せを得る。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:241pt お気に入り:210

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,017pt お気に入り:13

処理中です...