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番外編
かけがえのない日々⑲※
「……素晴らしいよ。見てごらん」
王が視線で促すと、寝台を覆う薄絹の紗幕が精霊たちによって引き開けられた。
そこには姿見が用意されていて、膝立つ自分たちの姿が映っている。未だ着衣に乱れのない王と、裸同然で乱される自分の格差に、羞恥心が湧き上がる。
霞んでいた視界が徐々に鮮明になってゆく。ナシェルは両手首を吊られたまま、大きく膨れた乳蕾に金輪をつけられた己を目の当たりにした。あまりにも淫靡な姿に思わず目を伏せる。
分かっていて、それを自分で望んだはずなのに、こうしていざ鏡で見ると衝撃的な装飾品だった。
「見て、ナシェル」
顔を上げさせられ、鏡の中の王と視線を絡める。…たちまち体の中枢がひくつき、羞じらいや葛藤の全てが渇望へと変じてゆく。もっと散々になぶってほしくて、ナシェルは顎を引き目尻で媚態を示した。王はそのいじらしい視線を受け流し、ナシェルの頬にかかる髪を掻きとりながら鏡越しにその艶美な全身像を讃えた。
「よく頑張ったね。思ったとおり、そなたにとてもよく似合っている…」
「……ありがとうございます、嬉しい……」
褒められて嬉しくて、ナシェルの瞳からは次々と悦びの涙が溢れる。
金の輪は重たく、常に乳首が下方向へ引っ張られているような感覚がある。
身じろぎすれば鎖の先で蒼玉石の飾りがゆらゆらと揺れて、ますます尖端に官能のうねりが襲ってくる。
こんな猥らな装身具を身に着けたまま、このさき生きていかねばならないのかと思うと惨めな気持ちが湧いてくる一方で、蒼玉の中に込められた闇の神司が脈動するのを感じて充足感すら感じるのだった。
まだ続いている乳首の疼痛と、肌のそこかしこに感じる父の指の感触。
感情が乱高下し、千々にかき乱される。涙があふれて止まらない。……中毒性の高い莨を吸わされた己が、少々正常でない精神状態であることは分かっていた。しかし今はとにかく王の肉芽と嗜虐と慈恵の全てをこの身に浴びたいと渇望していて、今すぐ望むものすべてが与えられたなら幸福で気が狂ってしまうかもしれないと思った。
王はナシェルの眼差しの中の性的陶酔を汲んだのか、切れ長の眸を細めて微笑む。
「どんな感じだ?」
「まだ、ジクジクしてて……」
「痛むか? 莨を足しても良いのだよ」
また長煙管を向けられて、ナシェルは首を振った。
「薬はいや……これ以上それを吸ったら、本当に何も分からなくなるから。ただの快楽人形になるのだけは嫌です……」
「そうか。――だが時には薬に精神を乱され我を失うそなたの姿も、余には愛おしいのだよ。遠慮は要らぬ」
「ちゃんと、貴方がどんな風にしてくださったか憶えていたいのです……吸ったら、もっと気持ちよくなれるのは分かります。でも、何も憶えていられないから」
重ねて拒むと、王は煙管を自身の口許へ向けて長く一吸いしてから灰皿に戻した。煙たい吐息をつく、その表情からは酩酊や興奮は感じられない。常用者の王にとってはその程度のものだ。
「中毒性を恐れているのか? それほど恐いものではないよ……悪夢を、楽しい夢に置き換えてくれる」
王は背後から脇に腕を回して抱きしめてくる。…その言葉に、思い当たるものがあった。父はまだ、冥界に堕ちてきて孤独だったころの夢を見るのだ。もう、そのときの千年間よりもずっと長く私と共に生きているのに。…かつて負った傷はきっと、冥王がこの三界から消え失せ転位するまで彼を蝕み続けるのだろう。
「悪夢を見ないようにするために常用なさるのですか?」
「それだけではないよ、日ごろの憂さを忘れるためにね。大した効果はなくなってしまったが。……まぁよい、そなたが吸いたくないと申すなら無理強いはせぬ。しばらくは、少し痛みが残るかもしれないよ」
「……はい、大丈夫……」
廻り込んできた手で飾りの下を、するりとなぞられた。直接触られているわけでもないのに尖端に痺れが奔る。背をくねらすようにして逃れるが、ピアスも揺れてなおさら刺激が伝わる。
ひぅ、と息を殺すようにして小さな悲鳴を上げると、王はナシェルを抱き留めながら耳元へ囁いてくる。
「――これでもう余の目を盗んで悪さはできぬはずだよ。余の神司がいつでもそなたを包み、見守っているからね」
「……は、い」
「誓え、ナシェル」
耳朶を舐め上げ甘噛みながら、王は低く厳粛味を帯びた声で命じる。ナシェルは甘美な命令に随い、身と心の全てを王に委ねた。
「御心を傷つけるようなことは、もう致しません――誓います。ずっと、ずっと貴方を愛してる」
「余もだよ、そなただけを永遠に愛する……」
誓いあう言葉には、互いに少々の意味の違いが含まれている。王にはもう自分しか残されていない。しかし自分には、王から受け継いだものを次代へ引き継ぐ責務があるのだ。…ナシェルが切なさを覚えたとき、その感情を遮るかのように王が指示を与えた。
「ちゃんと、鏡を見てて」
そしてもう片方の手をピアスのない右胸に這わせてきた。
尖り立った胸の粒をくにゅり、とつぶされて、左手で脇をなぞられる。
同時に長い舌が耳穴に侵入してくる。
そうしてからまた王は、鏡越しにナシェルに視線を合わせた。
愛撫されるだけでなく、その一部始終を鏡越しにつぶさに見つめさせられて、ナシェルの劣情は否応なく増幅する。
「あぁっ……あ、」
胸をいたぶる指に力が籠る。左胸の金のピアスが呼応するように揺れて更なる痺れと快感が押し寄せてくる。
啜り泣き、鏡越しに訴えるように見つめると、眸で色っぽく笑んだ王が、耳に息を吹き込むようにして、尋ねてくる。
「――こうして鏡で見ながらすると、視覚も刺激されてますますイイだろう」
「は、い……気持ちい、あっ…、父上、もう……だめ……いっちゃう……」
「いいよ、ナシェル……」
ようやく許しが与えられ、さらに激しく乳首を揉まれ、ナシェルは甘い声をあげながら絶頂する。下を愛撫されていないので精液は出ない。雌逝きというやつだ。
「あんっ、ああッ……ひァ……」
「目を逸らさないで。鏡を見なさい」
絶頂しているときでさえ指の動きは止まず、重ねて命じられ。
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