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番外編
かけがえのない日々㉓※
……中に浴びせられた圧倒的な神の力に酔いしれ、ナシェルは半ば放心状態で息を弾ませる。快感で全身の肌が粟立ち、慄えが止まらない。
「はー……はー……」
王の胸に凭れかかり、乱れた呼吸を戻そうと肩で息をついた。
「ナシェル、」
気遣う王が体内に嵌った剱を引き抜こうとする。ナシェルは逆に王の腋に両手を廻してしがみついた。
「や、もっと……お願い……」
――出て行かないで。もっとして。
たっぷりと中で射精されたのに、まだ貪るように王のモノを下腹部で食んでしまう。ナシェルは自分の猥らな要求に頬を染めたが、どうにも怺えることができないほど自分をいじめる肉塊が慕わしく、抜かれるのは寂しくて仕方がなかった。
腕の中で甘えた目で慈悲を乞うと、王は、求めを理解した。
…それではと、脱力したナシェルを抱きとめて横向きに寝かせた王は、まだ硬さを保ったままの肉杭で、最奥をじっくりと攪拌する。
突き上げを受けるたびに生温かい精液が後孔からあふれ出し、ナシェルの内腿を伝い落ちる。ナシェルは半ば意識混濁し、峠に達した余韻にひくひくと痙攣しながらも、淫らに腰を反らして重なる抽送を受け入れた。
精液とともに注がれる冥王の神司は同属神であるナシェルに安らぎを与え、その血となり肉となり、力となる。与えられれば歓喜して貪り、制限されれば止めどなく欲しがってしまう。上位神の神司を求めるのは、下位神としての本能だ。――それにこんなにぐずぐずになるまで愛されて、もう制御などきくはずもない。
――もっと、浴びたい。もっと……。
尽きせぬ欲望に応えるように王はナシェルの綺麗な双臀を鷲掴み、絡みつくような熱い肉筒の中に、思いの丈を何度も、繰り返し注ぎ込んだ。
汗と淫らな汁にまみれ、寝台はぐっしょりと濡れてしまった。
へとへとに疲れきってはいたが充足感でいっぱいだった。極上の神の司に包まれ、胸には所有の証の乳飾を飾られて……、上位神の掌中に収まる歓びで満たされていた。
繋がったまま、再び覆い被さってきた王に抱きしめられる。半分眠りかけつつ、口づけを繰り返し、
「もうお腹いっぱい…。たくさん愛してくださって、ありがとうございます。幸せ……」
と言うと、父は微笑ってナシェルの頬にはりついた髪を手で掻きやった。
「おかしいな、そなたに仕置きするつもりで来たのだが。礼を云われるとは思わなんだ」
「うん……全部気持ちよかったです。お仕置きは少し辛かったけど、でも……すごかった」
ナシェルは満足げに唇を舐める。
「そんな可愛いことを言われたら、もっとしてあげたくなるよ」
「ええと…お仕置きだったらもう、充分です」
時間を忘れるほど愛されるのは嬉しいが、正直辛いのはたまらない。ナシェルは両手の指を重ねるようにして遠慮する。
「もういっぱい反省したから……」
「仕置きではなくて、気持ちいいことだけ。ずっとそなたを抱いていたいよ」
あやすように髪を撫でられて、幸せでいっぱいになる。王の腕の中で、恐る恐る訊ねた。
「……父上、もしかしてまだ行けるんです?」
「当たり前だ。……と、言いたいところだが残念ながらさすがに今日は全て、そなたに搾り取られたよ。ほら、この通り。また精気が溜まったらしてあげるね……」
王は優しくこめかみに口づけし、ぬるりと肉の杭をナシェルから抜き取った。
ナシェルは寂寥を感じながら寝返りをうって、出てきたものを確める。
肉棒には粘性の白露が糸を引いてまとわりついている。一仕事を終え、大きさが通常に戻った様子もたまらなく愛おしい。接吻したくて、唾液が口中に滲み出してくる。思わず手を伸ばしたが、王は手近な衣をするりと纏ってしまい、直に触れることは叶わなかった。
「洗って綺麗にしてあげるよ。立てるか?」
甘えた視線でふるふると首をふると、「じゃ、待っていなさい」と王は寝台から降り、先に湯殿のほうへ向かった。
――ナシェルは王が離れたとたん、はっと我に返る。
(しまった、そういえば父上に噛みつこうとするから氷竜を湯殿に、閉じ込めておいたのだ)とナシェルが思い出した瞬間、王が結構な剣幕で叫ぶのが聞こえてきた。
「何だこれは!!? 」
「ひっ、何……?」
あわてて羽織物を身に巻き、部屋付きの湯殿へ足を引きずって行くと、湯殿の入口で冥王が半裸のまま仁王立ちしていた。
「そなた自分で歩けるではないか」「まぁ、無理すれば……」、と無言のまま目で会話しつつ、王に指で示されてナシェルは湯殿をのぞき込んだ。
いつでも入れるよう整えられているはずの湯殿は、天井から床まで厚い氷が張られ氷柱がぶら下がっていた。怒った氷竜が浴室を吐息でいちめん凍りつかせたらしい。
湯殿の奥からヒョオオォとものすごい冷気が吹き付けてくる。寒い。湯を浴びるどころか立ち入るのも無理だ。たぶん湯船も凍っているだろう。
「ああ……やっちゃったか……しまった……」
「小賢い邪竜め、余が風呂を使うと分かっていて凍らせるとは反逆同然の行いだ、断じて許さぬ。今度こそ我が神剣の錆にしてくれる」
果たして氷竜にそこまでの知能があるだろうかとナシェルは首をかしげたが、王は目の前の氷柱を手で折って侵入口を切り開こうとしている。
父は次に丸腰であることに思い至ったか、こちらを振り向いた。
「ナシェル、余の剣を持て!」
「ええ? お願いですからここで私のペットと戦わないでください」
「そなたのペットなど、奴を倒した後にいくらでも珍しい魔獣を連れてきてやる! 安心いたせ」
「いえそうではなくて! 貴方とあれが本気でやりあったらこの城が持たないって意味です!!」
相変わらず少々噛みあわない半裸の冥界神たちを、湯殿の奥から氷竜ディルムトが猛烈な吹雪を発しながら睨んでいた……。
◇◇◇
「陛下、一同、出立の準備が整っております」
若き将軍アシュレイドの言葉に軽く頷いた冥王は、黒翼騎士の一人から手綱を受け取り馬上に身を躍らせた。同じように騎装を整えたナシェルを振り返り、ふわりと笑む。
「では参ろうかナシェル。皆も行くぞ」
は! と声を揃えた随行の騎士たちの前で、神馬・闇嶺が大翼を拡げる。風が地面を叩き、砂が渦を巻く。
冥王に続き幻嶺の鞍上に上がったナシェルは、アシュレイドを振り返る。
「アシュレイド、私たちの馬に無理についてくる必要はない。後で、一号砦で合流すればよい」
冥王とナシェルの黒天馬は魔族たちの乗る馬とは別格で翼も大きく、脚が速い。一羽搏きで並みの馬の二倍は翔ける。随行者たちを忽ち引き離してしまうことが予想されたのでこのように声を掛けたが、アシュレイドからはむきになった否定の言葉を返された。
「とんでもありません! 随行には飛翔力に優れた精鋭を選りすぐっております。遅れをとるなどあり得…」
言葉を待たずに冥王が闇嶺に鞭を入れ、王の黒天馬は力強く翼を掻いて宙天へと駆け上がった。旋風が巻き起こり、騎士らの馬が耳を伏せ後じさる中、ナシェルも苦笑して幻嶺の腹を蹴る。
慌てて出立の号令をかける将軍の声が、すぐに遥か下方へと遠ざかる。
暗黒界の強い向かい風が顔に吹きつけてくる。
ナシェルは王に轡を並べ、声を張った。
「父上! 騎士たちがついて来れるように、少しゆっくりと駆けて下さいますよう願います」
王は目線を上げ、辟易の表情である。
「あぁ、そなたとふたりきりで視察に出たかったのだがなぁ……とんだ大所帯だ」
「行幸がばれてしまったのですから随行が付くのは仕方ありません。
私も幾分か、大袈裟とは思いますが……」
ナシェルは魔族たちと精霊たちが、まろまろと後方をついてくるのを肩越しに確かめた。
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