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優くんなんて、だいっ嫌いなんだから!!
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結局、来ちゃった……挨拶だけして、帰ろっかな。
そっと体育館に入ると、懐かしい匂いに胸が擽られる。コートで打ち合いしているサークルの人たちの中に、もしかして優くんもいるんじゃ……なんて、バカな期待をしてしまう。
「ミーコちゃん、来てくれたんだ!」
笑顔で手を振ってくれた中村さんに、軽く頭を下げた。
「こんにちは」
中村さんは私に手招きして体育館の隅に座らせると、私の目の前にスマホを翳した。
「ミーコちゃんに、見せたいものがあるんだ」
動画の再生ボタンを押すと、バドミントンの試合をしてる優くんが、そこにいた。
中学の時よりも更に逞しくなってて、腕なんか見ただけで筋肉の盛り上がりが分かる。精悍だった顔つきは、ますます磨かれてて、大人の顔になっていた。
「や、やだ……見たくない」
私のことなんかとっくに忘れて、バドミントンのことしか考えてない優くんなんか、見たくないよ……
腰を浮かそうとした私を、中村さんがじっと見つめる。
「これまで優作が、必死に練習してきた成果なんだ。見てやってくれないか?」
その熱意に負けて、仕方なく座り直した。
画面の中の優くんを見つめる。もう優くんしか、見えなくなる……
瞬発力も、筋力も、中学の時とは比べものにならないぐらい格段に上がってて、高校に入ってから相当努力してきたことが伝わってきた。
試合は接戦だった。ファーストゲームは相手が、セカンドゲームは優くんが勝ち、ファイナルゲームの今、何度も同点でデュースとなる攻防戦が繰り広げられていた。激しい打ち合いを見ているだけで自然に拳に力が入り、汗がじわりと滲んでくる。
「優作……大会で結果出したらミーコちゃんにもう一回告白するって決めて、練習に打ち込んできたんだ。でも、高校バドミントンの壁は厚くてね。春季大会でも、地区大会でも満足いく結果が残せなかったんだ。
そして、迎えた新人戦……」
画面の中の優くんが、マッチポイントを獲った。
お願い、決めて!!
相手のミスでふわっと上がったシャトルを逃さず、優くんが鋭いスマッシュをラインぎりぎりに打ち込んだ。
「やった!!」
思わず叫んだ私に、フッと中村さんが微笑んだ。
「これ、準決勝なんだ。明日が、決勝戦」
胸が、ドクンと高鳴る。
バッグの中からスマホを取り出し、ずっと恐くて見られなかった優くんからのLINEを開けた。
そこには……たくさんの想いが詰まってた。
『ミーコ、大好きだよ』
『会えなくて寂しいけど、俺はここで頑張るって決めたから』
それ、だけじゃない。
『春季大会、負けた……高校のレベル、パネー』
『インターハイ、うちの高校は優勝したけど、試合すら出してもらえなかった。ハハッ、マジ悔しい』
優くんは、私が目を背けてる間も、ずっと目を逸らさずに私と向き合おうとしてくれてた。
最後の一文が、目に止まる。
『大会で結果出すまで、ミーコに連絡するのやめる。それでも、俺の気持ちはずっと変わんねーから』
胸の奥深くから熱いものが溢れ出してきて、それは涙となって頬を伝う。
私、今まで優くんの何を見てたんだろう。
優くんが小学校卒業してから離れてた二年間、まったく顔を合わせなくても私への想いは変わることなく好きでいてくれたのに。
中学卒業したってそうだって、なんで信じることが出来なかったんだろう……
「明日、俺……優作の試合見に行くんだけど、車乗ってく?」
「い、行きます!!」
中村さんの誘いに、身を乗り出して答えていた。
もう、目を背けたりしない。不安に呑み込まれたりしない。会えない時間を強さに変えて、優くんにふさわしい女の子になりたい。
恋を失ったって思ってたけど、私たちの恋は始まってもいなかった。
だから、どうか私から始めさせて。
今度は優くんに、素直に『好き』って伝えるから……
そっと体育館に入ると、懐かしい匂いに胸が擽られる。コートで打ち合いしているサークルの人たちの中に、もしかして優くんもいるんじゃ……なんて、バカな期待をしてしまう。
「ミーコちゃん、来てくれたんだ!」
笑顔で手を振ってくれた中村さんに、軽く頭を下げた。
「こんにちは」
中村さんは私に手招きして体育館の隅に座らせると、私の目の前にスマホを翳した。
「ミーコちゃんに、見せたいものがあるんだ」
動画の再生ボタンを押すと、バドミントンの試合をしてる優くんが、そこにいた。
中学の時よりも更に逞しくなってて、腕なんか見ただけで筋肉の盛り上がりが分かる。精悍だった顔つきは、ますます磨かれてて、大人の顔になっていた。
「や、やだ……見たくない」
私のことなんかとっくに忘れて、バドミントンのことしか考えてない優くんなんか、見たくないよ……
腰を浮かそうとした私を、中村さんがじっと見つめる。
「これまで優作が、必死に練習してきた成果なんだ。見てやってくれないか?」
その熱意に負けて、仕方なく座り直した。
画面の中の優くんを見つめる。もう優くんしか、見えなくなる……
瞬発力も、筋力も、中学の時とは比べものにならないぐらい格段に上がってて、高校に入ってから相当努力してきたことが伝わってきた。
試合は接戦だった。ファーストゲームは相手が、セカンドゲームは優くんが勝ち、ファイナルゲームの今、何度も同点でデュースとなる攻防戦が繰り広げられていた。激しい打ち合いを見ているだけで自然に拳に力が入り、汗がじわりと滲んでくる。
「優作……大会で結果出したらミーコちゃんにもう一回告白するって決めて、練習に打ち込んできたんだ。でも、高校バドミントンの壁は厚くてね。春季大会でも、地区大会でも満足いく結果が残せなかったんだ。
そして、迎えた新人戦……」
画面の中の優くんが、マッチポイントを獲った。
お願い、決めて!!
相手のミスでふわっと上がったシャトルを逃さず、優くんが鋭いスマッシュをラインぎりぎりに打ち込んだ。
「やった!!」
思わず叫んだ私に、フッと中村さんが微笑んだ。
「これ、準決勝なんだ。明日が、決勝戦」
胸が、ドクンと高鳴る。
バッグの中からスマホを取り出し、ずっと恐くて見られなかった優くんからのLINEを開けた。
そこには……たくさんの想いが詰まってた。
『ミーコ、大好きだよ』
『会えなくて寂しいけど、俺はここで頑張るって決めたから』
それ、だけじゃない。
『春季大会、負けた……高校のレベル、パネー』
『インターハイ、うちの高校は優勝したけど、試合すら出してもらえなかった。ハハッ、マジ悔しい』
優くんは、私が目を背けてる間も、ずっと目を逸らさずに私と向き合おうとしてくれてた。
最後の一文が、目に止まる。
『大会で結果出すまで、ミーコに連絡するのやめる。それでも、俺の気持ちはずっと変わんねーから』
胸の奥深くから熱いものが溢れ出してきて、それは涙となって頬を伝う。
私、今まで優くんの何を見てたんだろう。
優くんが小学校卒業してから離れてた二年間、まったく顔を合わせなくても私への想いは変わることなく好きでいてくれたのに。
中学卒業したってそうだって、なんで信じることが出来なかったんだろう……
「明日、俺……優作の試合見に行くんだけど、車乗ってく?」
「い、行きます!!」
中村さんの誘いに、身を乗り出して答えていた。
もう、目を背けたりしない。不安に呑み込まれたりしない。会えない時間を強さに変えて、優くんにふさわしい女の子になりたい。
恋を失ったって思ってたけど、私たちの恋は始まってもいなかった。
だから、どうか私から始めさせて。
今度は優くんに、素直に『好き』って伝えるから……
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