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優くんなんてっ!!……大好き、なんだから。
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「じゃあ行こうか、ミーコちゃん」
「はい、よろしくお願いします」
黒のアルフォードの助手席に乗り込むと、新車の匂いがした。緊張した面持ちで前を見つめていると、運転席に座る中村さんが笑いかけた。
「まだ試合会場に着くまでは時間かかるから、今からそんなんじゃ、疲れちゃうよ」
「ぁ、はい……」
それでも、緊張せずにはいられない。
だって今日は、私が優くんに初めて告白する日なんだから……
あ、正確には二回目、か。
一回目の告白はうっかり口を滑らして、しかも直後に別れを告げるという最悪なものだった。
『優くんが、好き。優くんのことが小学生の時からずっと好きで、中学に入って再会してからもっともっと好きになった……
だからね。好きだけど……好きだから、優くんとは、バイバイなの』
優くんは近所に住んでたお兄ちゃんで、小学生の頃はしょっちゅう絡まれたり、からかわれたりしてた。それが中学に入学した途端、顔を合わせることがなくなって、私の胸にはぽっかりと大きな隙間が空いてしまった。
そんな優くんに会えない寂しさを『これでからかわれずに済んで、せいせいした』『優くんがいなくてすっきりした』って必死に自分に言い聞かせて、記憶の中から優くんを追いやった。
それなのに……中学で優くんに再会して、強引に彼の所属するバドミントン部に入部させられたり、毎日一緒に帰ったり、週末に通ってるサークルに連れてかれたりしてるうちに、必死に押さえ込んできた優くんへの気持ちがいっぱいになってた。
私はその気持ちを素直に認めたくなかった。だって、優くんはすぐに部活を引退し、卒業してしまう。その後は……また、離れてしまうから。
小学生の時に感じたような……ううん、それよりも深い悲しみを味わうのが怖くて。
だから、『ミーコが好きだ』って言ってくれた優くんの気持ちを受け止めることが出来なかった。
「ちょっと、休憩しようか。」
「はい」
新車の匂いに酔いかけていたとこだったので、助かった。中村さんが方向指示器を出し、車は吸い込まれるようにサービスエリアへと滑り込んで行く。
ここまでで、半分ぐらいかな。名古屋から埼玉は遠いな……
優くんはバドミントンの強豪校である埼玉の高校に入学し、寮生活を始めた。練習が厳しく、プライベートな時間なんて殆どない。高校に入ってから、優くんは一度も家に帰ることはなかった。
誰も知っている人がいない環境で、慣れないことの連続の中、バドミントンの練習に励んでた優くん。強いな、私ならきっと寂しくて泣いちゃうよ。
それなのに、私は……優くんの苦労なんて少しも考えてなかった。
毎日電話したり、LINEを送り続けてくれてたのに、優くんと向き合うことが恐くて、無視し続けてた。
車から降りると、目の前にはリゾート地を思わせる可愛い街並みがあった。
「うわぁ、素敵!」
「地中海の港町をイメージして設計したらしいよ。せっかくだから、女の子が喜びそうなところで休憩しようと思ってさ」
サークルで何度か会ったぐらいの私に気遣い、試合会場まで運転してくれる中村さんに申し訳ないと思いつつ、ありがたかった。
お手洗いに行ってからカフェに行き、そこで軽く食べた後、駿河湾を一望できるという3階の展望テラスへと向かった。
夏休みを過ぎてから、優くんから電話もLINEもぱったりと来なくなった。優くんはもう、私なんか忘れて向こうでの高校生活を楽しんでるんだって勝手に思ってたけど、私が無視し続けたLINEには『大会で結果出すまで、ミーコに連絡するのやめる。それでも、俺の気持ちはずっと変わんねーから』って入ってて、そこで優くんの気持ちを知った。
11月の潮風は肌寒さを感じつつも、穏やかに凪いでいる海を見つめていると、気持ちが次第に落ち着いてくるのを感じた。
優くんに会ったら、今度こそ意地を張らずに素直な気持ちを伝えよう。
「はい、よろしくお願いします」
黒のアルフォードの助手席に乗り込むと、新車の匂いがした。緊張した面持ちで前を見つめていると、運転席に座る中村さんが笑いかけた。
「まだ試合会場に着くまでは時間かかるから、今からそんなんじゃ、疲れちゃうよ」
「ぁ、はい……」
それでも、緊張せずにはいられない。
だって今日は、私が優くんに初めて告白する日なんだから……
あ、正確には二回目、か。
一回目の告白はうっかり口を滑らして、しかも直後に別れを告げるという最悪なものだった。
『優くんが、好き。優くんのことが小学生の時からずっと好きで、中学に入って再会してからもっともっと好きになった……
だからね。好きだけど……好きだから、優くんとは、バイバイなの』
優くんは近所に住んでたお兄ちゃんで、小学生の頃はしょっちゅう絡まれたり、からかわれたりしてた。それが中学に入学した途端、顔を合わせることがなくなって、私の胸にはぽっかりと大きな隙間が空いてしまった。
そんな優くんに会えない寂しさを『これでからかわれずに済んで、せいせいした』『優くんがいなくてすっきりした』って必死に自分に言い聞かせて、記憶の中から優くんを追いやった。
それなのに……中学で優くんに再会して、強引に彼の所属するバドミントン部に入部させられたり、毎日一緒に帰ったり、週末に通ってるサークルに連れてかれたりしてるうちに、必死に押さえ込んできた優くんへの気持ちがいっぱいになってた。
私はその気持ちを素直に認めたくなかった。だって、優くんはすぐに部活を引退し、卒業してしまう。その後は……また、離れてしまうから。
小学生の時に感じたような……ううん、それよりも深い悲しみを味わうのが怖くて。
だから、『ミーコが好きだ』って言ってくれた優くんの気持ちを受け止めることが出来なかった。
「ちょっと、休憩しようか。」
「はい」
新車の匂いに酔いかけていたとこだったので、助かった。中村さんが方向指示器を出し、車は吸い込まれるようにサービスエリアへと滑り込んで行く。
ここまでで、半分ぐらいかな。名古屋から埼玉は遠いな……
優くんはバドミントンの強豪校である埼玉の高校に入学し、寮生活を始めた。練習が厳しく、プライベートな時間なんて殆どない。高校に入ってから、優くんは一度も家に帰ることはなかった。
誰も知っている人がいない環境で、慣れないことの連続の中、バドミントンの練習に励んでた優くん。強いな、私ならきっと寂しくて泣いちゃうよ。
それなのに、私は……優くんの苦労なんて少しも考えてなかった。
毎日電話したり、LINEを送り続けてくれてたのに、優くんと向き合うことが恐くて、無視し続けてた。
車から降りると、目の前にはリゾート地を思わせる可愛い街並みがあった。
「うわぁ、素敵!」
「地中海の港町をイメージして設計したらしいよ。せっかくだから、女の子が喜びそうなところで休憩しようと思ってさ」
サークルで何度か会ったぐらいの私に気遣い、試合会場まで運転してくれる中村さんに申し訳ないと思いつつ、ありがたかった。
お手洗いに行ってからカフェに行き、そこで軽く食べた後、駿河湾を一望できるという3階の展望テラスへと向かった。
夏休みを過ぎてから、優くんから電話もLINEもぱったりと来なくなった。優くんはもう、私なんか忘れて向こうでの高校生活を楽しんでるんだって勝手に思ってたけど、私が無視し続けたLINEには『大会で結果出すまで、ミーコに連絡するのやめる。それでも、俺の気持ちはずっと変わんねーから』って入ってて、そこで優くんの気持ちを知った。
11月の潮風は肌寒さを感じつつも、穏やかに凪いでいる海を見つめていると、気持ちが次第に落ち着いてくるのを感じた。
優くんに会ったら、今度こそ意地を張らずに素直な気持ちを伝えよう。
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