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57ドーナン殿下の気持ち
神殿に着くとセダ叔父様が出迎えてくれた。
ネイト様はまだ帰ってきていないらしい。
荷物を預けると客間に通される前に作って来たオートミールバーを半分ほど診療所に持って行った。
ドーナン殿下のお見舞いも兼ねていた。
「ドーナン殿下お加減はいかがです?」
彼はすぐに起き上がった。顔色もいい。
「リンローズ様。ありがとう。君たちのおかげで随分と調子がいい。西の辺境伯領はどうだった?」
「はい、皆さんのおかげで何とか結界を張ることは出来ました。でも、神宿石はすでに限界が近いと思います。早く新しい神宿石に取り換えないと‥」
「ああ、僕も色々実情を知って本当に情けなく思っている。こんな体で何もできない王子だってつくづく思い知らされて‥」
ドーナン殿下の顔色がすぅっと青くなる。
「そんな。殿下は薬を盛られていたんですよ。やらなかったんじゃなくて出来なかったんです。でも、これからは違います。殿下は元気になって国王になってそしてこの国は豊かで素晴らしい国になって行くんです」
私は持って来たオートミールバーをそっと差し出す。
「これ食べたら元気出ます?ふふっ」
私の顔はきっと未来はばら色ですよ。みたいな顔になっていたと思う。
「ああ、そうだな。リンローズの言う通りだ。後ろばかり振り返っていてはな」
そう言うと吹っ切れたみたいな顔でオートミールバーを手に取った。
「うん。いつ食べてもうまいな。これは?ナッツがいろいろ入っているのか?」
「はい、カシューナッツにマカダミア、アーモンドを砕いてあとくるみも入れてみました」
「それでリンローズはまた北の辺境伯領に行くとか聞いたが」
「まあ、誰が?」
「セダや辺境伯たちも見舞いに来てくれてな。国王になる決意をしてくれと言われた。まだ、身体に自信がなくて戸惑っていた。が‥」
ドーナン殿下がぐっと背筋を伸ばした。
「もう、皆さんの気持ちもわかるけど、殿下はご病気なのに‥」
「いや、さっきのリンローズの言葉を聞いていつまでもこんな所でぐずぐずなんかしていられないって思った」
「はい、その意気です。北の辺境伯領もきっと神宿石の力が弱っているのだと思います。今、あの石を何とかしようとみんなが協力して動いています。だからドーナン殿下も頑張ってください」
「ああ、なんだかリンローズにそう言われると力が湧いて来るな。これのおかげか?」
殿下がおどけたようにオートミールバーを見せた。
私は殿下の身体に向かって手をかざす。ドーナン殿下が一日も早く元気になりますように。治癒魔法と回復魔法の連打よ~
ピンク色と金色の淡い光がぐるりと渦を巻いてドーナン殿下の身体に降り注いだ。
「リンローズありがとう。身体中に力が沸き上がるみたいだ。君は本当に素晴らしい女性だ。僕も一緒に行きたいが役には立たんだろうから、北の辺境伯領、気を付けて行ってきてくれよ」
「ありがとうございます。ですが、殿下はこれからものすごく大切な存在なんですから、くれぐれも無理をしないで下さいね」
「ああ、君にはかなわないな。リンローズ。本当に僕の婚約者にならないか?」
「そのお話は勘弁して下さい。他の事ならどんな事でも協力するつもりですので」
「はぁぁぁ、それを聞いたらがっかりだ」
「殿下!」
「うそ、冗談だ。僕は当分忙しいだろうから、そんな暇はないだろうしな‥・・うん、やっぱりうまい!」
ドーナン殿下は少し残念そうにそう言うとまたオートミールバーをひとかじりした。
私はそばでそれを見ている。
脳内にドーナン殿下の考えが流れ込んで来る。
【はぁぁ、残念だ。リンローズが僕のそばについてくれればこの先、王になったとしても安心なのに‥まあ、シュナウトも相当リンローズが好きなようだがリンローズにはその気はないみたいだからな。でも、ラセッタの奴もリンローズ狙ってるみたいだし。まあ、リンローズはそれだけの価値があるって事なんだろう。それにしてもシュナウトの奴、見舞いに来てくれたな。なんだかんだ言ってもあいつとはいい意味で仲良くやって行きたいんだよな。もう、争いはごめんだ。その為にもリンローズが言ったようにしっかりしないとな‥】
私はそんな彼の気持ちを知ってうれしかった。私達のようにはなってほしくない。半分でも血の繋がった兄弟なんだから。
「ドーナン殿下。頑張って下さいね。ではそろそろ行きます」
「ああ、リンローズ。気をつけてな」
「はい、行ってきます」
私はドーナン殿下の病室を後にした。
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