【R18•完結】「子どもさえできれば自由にしていいから」と言った夫が執着溺愛して離婚してくれません

紀ノこっぱ

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14. 水面に映る甘やかし★

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「シリル様? どうしたの?」

 頬が赤い。湯あたりで?

「べつに。自分の心の狭さを知ったから」
「狭くなんか、ないわ」

 キスで頬に触れられた。
 わざと立てられたリップ音が、浴室に、ことさら響く。
 シリルはシャワーを止めて、私を抱き上げた。

「きゃ」

 運ばれて、ぬるい湯の張った浴槽に浸けられる。
 
 広い浴槽まである浴室……こんな規模の入浴設備を夫婦の部屋に備えるのだから、改めてパスコヴィラダ家の財力に感心する。

 浴槽は大理石でできていて、計算された曲線を描いている。
 人が五人はゆうに浸かれる広さ。必要あるのかしら。

 湯気の向こうに、ガラス越しのパティオの植栽が見えた。こういう癒しの装飾に凝っているところが、パスコヴィラダ家らしい。

 ちゃぷ、と水音がしてシリルが私に寄り添う。
 額や、まぶた、目尻にキスをして、触れる手つきもやさしい。
 羽を撫でるように繊細な触れ方。
 さっきまでの身体の熱を炙るのと大違い。
 気持ちいい……。

「ふぁ」

 ゆるく、挿入ってきたシリルは、いいところを甘やかす腰遣いをする。
 的確な穿ち方に、私を苦しめていた焦燥はすぐ、快楽と共に解き放たれた。

「あぁん! いっ、イっちゃ……ああ……ああ……やぁア!」

 連続で、何度も……。
 気持ちよさで、喉から甲高い喘ぎが漏れて止められない。

「ダリアの、僕を受け入れてるときの声、もっと聞いていたい」

 きゅっと、背後から抱きしめる腕の力が強まった。

「あ……」
「普段の声も好きだよ。でもこの、くたくたで、何もわからなくなって僕を求めている声……」

 頬に連続でキスをくれた唇が、耳元に来て、低く囁く。

「……僕だけのものだよ」

 くすぐるように、頬から、頤と輪郭を触れるか触れないかのぎりぎりでなぞられて、指を咥えさせられる。
 吸い付けば、シリルの指先の味。

「んっ、ふ、ん……っ」
「おいしそうに食べてるね」
「……っ!」

 指摘されて、顔に熱が上る。

「指、好きになっちゃった?」
「……んッ」

 口の中も好きだから、してほしくてシリルの指を舌で擦った。

「かわいいおねだりだ……いいよ。たっぷりしよう、ここもこっちも」
「──ッ」

 シリルが、舌裏を撫でながら、下半身の繋がりを深くする。
 奧へ、彼の先端が押しつけられ、甘く痺れる。

「んん~!」
「シャワーのときはイかせてあげなかったから。ごめんね、意地悪して。もうしないからね」

 優しさを取り戻したシリルは、ただ私を気持ち良くするから、限界までが早い。
 ほら、また。

「──んぅ!!」

 シリルと行為をして得られる、極上の法悦。
 脱力して息を整えている間も、シリルは頭を撫でてくれる。

「いい子だね……もっとあげる」
「ん、ぇ? あ……、あ……っ」

 感じたのが収まる前に、次の波へ連れて行かれる。

 やだ……おかしい。高いところに登って降りられないみたい。

「ぁ、やだぁ、やん……あ……あ」

 朦朧とした意識のなか、頬に風を感じた。
 シリルの腕に支えられ、運ばれている。
 ふんわりしているうちに、浴室から扉を潜って夫婦の寝室のベッドに下ろされていた。
 そこで私を組み敷いたきり、シリルはまた私とひとつに溶け合う。

 重ねた手の、指を絡められた。

「……離したくない」
「ぁ、ん」
「ダリア」

 淫らな水音と軋むベッドの音の合間から響く、シリルの声が身体に染みる。

「ダリア」

 私の名前。べつに好きな名前じゃなかった。
 両親に文句を言ったこともある。
 赤毛で「ダリアなんて赤い花の名前は安直よ」って、愛を疑って。

 でも。

「ダリア……」

 シリル……あなたに呼ばれると、変。
 一音一音が、愛おしく。もっと聞きたいと願うの。


 細められたライラックの瞳に囚われる。
 心のなかに、触れてかき混ぜないで。
 考えることぜんぶ、吸い取られてわからなくなってしまうから。

「呼ばれるの、好き?」
「……」

 甘く囁かれていることしか、もうわからない。

「……いつか、僕も呼んで」

 胸がさわさわと落ち着かない。内容もわからない囁きが甘かったせい?
 シリルの腕が、私の頭を抱き込んで、ぎゅっとした。

 雛を離さない親鳥みたいに、しがみつかれ──ベッドの軋む音が激しくなって、止まらない。


 ˚˙༓࿇༓˙˚


 冷えた空気を鼻先で感じて、素肌にリネン類の触感があるのが、いつもの朝。
 でも今日は一つ違うところがある。
 温かくしっかりしたものが、私の頭の下にある。
 枕がわりのこれは──シリルの腕!?

 うそ。
 今日は彼より早く目覚めたということ?
 さんざん夜を共にしてきたけど、こんなの初めて──
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