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14. 水面に映る甘やかし★
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「シリル様? どうしたの?」
頬が赤い。湯あたりで?
「べつに。自分の心の狭さを知ったから」
「狭くなんか、ないわ」
キスで頬に触れられた。
わざと立てられたリップ音が、浴室に、ことさら響く。
シリルはシャワーを止めて、私を抱き上げた。
「きゃ」
運ばれて、ぬるい湯の張った浴槽に浸けられる。
広い浴槽まである浴室……こんな規模の入浴設備を夫婦の部屋に備えるのだから、改めてパスコヴィラダ家の財力に感心する。
浴槽は大理石でできていて、計算された曲線を描いている。
人が五人はゆうに浸かれる広さ。必要あるのかしら。
湯気の向こうに、ガラス越しのパティオの植栽が見えた。こういう癒しの装飾に凝っているところが、パスコヴィラダ家らしい。
ちゃぷ、と水音がしてシリルが私に寄り添う。
額や、まぶた、目尻にキスをして、触れる手つきもやさしい。
羽を撫でるように繊細な触れ方。
さっきまでの身体の熱を炙るのと大違い。
気持ちいい……。
「ふぁ」
ゆるく、挿入ってきたシリルは、いいところを甘やかす腰遣いをする。
的確な穿ち方に、私を苦しめていた焦燥はすぐ、快楽と共に解き放たれた。
「あぁん! いっ、イっちゃ……ああ……ああ……やぁア!」
連続で、何度も……。
気持ちよさで、喉から甲高い喘ぎが漏れて止められない。
「ダリアの、僕を受け入れてるときの声、もっと聞いていたい」
きゅっと、背後から抱きしめる腕の力が強まった。
「あ……」
「普段の声も好きだよ。でもこの、くたくたで、何もわからなくなって僕を求めている声……」
頬に連続でキスをくれた唇が、耳元に来て、低く囁く。
「……僕だけのものだよ」
くすぐるように、頬から、頤と輪郭を触れるか触れないかのぎりぎりでなぞられて、指を咥えさせられる。
吸い付けば、シリルの指先の味。
「んっ、ふ、ん……っ」
「おいしそうに食べてるね」
「……っ!」
指摘されて、顔に熱が上る。
「指、好きになっちゃった?」
「……んッ」
口の中も好きだから、してほしくてシリルの指を舌で擦った。
「かわいいおねだりだ……いいよ。たっぷりしよう、ここもこっちも」
「──ッ」
シリルが、舌裏を撫でながら、下半身の繋がりを深くする。
奧へ、彼の先端が押しつけられ、甘く痺れる。
「んん~!」
「シャワーのときはイかせてあげなかったから。ごめんね、意地悪して。もうしないからね」
優しさを取り戻したシリルは、ただ私を気持ち良くするから、限界までが早い。
ほら、また。
「──んぅ!!」
シリルと行為をして得られる、極上の法悦。
脱力して息を整えている間も、シリルは頭を撫でてくれる。
「いい子だね……もっとあげる」
「ん、ぇ? あ……、あ……っ」
感じたのが収まる前に、次の波へ連れて行かれる。
やだ……おかしい。高いところに登って降りられないみたい。
「ぁ、やだぁ、やん……あ……あ」
朦朧とした意識のなか、頬に風を感じた。
シリルの腕に支えられ、運ばれている。
ふんわりしているうちに、浴室から扉を潜って夫婦の寝室のベッドに下ろされていた。
そこで私を組み敷いたきり、シリルはまた私とひとつに溶け合う。
重ねた手の、指を絡められた。
「……離したくない」
「ぁ、ん」
「ダリア」
淫らな水音と軋むベッドの音の合間から響く、シリルの声が身体に染みる。
「ダリア」
私の名前。べつに好きな名前じゃなかった。
両親に文句を言ったこともある。
赤毛で「ダリアなんて赤い花の名前は安直よ」って、愛を疑って。
でも。
「ダリア……」
シリル……あなたに呼ばれると、変。
一音一音が、愛おしく。もっと聞きたいと願うの。
細められたライラックの瞳に囚われる。
心のなかに、触れてかき混ぜないで。
考えることぜんぶ、吸い取られてわからなくなってしまうから。
「呼ばれるの、好き?」
「……」
甘く囁かれていることしか、もうわからない。
「……いつか、僕も呼んで」
胸がさわさわと落ち着かない。内容もわからない囁きが甘かったせい?
シリルの腕が、私の頭を抱き込んで、ぎゅっとした。
雛を離さない親鳥みたいに、しがみつかれ──ベッドの軋む音が激しくなって、止まらない。
˚˙༓࿇༓˙˚
冷えた空気を鼻先で感じて、素肌にリネン類の触感があるのが、いつもの朝。
でも今日は一つ違うところがある。
温かくしっかりしたものが、私の頭の下にある。
枕がわりのこれは──シリルの腕!?
うそ。
今日は彼より早く目覚めたということ?
さんざん夜を共にしてきたけど、こんなの初めて──
頬が赤い。湯あたりで?
「べつに。自分の心の狭さを知ったから」
「狭くなんか、ないわ」
キスで頬に触れられた。
わざと立てられたリップ音が、浴室に、ことさら響く。
シリルはシャワーを止めて、私を抱き上げた。
「きゃ」
運ばれて、ぬるい湯の張った浴槽に浸けられる。
広い浴槽まである浴室……こんな規模の入浴設備を夫婦の部屋に備えるのだから、改めてパスコヴィラダ家の財力に感心する。
浴槽は大理石でできていて、計算された曲線を描いている。
人が五人はゆうに浸かれる広さ。必要あるのかしら。
湯気の向こうに、ガラス越しのパティオの植栽が見えた。こういう癒しの装飾に凝っているところが、パスコヴィラダ家らしい。
ちゃぷ、と水音がしてシリルが私に寄り添う。
額や、まぶた、目尻にキスをして、触れる手つきもやさしい。
羽を撫でるように繊細な触れ方。
さっきまでの身体の熱を炙るのと大違い。
気持ちいい……。
「ふぁ」
ゆるく、挿入ってきたシリルは、いいところを甘やかす腰遣いをする。
的確な穿ち方に、私を苦しめていた焦燥はすぐ、快楽と共に解き放たれた。
「あぁん! いっ、イっちゃ……ああ……ああ……やぁア!」
連続で、何度も……。
気持ちよさで、喉から甲高い喘ぎが漏れて止められない。
「ダリアの、僕を受け入れてるときの声、もっと聞いていたい」
きゅっと、背後から抱きしめる腕の力が強まった。
「あ……」
「普段の声も好きだよ。でもこの、くたくたで、何もわからなくなって僕を求めている声……」
頬に連続でキスをくれた唇が、耳元に来て、低く囁く。
「……僕だけのものだよ」
くすぐるように、頬から、頤と輪郭を触れるか触れないかのぎりぎりでなぞられて、指を咥えさせられる。
吸い付けば、シリルの指先の味。
「んっ、ふ、ん……っ」
「おいしそうに食べてるね」
「……っ!」
指摘されて、顔に熱が上る。
「指、好きになっちゃった?」
「……んッ」
口の中も好きだから、してほしくてシリルの指を舌で擦った。
「かわいいおねだりだ……いいよ。たっぷりしよう、ここもこっちも」
「──ッ」
シリルが、舌裏を撫でながら、下半身の繋がりを深くする。
奧へ、彼の先端が押しつけられ、甘く痺れる。
「んん~!」
「シャワーのときはイかせてあげなかったから。ごめんね、意地悪して。もうしないからね」
優しさを取り戻したシリルは、ただ私を気持ち良くするから、限界までが早い。
ほら、また。
「──んぅ!!」
シリルと行為をして得られる、極上の法悦。
脱力して息を整えている間も、シリルは頭を撫でてくれる。
「いい子だね……もっとあげる」
「ん、ぇ? あ……、あ……っ」
感じたのが収まる前に、次の波へ連れて行かれる。
やだ……おかしい。高いところに登って降りられないみたい。
「ぁ、やだぁ、やん……あ……あ」
朦朧とした意識のなか、頬に風を感じた。
シリルの腕に支えられ、運ばれている。
ふんわりしているうちに、浴室から扉を潜って夫婦の寝室のベッドに下ろされていた。
そこで私を組み敷いたきり、シリルはまた私とひとつに溶け合う。
重ねた手の、指を絡められた。
「……離したくない」
「ぁ、ん」
「ダリア」
淫らな水音と軋むベッドの音の合間から響く、シリルの声が身体に染みる。
「ダリア」
私の名前。べつに好きな名前じゃなかった。
両親に文句を言ったこともある。
赤毛で「ダリアなんて赤い花の名前は安直よ」って、愛を疑って。
でも。
「ダリア……」
シリル……あなたに呼ばれると、変。
一音一音が、愛おしく。もっと聞きたいと願うの。
細められたライラックの瞳に囚われる。
心のなかに、触れてかき混ぜないで。
考えることぜんぶ、吸い取られてわからなくなってしまうから。
「呼ばれるの、好き?」
「……」
甘く囁かれていることしか、もうわからない。
「……いつか、僕も呼んで」
胸がさわさわと落ち着かない。内容もわからない囁きが甘かったせい?
シリルの腕が、私の頭を抱き込んで、ぎゅっとした。
雛を離さない親鳥みたいに、しがみつかれ──ベッドの軋む音が激しくなって、止まらない。
˚˙༓࿇༓˙˚
冷えた空気を鼻先で感じて、素肌にリネン類の触感があるのが、いつもの朝。
でも今日は一つ違うところがある。
温かくしっかりしたものが、私の頭の下にある。
枕がわりのこれは──シリルの腕!?
うそ。
今日は彼より早く目覚めたということ?
さんざん夜を共にしてきたけど、こんなの初めて──
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