じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。

ゆうらしあ

文字の大きさ
49 / 67
第4章 お祭り

第49話 花火大会当日

しおりを挟む
 俺がメニューを決めてからはや1週間。料理の試行錯誤をしながらも、あっという間に時間は過ぎ花火大会当日。


「おとーちゃん! あれ!! あれなに!?」
「おー、アレは"わたあめ"だな。甘くてフワフワだぞ」
「ふわふわ!? たべたい!!」
「分かった分かった。お祭りが始まったら買ってやるからなー」


 俺はメマと共に屋台がある通りを見て回っていた。
 本当ならKIROの屋台の準備をしないといけないんだが……。


『みにいきたい! みにいきたい! みにいきたい!!』


 と、メマが駄々をこねた結果、急遽準備は比奈と凪さんに任せて、俺はメマのお守りとして駆り出た訳だ。因みに指導者さんは留守番兼店番だ。この祭り期間でも貴重なお客さまは逃せられない。





「それにしても、こんなもんだったか?」


 見て回っている途中、俺は思う。
 屋台は数える程しかなく、人もまだら。まだ花火大会が始まっていないというのもあるだろうが、人が少ない。久々に来たからか、子供の時の記憶が衝撃的だったからか、今がそうでも無い様に見えているのかもしれないが……。


「……此処も廃れたって事かもしれないなぁ」


 悲しい事だが、時代が時代だ。若者は刺激や夢を求めて都会に行く。地元に残った知り合いなんて数人だ。


「おとーちゃん! あれすごい!!」
「ん?」


 そんな事を思いながら黄昏ていると、メマに手を引かれ、ある屋台の前まで走る。


「おー……!」


 他とは一線を画す豪華な見た目に大きな看板。田舎の屋台の中では異彩を放っていると言ってもいいだろう。


「『ダンジョン屋台』?」
「すごーい!!」
「気になるかい、お嬢ちゃん」


 メマが目をキラキラさせて見ていると、30代ぐらいの気の良さそうなオジちゃんが笑顔で近づいてくる。


「これはね、最近出来た"異世界の扉"にあやかって作っててね? 異世界をモチーフとした出し物を提供するんだ」
「ふーん? すごいね!!」


 メマは言ってる事があまり分かってないみたいだ。


「具体的にはどんなのをやるんですか?」


 敵情視察だ……この目立つ屋台がウチの屋台とは反対側に位置するのが、どれだけ影響するのか予想を立てていないとーー。


「モンスターを標的とした射的、モンスターを形どった型抜き、モンスターをモチーフにした鉄板焼きをやります。他の祭りでも出して見たんですけど、その時も祭りが始まる前に商品がなくなってしまって此処でも出してみようかと。やはり若者は流行に敏感なんですかね?」


 お、俺の胃事情が……!!


 予想通りと言った所か、キリキリと俺の胃が痛み出す。やっぱ流行って大事だよな……俺達に関しては屋台の見た目なんか普通だし、流行に乗ってる訳じゃない普通の出し物だ。


「いやー、多分そうだと思いますよー、はははは……」
「あ、そ、そうですよね」
「は、はい」
「「……」」


 や、やべー。変な返事しちまった。会話が続かん……。


「すみません、じゃあこの辺で……」
「あ、開店したらぜひ来店して下さいね」


 俺は頭を下げながら、騒ぐメマの手を引いてそこを離れた。


 ま、まぁ? まだ屋台回り切ってないからね? 気まずいからじゃないから……。


 ん?


 おずおずと端っこを歩いていると、俺はある事に気付く。


 ………メマは?


 血の気が一気に引き、俺は周囲を見渡した。


「居ない! 居ない!!」


 油断した。手を握ってるから完全に。メマは初めてのお祭りだ。異常に興奮してしまうのも理解出来る……それなのに俺は何をしてるんだ。




「あ? 何だこのガキ?」
「にゅうぅ……!」



「メマ!?」


 俺は、苦しむ様なメマの声が聞こえた路地の方へ足を向けるのだった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...