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第2章 キメラ狩りへ

第22話 出会いは唐突に

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「ピィィィ…」

 リゼがため息の様に呆れた鳴き声を出す。

「此処で…何をしてたんですか…?」

(しまった…リゼの言いたかった事はこれか…)

 先程からリゼが嘴で突いてくる理由が分かった。

 俺にこれを知らせたかった様だ。背後から人が近づいて来ていると。リゼに久しぶりに会った嬉しさから周囲の警戒が出来ていなかった。

 ゼルは反省しながらもこの状況をどうしようかと、額から一筋の汗を流しながら頭を悩ませるのだった。



 *

「これは……違いますね…」

 女は地面から生えている植物から手を放す。

 アルベイルの王都から離れた森、そこで1人の青色の髪をした女が、草木を調べながら探索をしていた。

「ふぅ。トマスも居たらもう少し早く調べられるのですけど…」

 何かを探しているのか、女は屈みながら前へと進んで行く。
 女性の格好は冒険者の様な格好ではなく、平民よりは小綺麗だが、貴族よりはみすぼらしい。そんな格好をしていた。

「いや! こんな弱音を吐いていたらダメですよね! これではいつ家が

 ピキピキピキピキッッッ

「きゃっ!?」


 活き込んでいるいる途中、突然森の奥から謎の轟音が鳴り響く。女は尻もちを着き、一瞬呆然とすると立ち上がる。

「何だったの今の音…?」

 一言呟くと、はっ! と気づく様に聞こえてきた方から木の裏へ身を隠す。

「こ、こういう時は落ち着いて周りの状況を把握しなければなりません…よね?」

 女は不安そうに眉間に皺を作りながら、森の奥へと進んで行った。



「な、何あれ…」

 女は空を見上げ、心身ともに震わせる。

 壮大な自然の中に、不自然に出来た炎で燃え上がった木を丸ごと凍らせた氷。
 それは、小説の中に迷い込んだような異常な現象で、その場所だけが異様な雰囲気を醸し出していた。

(ここに居たらダメだ…急いで離れないと…)

 そう思って離れようとすると、ある音が聞こえ立ち止まる。


「な、何だ!? 怒っているのか? 良い事だろ?」
「ピィピィ!! ピィッ!!」

 若い少年の様な声と、かわいらしい小鳥の様な声が聞こえた。

(あれ? この声って)

 少し聞き覚えがあったその声に反応し、凍った森を恐る恐る歩いて行く。そして少し進むと所々木が折れ、地面が抉れている所があった。

「何だよ?」

 木の裏に身を隠し、その少年を後ろから見つめる。少年は抱きかかえている物に対して、声を掛けている様だ。

 そしてもう1度発した声から、女は確信した。
 この声の主が、この前路地裏で助けてくれた者の声と酷似している事に。

(似ています…あの時の者に。話しかけてみたい気もしますが…この氷の森の中に1人で居るなんておかしいですよね…)

 警戒心を持つが、相手は少年。しかも恐らくは生き物を抱きかかえている。あの話しようから危険はないだろうと、恐る恐る話しかける。

「…何をしてるんですか?」

 そう言うと、少年はピクリと反応させた後、黙る。

 ビックリさせてしまっただろうかと心配そうに見ていると、少年は何も言わずにジャンプし、氷の木に掴まると軽快に駆け登った。

「ま、待って下さい!」

 そう言うと、男の子は止まる。

「貴方がこれをやったんですか?」
「…」

 答えは返ってくる事なく、木を飛び移りながら少年は去って行った。




「今のはあの者だったんでしょうか…」

 私は物思いにふけながら、氷漬けになった森に手を触れる。

 とんでもない冷たさ。何時間で溶けそうにないくらいの氷の厚さに女は興味深げに氷を見つめる。

「…これは何かに使えますかね?」

 その氷に触れると、一瞬でさっきまで考えていた者についての事がすっぽ抜ける。

「いや…でも…製作費が…」

 ブツブツと考えを口に出している、

 その時、


「おい、これはお前がやったのか?」
「…うんうん…なるほど」

 唐突に背後から声をかけられるが、氷に夢中になり、その事に無意識に返事をしている形になってしまった。

「そうか、なら丁度いい。お前を新しいにしてやるよ」

 女はやっとそこで話しかけられている事に気づいた。

「え?」

 後ろを振り返ると、人の影から禍々しいドロドロとした化け物達が生まれ出た。

 それは一瞬で距離を詰めると、女を拘束した。

「さて、今度は人型…楽しみだ」

 その者はニヤリと口角を上げると、女と、その女を拘束した化け物達を影へと潜り込ませると、森の奥へと消えて行った。



 拘束された女性の名前はサーラ・カースディア。

 公爵令嬢。

 通り名は『不運』のサーラである。
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