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第2章 (1)バロンとヴァロンとバロン
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しおりを挟む「ノックもお声もかけたんですが、返事がなかったもので勝手に失礼致しました」
あからさまに動揺している私から、少し離れて微笑むバロン。
おそらく”突然声をかけたから驚かせてしまった”と、勘違いしているに違いない。
天然というかなんと言うか……。
彼の行動は自然なんだけど、どうやら私の心臓には刺激が強い。
些細な行動さえ、ドキドキさせられてしまう事の連続だ。
早く慣れなきゃ心臓がもたないよ……。
そんな事を思いながら、高鳴る鼓動を落ち着けようと深呼吸した私の鼻に届くのは、紅茶の良い匂い。
よく見ると、バロンの手にはティーセット。
多分私の休憩の時間を見計らって、用意して来てくれたのだろう。
「喉が渇いた」なんて一言も言っていないのに、いつも絶妙なタイミングで用意してくれるさり気ない気遣い。
手際良く淹れて、「どうぞ」と、机の上に紅茶を注いだティーカップを置いてくれた。
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