婚約解消した後でもキス出来ると思っているのですか?

ルイス

文字の大きさ
1 / 5

1話 合意の婚約解消

しおりを挟む

「グローム様……やはり、婚約解消しかないのでしょうか……」

「仕方がないだろう、ルシャ。私達もこの3か月間、付き合って来たが……性格の不一致はどうしようもないからな」


 私は目の前に座っている、グローム・ナイトレイ侯爵と婚約をしていた。3か月に渡る婚約生活をしていたけれど、それも終わりを迎えそうだった。やや、軽薄な態度が目立つ彼の性格と私の性格は合わなかったのだ。グローム様は軽い浮気などは紳士の嗜みとして軽く考える方で、私はそれを許すことが出来なかった。

 話し合いの末、行きついたのが婚約解消というところだったわけだ。正直、悲しみで涙が出て来そうだったけれど、私はぐっと堪えていた……しかし、溢れる雫を抑えることは出来ない。


「ルシャ……私と婚約解消するのが、そんなに嫌なのか?」

「もちろん嫌でございます……私は貴方様に一生を仕えるつもりで、今まで過ごして来たのですから」

「ルシャ……本当に申し訳ない。私のせいだということは良く分かっている」

「謝らないでください……私が情けなくなってしまいます……」

「ああ、そうだったな」


 グローム様は立ち上がり、私を抱きしめた。私は抵抗せずに身体を預けたけれど、こういうことは正直、止めて欲しい。抱きしめるくらいなら、なぜそんな軽薄な態度を取っていたのかと矛盾するからだ。

 婚約解消の直前になって、中途半端な優しさを見せるのは止めて欲しい……。


「あの……離れていただけますか?」

「ん? ああ……申し訳ない」


 グローム様は素直に離れ、そのままソファに腰を掛けた。


「ルシャ、お互いが合意の上での婚約解消だ。慰謝料等は発生しないが問題ないな?」

「はい……問題ございません」


 この点に関しては不満がある。彼の浮気癖が原因だから、婚約解消でも「慰謝料を支払う」くらいは言葉にして欲しかった。実際に支払うかどうかはともかくとして、言葉での誠意が欲しかったところだ。やはり、私とグローム様は根本的なところで性格が合っていない。浮気に対する考え方もそうだけれど、それ以外に細かい部分での不一致というのは多かった。

 やはり婚約解消をして正解だったのだろう。私の3か月間が無駄になってしまったので思わず涙が出てしまったけれど、仕方ないだろう。

「私は荷物を纏めたら失礼させていただきます。正式な婚約解消の手続きはまた、後日ということで……」

「そうだな、ゼラード伯爵とも会う必要があるからな」

「はい……それではこれで、失礼いたします」

「うむ、達者でな」

「ナイトレイ侯爵こそ……お達者で……」


 私は「グローム様」とは呼ばずに苗字で彼のことを呼んだ。私なりのケジメみたいなものだ。これからはナイトレイ家とは断絶して生活をしていかなければならないのだから。私は簡単に頭を下げると、彼に視線を合わせることなく立ち去った。

 本日、グローム・ナイトレイ侯爵との婚約解消が成立したのだ……私は新しい生活を送って行くことになる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

【完結】婚約者と養い親に不要といわれたので、幼馴染の側近と国を出ます

衿乃 光希
恋愛
卒業パーティーの最中、婚約者から突然婚約破棄を告げられたシェリーヌ。 婚約者の心を留めておけないような娘はいらないと、養父からも不要と言われる。 シェリーヌは16年過ごした国を出る。 生まれた時からの側近アランと一緒に・・・。 第18回恋愛小説大賞エントリーしましたので、第2部を執筆中です。 第2部祖国から手紙が届き、養父の体調がすぐれないことを知らされる。迷いながらも一時戻ってきたシェリーヌ。見舞った翌日、養父は天に召された。葬儀後、貴族の死去が相次いでいるという不穏な噂を耳にする。恋愛小説大賞は51位で終了しました。皆さま、投票ありがとうございました。

殿下はご存じないのでしょうか?

7
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 学園の卒業パーティーに、突如婚約破棄を言い渡されてしまった公爵令嬢、イディア・ディエンバラ。 婚約破棄の理由を聞くと、他に愛する女性ができたという。 その女性がどなたか尋ねると、第二殿下はある女性に愛の告白をする。 殿下はご存じないのでしょうか? その方は――。

私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?

あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。 理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。 レイアは妹への処罰を伝える。 「あなたも婚約解消しなさい」

勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い

猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」 「婚約破棄…ですか」 「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」 「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」 「はぁ…」 なんと返したら良いのか。 私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。 そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。 理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。 もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。 それを律儀に信じてしまったというわけだ。 金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。

婚約破棄でかまいません!だから私に自由を下さい!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
第一皇太子のセヴラン殿下の誕生パーティーの真っ最中に、突然ノエリア令嬢に対する嫌がらせの濡れ衣を着せられたシリル。 シリルの話をろくに聞かないまま、婚約者だった第二皇太子ガイラスは婚約破棄を言い渡す。 その横にはたったいまシリルを陥れようとしているノエリア令嬢が並んでいた。 そんな2人の姿が思わず溢れた涙でどんどんぼやけていく……。 ざまぁ展開のハピエンです。

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます

ぱんだ
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。 しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。 ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。 セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。

処理中です...