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2話 幼馴染からの手紙

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「はあ……参ったわね……」

「お嬢様、大丈夫ですか?」

「ええ、なんとかね」


 ナイトレイ侯爵との婚約解消が書類上でも決定してから数日が経過した。最初に彼の部屋で婚約解消を告げられてからは数週間が経過している。私はその間にも2回程、パーティーには参加したけれど根本的な解決には至っていなかった。

 心の中をひしめく寂しさ……貴族の方々と表面的な会話をした程度では、この寂しさを拭い去ることは出来なかったからだ。

「婚約解消というのは、やっぱりダメージになるわね。絶対にするべきものじゃないわ」

「心中お察しいたします、ルシャ様」

「ありがとう、ネーヤ」


 私を慰めてくれているのは、ゼラード家に勤めているメイドの一人のネーヤだ。名前が近いからというわけではないけれど、私にとっては姉さんのような存在だった。16歳の私よりも3歳上で19歳なことも頼れる要因と言えるかしら。

「ネーヤは付き合っている人とかは居ないの?」

「私ですか? 特に居ませんね。私も伯爵家出身ではありますが、3女だったこともあり、大して重要視されていませんから」

「そういえばそうだっけ……」

「ええ、そうですね」


 ネーヤはホプライズ伯爵家出身の女性だ。ただ、3女ということで重要視されずに、ゼラード伯爵家のメイドとして働くことになった。この国では貴族の令嬢は次女くらいまでが重要になる。それ以下の令嬢は、最終的には他の貴族の使用人になるケースが多い。

「でもさ、本来だったら貴方は伯爵令嬢になるわけじゃない? こうして私が普通に話すのはおかしいわよね?」

「そうでしょうか? ルシャ様は長女でゼラード伯爵家の次代を担う存在であります。私とはやはり違いますよ」

「う~~ん」


 その辺りの違いは分からなかった。同じ伯爵家という立場なら、もっと普通に接してくれても良いのに。そこは使用人という壁があるのかな。あんまり普通に接してしまうと、他の使用人に示しがつかないとかはありそうだけれど。

「それに……やはりルシャ様は私とは違うと思います」

「いや、さっきも言ったけれど、同じ伯爵家だし……」

「これをどうぞ」

「え……? 手紙……?」

「私とは決定的に違うという証になります。それは今朝、届いた手紙になりますが」

「へえ……そうなんだ」


 私宛ての手紙か……差出人は、と。私は手紙の裏を見て動きが止まった。

「嘘……フォール・スタンレー公爵令息……!?」

「ふふふ……やはりルシャ様はすごいですね」

 ネーヤは笑いながら私を見ているけれど、思考が追い付いていなかった。フォール様からの手紙……? 確かにあの人とは幼馴染の関係にはなるけれど、もう何年も会っていない。このタイミングで手紙が届くなんて……運命とでも言えば良いのかしら?
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