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3話 フォール・スタンレー公爵令息 その1
しおりを挟む「うう……とても緊張してしまうわ……!」
「そんなに緊張することなのですか? 幼馴染なのでしょう?」
「それは確かにそうだけれど……」
フォール様からの手紙には、訪れる期日までがしっかりと記載されていた。つまり、その時刻には私は屋敷の玄関先に居ないといけないわけで……。お父様やお母様は笑いながら、私の様子を窺っている。もう……絶対に面白がっているわ!
「お父様達は面白がっているのでしょうね……私の気持ちも知らないまま」
「いえ、きっとルシャ様のお気持ちは分かっていると思いますよ。その上で楽しんでいらっしゃるのだと思います」
「余計に性質が悪いわよ! もう!」
「うふふ……ルシャ様は相当、フォール様にお会いすることが怖いようですね」
「こ、怖いってわけじゃないけど……」
フォール・スタンレー公爵令息は私と同じ16歳だ。5年前までは幼馴染として仲良く遊んでいた間柄ではあるけれど……あれから5年も経っている。お互いに成長もしているだろう、だからこそお会いするのに緊張感が生まれてしまうのだ。
「ルシャ様からすれば、初恋のお相手だったのですか?」
「う……まあ、初恋だとは思うけれど……」
ネーヤには嘘は吐けないわね。どうせ私の心中は察しているだろうし……私は本音を吐露していた。
「なるほど……ふふふふ」
「ちょっと、ネーヤ? 私のことを馬鹿にしてない?」
「いえ、まさかそのようなことは……うふふふふふふ」
怪しい……ネーヤは私のことを遊び相手にしているに違いない。それで、優越感に浸っているんだわ……。今に見ていなさいよ……必ず復讐してやるんだから! と、私は出来もしないことに闘志を燃やしていた。まあ、ネーヤの考えは悪気があるものではないから、私としても腹立たしくはないのだけれど。
でも悔しい……いつかギャフンと言わせてやりたいわ。
「ルシャ様! フォール・スタンレー様がお越しになられました! このままお通ししても宜しいでしょうか?」
「ええ、お通しして頂戴」
「畏まりました!」
そんなことを考えていると、フォール様が来られたようだ。私の心の中は一気に緊張感に包まれる。5年振りの再会……失礼のないようにしなければ。ていうか、お父様達が玄関先に居ないのはどういうわけ? 私に全てを押し付けようとしているのかしら? まったく……。
「ルシャ! 久しぶりだな! 元気にしていたか!?」
「あ、はい。お久しぶりです……フォール様」
屋敷に入って来たフォール様は、驚くほどに軽い挨拶をしてきた。テンションも無駄に高いし……。その様子を見て私は安心した。彼は5年前から良い意味で変わっていないのだと……。
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