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4話 フォール・スタンレー公爵令息 その2
しおりを挟む「ふぉ、フォール・スタンレー公爵令息……ご無沙汰しております」
「ありがとう、ルシャ。久しぶりだな……5年振りか」
「そうですね、5年になりますね」
フォール様とは実に5年振りの再会だ。5年間会えなかった理由は、彼が遠くに行っていたからなのだけれど。こうして会えて嬉しいと同時に、あの頃のことが思い出されてしまった。
「君とはよく走り回っていたな……なんだか懐かしいよ」
「当時は11歳でしたからね……本当に懐かしい思い出です」
「楽しかったな、あの頃は」
「はい、私も楽しかったです。ところでフォール様、玄関先では何ですので応接室でお話しませんか?」
「ああ、それが良いかな」
お父様達はここに来ても出て来る様子がなかった。本当にフォール様の相手を私に任せようとしているのだ。玄関先から応接室に向かう途中で軽く会釈はしたみたいだけれど。
まったく……意図が良く分からないわ。
「旦那様と奥様の意図……ふふふふ」
「ネーヤ?」
「いえ、なんでもありませんわ」
ネーヤはなんだか悟っているようだけれど、私に教えてはくれなかった。まあ、フォール様も近くに居るし、勝手に話すわけにはいかないのだろうけど。
------------------
「それでフォール様……本日のご用件は一体、何なのでしょうか?」
「用件?」
「はい、用件でございます」
手紙にも用件については記載されていなかった。応接室に案内したけれど、それを聞かないと話が進まない。
「ただ遊びに来ただけだよ。俺も比較的自由に動けるようになったからさ。ルシャと会える機会も多くなりそうだ」
「そうだったんですか?」
「ああ。だからもっとフレンドリーに話してくれて構わないぞ? 前のようにな」
「ま、前のように……」
マズイ……あの時のことはあんまり思い出したくないかもしれない。私は彼の頬をビンタしたこともあったし。
「あの時のことはその……お互い大きくなりましたし……」
「と言ってもまだ16歳だぞ? 俺も君の前では素の自分でいたいと思っているけどな」
確かにフォール様は素だ……ビックリするくらいに。ここで私だけ頑なに拒んでも逆に失礼になってしまうかもしれないわね。
「ええと……フォール。本当に久しぶりね。5年振りに会えて、とても嬉しいわ」
「ルシャ……やはりその話し方の方が良いな。やっと君に会えた気がするよ」
5年振りの再会か……フォールとは積もる話が出来そうだった。それにしても単に遊びに来ただけなんて、なんてタイミングかしら。お父様達もそれが分かっていたから私に任せたのかもしれないわね。
私はもう婚約解消をしているし、気兼ねなく彼との会話を楽しむことが出来るわ。うふふ。
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