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3話 王子殿下 その2

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 ユアン・レイブン王子殿下と言えば、王位継承権第二位に相当するお方……そんな人が、私に一体どんな用件が……? 私は婚約破棄をされた直後である為に、一定の警戒心を持ちながら、応接室の扉をノックした。


「ユアン・レイブン王子殿下……失礼いたします。バームデン・アモネートの長女、シャルナ・アモネートでございます。入室のご許可をいただけませんでしょうか?」


「どうぞ」


 比較的高い声が聞こえてきた。ユアン様とはもちろん、交流があるのですぐに彼の声だと分かる。私はゆっくりと扉を開けて中へと入った。

「失礼いたします、王子殿下」

「ああ、いきなりの訪問に困惑していることだろう。まずは謝罪させて欲しい」

「いえ、とんでもないことでございます……」


 私が応接室に入るなり、ソファに座っていたユアン様は立ち上がった。そして、謝罪の意を込めた挨拶をしている。私は焦ってしまい、すぐにお顔を上げていただくように促した。


 ユアン様は頭を上げると、私に優しく微笑んでくれていた。思わず見入ってしまう程の二枚目な顔立ち……男性を顔で選んだことは1度もない私だけれど、それでも見惚れるくらいに二枚目だと感じていた。


「あの……ご用件は一体、どのようなことでしょうか?」

「そうだな、まずはそちらについて話そうか。なかなか、信じられない出来事が起きたみたいだな。シャルナ嬢の気持ちは私も察するよ」

「王子殿下……」

「ユアンで構わないぞ、私もシャルナと呼ばせてもらうからな」

「か、畏まりました。ユアン様」

 面と向かって「シャルナ」と呼ばれるのは照れ臭い気もしてしまう。いえ、それよりも……婚約破棄から1週間が経過しているので、ユアン様の元にも情報が届いているのね。


「一応、用件としては君の婚約破棄に関する件だ。詳しい内容は座って話さないか?」

「あ、は、はい……畏まりました……」


 情報が向かったことは事実としてあり得ると思うけど、ユアン様程のお方がわざわざ、私に会いに来られるとは考えにくかった。彼の姿や言葉を聞いて、先ほどよりも警戒心は薄くなっているけれど。

 私はユアン様の指示通りソファに座り、ちょうど彼とは対面の位置になった。応接室内には、ユアン様の護衛とメイドのドルチェの姿があった。お父様やお母様が入ってくる気配はない。もしかしたら、ユアン様に入室を制限されているのかもしれない。私としては、そちらの方が助かるけれど……。

「さて、本題について話すとしようか。内容的にはリシド・ブレイク公爵についてのことだ」

「リシド様ですか?」

「ああ、そうだよ」

 ユアン様はゆっくりとした口調で話し始めた。私は彼の言葉を聞き漏らすまいと必死に耳を傾ける。まさか、婚約破棄の1週間後に第二王子殿下と応接室でお話することになるなんて、夢にも思わなかったわ……。
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