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3話 大森林にて その1
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「ブルルルルル……ヒヒィン……!」
「は~い、どうどう……」
私は西の大森林、通称「バーナーズフォレスト」の入り口付近で、馬から降り、紐で近くの木に待機させた。時間は夕刻……今日は晴天に恵まれてほしかったけれど、今にも雨が降りそうだわ。
バーナーズフォレストはユトレヒト王国の西の国境からしばらく行った所にあるけれど、地理的には中立地帯となっているはずだった。つまりは周辺国家の干渉を受け辛い地域というわけ。変に王族が干渉しようものなら、他国を敵に回すことになるかもしれないし。
「そういう意味では、私が住むには丁度いいのよね。私は国外追放された身なんだし」
身分的には戦争孤児、奴隷等と変わらない立場……いえ、国外から追放されているからもっと酷いかもね。まあ、私一人が暮らしたところで、誰も文句は言わないでしょう。そもそも、広すぎて気付かれないだろうけど。
「ハルルルル……」
「お、狼……!?」
「ブルルル……!」
気付いた時には、目の前に白い狼が近づいて来ていた。この森に住む種族なのかしら……? 私は瞬時に守護結界を展開させる。これで王国も守っていたのだ、狼くらいの攻撃ではビクともしないはず。
「ハルルルル……!」
私が守護結界を展開したことにより、白い狼は警戒心を強くした。よ~し、私の方が強いっていうところを見せないとね。動物の世界は弱肉強食のはずだし……。私は上を見上げ、今にも雨が降りそうだった空を快晴にしてみせた。既に日が落ちかけていた為、太陽の光はあまり見えなかったけれど、明らかに異様な変化に白い狼は狼狽えているようだ。
「ごめんなさいね。あなたのナワバリを荒らす気はないのよ。でも、私もこの森で生活とかして行かなくちゃいけなくて……許してもらえる?」
「ハルルルルル……」
私は聖女としての能力の一部を見せた後に、優しく問いかけてみた。いくら聖女だからって、獣言語がわかるわけじゃないけれど……でも、なんとなく目の前の狼とは仲良くなれそうな気がしたの。私は守護結界は纏ったまま、狼に手を差しにべてみる。狼はしばらく戸惑った後に……私の手を舐めてくれた。
「私は聖女エミリーよ、よろしくね。ええと……ふぇ、フェンリル」
「ハルルルルル……」
私は城の図鑑で見たことのある伝説の魔物の名前を呼んでみた。まさかこの狼がその魔物ということはないだろうけど、なんとなく似ていたから。フェンリルは私が呼んだ名前を理解したのかは分からないけれど、その場に座り込み、私をじっと見ている。
「もう日が暮れるから、今日はここで焚き火をしようかしら」
聖女として働いていた時は、一応は贅沢な暮らしが可能だった。焚き火なんて10年振りくらいかしら? 私が孤児だった時でも、それほどした記憶はないけれど。私はとりあえず過去の記憶を頼りに、焚き火の準備に取り掛かった。傍らで欠伸をしているフェンリルを見据えながら。
「は~い、どうどう……」
私は西の大森林、通称「バーナーズフォレスト」の入り口付近で、馬から降り、紐で近くの木に待機させた。時間は夕刻……今日は晴天に恵まれてほしかったけれど、今にも雨が降りそうだわ。
バーナーズフォレストはユトレヒト王国の西の国境からしばらく行った所にあるけれど、地理的には中立地帯となっているはずだった。つまりは周辺国家の干渉を受け辛い地域というわけ。変に王族が干渉しようものなら、他国を敵に回すことになるかもしれないし。
「そういう意味では、私が住むには丁度いいのよね。私は国外追放された身なんだし」
身分的には戦争孤児、奴隷等と変わらない立場……いえ、国外から追放されているからもっと酷いかもね。まあ、私一人が暮らしたところで、誰も文句は言わないでしょう。そもそも、広すぎて気付かれないだろうけど。
「ハルルルル……」
「お、狼……!?」
「ブルルル……!」
気付いた時には、目の前に白い狼が近づいて来ていた。この森に住む種族なのかしら……? 私は瞬時に守護結界を展開させる。これで王国も守っていたのだ、狼くらいの攻撃ではビクともしないはず。
「ハルルルル……!」
私が守護結界を展開したことにより、白い狼は警戒心を強くした。よ~し、私の方が強いっていうところを見せないとね。動物の世界は弱肉強食のはずだし……。私は上を見上げ、今にも雨が降りそうだった空を快晴にしてみせた。既に日が落ちかけていた為、太陽の光はあまり見えなかったけれど、明らかに異様な変化に白い狼は狼狽えているようだ。
「ごめんなさいね。あなたのナワバリを荒らす気はないのよ。でも、私もこの森で生活とかして行かなくちゃいけなくて……許してもらえる?」
「ハルルルルル……」
私は聖女としての能力の一部を見せた後に、優しく問いかけてみた。いくら聖女だからって、獣言語がわかるわけじゃないけれど……でも、なんとなく目の前の狼とは仲良くなれそうな気がしたの。私は守護結界は纏ったまま、狼に手を差しにべてみる。狼はしばらく戸惑った後に……私の手を舐めてくれた。
「私は聖女エミリーよ、よろしくね。ええと……ふぇ、フェンリル」
「ハルルルルル……」
私は城の図鑑で見たことのある伝説の魔物の名前を呼んでみた。まさかこの狼がその魔物ということはないだろうけど、なんとなく似ていたから。フェンリルは私が呼んだ名前を理解したのかは分からないけれど、その場に座り込み、私をじっと見ている。
「もう日が暮れるから、今日はここで焚き火をしようかしら」
聖女として働いていた時は、一応は贅沢な暮らしが可能だった。焚き火なんて10年振りくらいかしら? 私が孤児だった時でも、それほどした記憶はないけれど。私はとりあえず過去の記憶を頼りに、焚き火の準備に取り掛かった。傍らで欠伸をしているフェンリルを見据えながら。
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