聖女として王国を守ってましたが追放されたので、自由を満喫することにしました

ルイス

文字の大きさ
3 / 16

3話 大森林にて その1

しおりを挟む
「ブルルルルル……ヒヒィン……!」

「は~い、どうどう……」


 私は西の大森林、通称「バーナーズフォレスト」の入り口付近で、馬から降り、紐で近くの木に待機させた。時間は夕刻……今日は晴天に恵まれてほしかったけれど、今にも雨が降りそうだわ。

 バーナーズフォレストはユトレヒト王国の西の国境からしばらく行った所にあるけれど、地理的には中立地帯となっているはずだった。つまりは周辺国家の干渉を受け辛い地域というわけ。変に王族が干渉しようものなら、他国を敵に回すことになるかもしれないし。


「そういう意味では、私が住むには丁度いいのよね。私は国外追放された身なんだし」


 身分的には戦争孤児、奴隷等と変わらない立場……いえ、国外から追放されているからもっと酷いかもね。まあ、私一人が暮らしたところで、誰も文句は言わないでしょう。そもそも、広すぎて気付かれないだろうけど。


「ハルルルル……」

「お、狼……!?」

「ブルルル……!」


 気付いた時には、目の前に白い狼が近づいて来ていた。この森に住む種族なのかしら……? 私は瞬時に守護結界を展開させる。これで王国も守っていたのだ、狼くらいの攻撃ではビクともしないはず。


「ハルルルル……!」


 私が守護結界を展開したことにより、白い狼は警戒心を強くした。よ~し、私の方が強いっていうところを見せないとね。動物の世界は弱肉強食のはずだし……。私は上を見上げ、今にも雨が降りそうだった空を快晴にしてみせた。既に日が落ちかけていた為、太陽の光はあまり見えなかったけれど、明らかに異様な変化に白い狼は狼狽えているようだ。


「ごめんなさいね。あなたのナワバリを荒らす気はないのよ。でも、私もこの森で生活とかして行かなくちゃいけなくて……許してもらえる?」

「ハルルルルル……」


 私は聖女としての能力の一部を見せた後に、優しく問いかけてみた。いくら聖女だからって、獣言語がわかるわけじゃないけれど……でも、なんとなく目の前の狼とは仲良くなれそうな気がしたの。私は守護結界は纏ったまま、狼に手を差しにべてみる。狼はしばらく戸惑った後に……私の手を舐めてくれた。


「私は聖女エミリーよ、よろしくね。ええと……ふぇ、フェンリル」

「ハルルルルル……」


 私は城の図鑑で見たことのある伝説の魔物の名前を呼んでみた。まさかこの狼がその魔物ということはないだろうけど、なんとなく似ていたから。フェンリルは私が呼んだ名前を理解したのかは分からないけれど、その場に座り込み、私をじっと見ている。


「もう日が暮れるから、今日はここで焚き火をしようかしら」


 聖女として働いていた時は、一応は贅沢な暮らしが可能だった。焚き火なんて10年振りくらいかしら? 私が孤児だった時でも、それほどした記憶はないけれど。私はとりあえず過去の記憶を頼りに、焚き火の準備に取り掛かった。傍らで欠伸をしているフェンリルを見据えながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】

小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」  私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。  退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?  案の定、シャノーラはよく理解していなかった。  聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~

アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」  突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!  魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。 「これから大災厄が来るのにね~」 「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」  妖精の声が聞こえる私は、知っています。  この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。  もう国のことなんて知りません。  追放したのはそっちです!  故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね! ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。 これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。 失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。 無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。 そんなある日のこと。 ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。 『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。 そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

聖女を追い出しても平気だと思っていた国の末路

藤原遊
ファンタジー
聖女が国を去った日、神官長は分かっていた。 この国は、彼女を軽く扱いすぎたのだと。 「聖女がいなくても平気だ」 そう言い切った王子と人々は、 彼女が“何もしていない”まま国が崩れていく現実を、 やがて思い知ることになる。 ――これは、聖女を追い出した国の末路を、 静かに見届けた者の記録。

処理中です...