119 / 681
4章 魔法少女と人神の祠
115話 魔法少女は犬を探す
しおりを挟む「わんこー、出てこーい。鮫でもシャチでも鳥でもいいよ。」
声を張り上げて魔物達に呼びかける。
聞こえてないとは思うけどね、言わないよりかは言った方が雰囲気出るし、単に歩いても飽きるし。
結局のところは適当っていうね。
「他にも何かヒントとかあったりしない?魔物のいる場所も何も知らないから、探しようが無いんだけど。」
簡単と言った私がバカだった。地味に難しいじゃん、これ。
「私の脳力を見せてあげよう。」
まずこういうのは、1回よく謎をよく確認することが大切なことだね、という私の考えの下、一旦祠に戻ることにした。
「ということで、戻ってきたわけだけど……」
何も分からないね。
「こういう時はやっぱり、異世界らしく魔力でも使えば何とかなるのかな?」
目を凝らしてみると、犬のマークの上に手形のようなものがある。
……よく見落としてたね、私も。ここに魔力を流せって言ってるようなものだけど、どのくらい魔力が必要なんだろう。
「やってみないことには分からないよね。」
『勇気と無鉄砲は違う』という言葉があるけど、今回の場合は完全に後者だ。ということで、私は手形に手を重ね、魔力を流そうとする。
「うわっ!?なに?魔力を吸い取った?変な機能ついてるね……」
魔力を流す前に、強引に魔力を吸い取られた。
あれ?そんなに吸われてない……?
突然なことで戸惑っていると、突然うっすらと文字が浮かび上がって来る。
「えー、なになに。『空が橙に染まりし時、理を排除せし獣が現れん。太陽に背き月に従う獣は、道を開きし鍵を持つ。鍵は個々に同調し、重なり合う時道は開く。』……何この暗号。」
変な文章が浮き上がり、私はきょとんとする。
獣……まさか犬のこと?犬を獣って言っていいの?「理を排除せし」っていうのは、神獣(?)のことかな?
最後の鍵ってのは、多分宝玉だね。
「太陽、月とかあるし、というか相手は神なわけだからこの場合の太陽と月は本物を基準にした方がよさそうだね。」
その点を踏まえ、頑張って犬の居場所を突き止めようと考える。
太陽に背く、月に従うって書いてあるし、これは月の方向ってことなのかな?
橙に染まるってことは夕方。太陽は西の端、月は東の端にある。
この世界ではどうか分からないけど、日本を基準に考えるとそうなるよね?
「なら東に……って、東ってどっちだ?」
そんな新たな問題が現れてしまった。
大体の居場所は掴めたよ?東の方にいると思う。でもさ、方角なんて分からないよね。
この世界に来てさ、私、方角なんて1回も気にしてない。
「分かるわけないんだよね、そんなこと言われても。」
そんなことで、また振り出しに戻る。
国民的アニメの猫型ロボットの道具に、道を教えてくれるステッキみたいなのあったよね。70%くらいの確率で。
そんな感じで、このステッキにも無いのかな、そんな機能。
ステッキの能力にいいの無いかな?あるとしたら特殊属性と特殊性質のどれかだと思うけど。
そんな一縷の望みにかけて画面を開く。
[特殊属性]氷結 万能属性 特異体質 魔道士
[特殊性質]黒鱗 水杖 頑丈 魔法動力
「この中で使えそうなもの……特異体質か魔法動力ぐらいかな?」
特異体質で方向感覚を完璧にしたり、魔法動力で魔法の細かなエネルギーを読み取って…とか。
「でもなー、特異体質は取っておきたいし。」
今の確実を取るか、数手先の安全を取るかで頭を悩ませる。
でも、前者の考えは妥当だ。
特異体質とは、ノーリスクハイリターンで一定時間自分の望む体質になることが出来る。
その分クールタイムは長いし、効果時間は短いけど、強いものは強い。
前回は回避体質を使った。あらゆる攻撃に対して回避がしやすくなる。(回避できるわけでは無い)
私自身がレベルが上がって強くなってるおかげで、効果時間も引き伸ばされて30分。
これを今使ってしまうわけにはいかない。
「なら、魔法動力しかないね。」
ため息をひとつ吐き、魔法動力を起動する。
この能力、原始レベルで細かく見せてくるから、脳の処理が追いつかないんだよね。
思考加速とか、そういう系のスキルがあってくれると助かるのになー、ちらっ。
神様の方向を覗き見るも、何の反応も無い。
「えっと。魔力の細かさ、動き、性質を見ると……分からない。太陽が今、南東にあると仮定すると魔力の流れを意識してみて……ビンゴ。」
東の方向に、魔力感知ですら反応できないような細かい揺れを発見した。
「この揺れは……魔物の咆哮による揺れかな?獣らしい揺れだね。」
敵はもうすぐそこにいる。頬を叩いて気を引き締めた。
「さぁ神様、もうすぐ会えるね。」
1歩足を動かす度に緊張する……なんて事は無く、段々と「楽しみ」という感情が湧いて来る。
神様のことより、まずは目先の犬を何とかしないと。犬を倒しても、まだ他の3体を倒さないといけないわけだし。
「犬を倒すって、なんか動物愛護団体に捕まりそうなワードだね。」
この世界にはそんなもの無いけど、と、一笑する。
そんなこと気にしたって意味無いし、さっさと犬を吹っ飛ばしましょうかね。
4つも宝玉があるんだから、時間がかかる。
そろそろ行動しないと、「口だけの人間」になってしまうのでまた歩き出した。
「……あからさま過ぎて、逆に疑うんだけど。」
歩き出してから数分。私は東にまっすぐに歩いていると、(穴の中)洞窟のようなものを発見した。
魔法動力!……うん、ちゃんと反応あり。
「よーし、準備万端だし行ってみよー。」
ステッキを天に向けて振り上げ、行進した。
奥からウ゛ゥゥゥゥッ!と唸り声が聞こえ始め、「これはもうね、あれだよね」とボソッと呟く。
唸り声もなかなかに大きくなってきて、暗くてよく見えないけど影が見え始める。
「神様への第1歩、踏み込んじゃおう。」
———————————————————————
悲報 わんこ、倒される。でも安心してください、魔物ですから可愛くありませんよ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
101
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる