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14章 魔法少女と農業の街

461話 魔法少女と一旦の解決

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 フィリオに指定された時間。

 今はその30分前だ。

「ソラさん!昨日の昼ですよ、前日の昼のことを忘れて眠りこけるって何してるんですか!」
「病み上がりのクルミル様を走らせるなんて……!どうかしていますよ!」
復活したトートルーナさんの叫びを聞きながら、街の注目を浴びつつ門へと向かう私達。遅刻も遅刻、大遅刻である。

「私も寝坊したくてしたわけじゃっ、ないって!」
「それは知っていますけど!」
文脈から分かる通り寝坊した私達(正確には私1人だけども)は、ぜぇはぁ息を切らせている。私以外。

 なんで戦犯の私だけ楽な思いしてるかって?そりゃ鍛え方が違うんだから。

『神の力やろ』
『戻ってる……』
Aが頭を抑え、うぅと唸った。もう諦めればいいのにと思う。

「もうそろそろ着くから頑張って!私も寝起きだから!」
「私もって……ソラさんだけじゃないですかあああああっ!」
ゴシックなメイド服が地面に擦れるのも気にせず、絶叫をあげるトートルーナさんだった。

 てへっ。


「何分遅れだと思っている?」
「34分?」
「お前の体内時計は不正確だな。36分だ。」
「誤差だよ誤差。」
「34分の36分は誤差かもしれないが0分から36は誤差なんてレベルじゃない。」
呆れたようにこめかみをぐりぐりとする。頭が痛いなら鎮痛剤飲む?そんなものないけど。

「そこの2人は真面目そうだ。主従揃ってきっちりしているだろう。目に浮かぶ。遅刻の原因は?」
フィリオは周りにいる、困惑気味な騎士団の皆さんや馬車を外に出し、指揮をとりながらそう問いただしてくる。

 さすがフィリオ、有能領主。
 だからもう勘弁してください。

「いやぁ……うちのツララがちょっと…………」
「ツララさんは元気にお外へ狩りにいきましたけど。」
「なにしてんのそれぇ!?」
「領主に嘘とは中々に肝が据わっているなあ。」
青筋が浮かぶと検索すれば例としてこの映像を乗っけてもいい感じの顔で言う。何故か笑ってるものだから気味が悪い。

「……もういい。次回からは気をつけろ。今回は待たせてもいい……いや、よくないが、まだ融通の効く現場だったが、戦争ではそうもいかない。」
小声で、しかしぴしゃりと言い放つ。『戦争』という繊細なワードだ。周りに配慮してのことだろう。

『戦争となれば私が全てを地獄の業火に包み込み、なにもかもを灰燼へと変貌させてやろう!』
『そこは厨二病モードなんかい!』
『こっちん方がよかか?』
『よくねぇから戻せや』
段々私Aの口が悪くなってきている。これは私がどうにかしてやらないと、反抗期を迎えてしまう。

 そんなトゲトゲしないで。触れる前に突き飛ばしたんじゃ、友達できないよ?

『私にもいないでしょ』
とんでもないことを言いやがった。ぼっちに対しての禁句ワードを、言いやがった。

 湯姫がいるし!

『それは私にも当てはまるよ』

「おい、聞いてるか?」
「え、あうん。聞いてる聞いてる。」
私といるとこの領主、息を吸うようにため息をしてる。もはやため息が呼吸の一部だ。

「早く馬車に乗れ。今日中に村からドリスへ誘導を完了させたい。」
そう言って視線を運ぶのは、見たこともない馬鹿でかい馬車。1クラスぶんくらいありそう。それがたくさん。

「だからこんなに馬車があるんだね。」
「先行隊はもう進んでいるだろう。どの馬車にも最低1人はCランク相当の騎士を配置している。安心していい。」
「Cランク……」
「言っておくが、Cランクもあれば十分冒険者業で生計は立てられるぞ。 ギリギリだが。」
そんなことはどうでもいいと言わんばかりに、門を通って馬車に誘導される。王都の門を見慣れすぎね、ここの門がショボい。

 王都は豪華すぎたんだよ。門にあそこまで金使う必要あるんか?ってくらいの豪華さ。荘厳さ。相手を威圧するって意味なのかな。
 財力を見せつける的な。

「ここ最近はどこかの誰かさんのおかげで活性化した魔物はいなくなった。馬車旅の危険度がグッと下がったな。」
「えっ、それってソラさんが……」
「そうですよトートルーナ。」
「色々あって王都で一時期犯人扱いされたけど無事解決したよ。」
ピースピースと、乗り込んだ馬車内で笑顔を作る。「え?犯人?え?」と首をキョロキョロさせるトートルーナを置いて馬車は出発する。心だけ置いていかれように、どこか遠くを見た。

 私は私でこのピースをどうしようか。

 静止画のように止まってしまったピース。解くタイミングがなかなか掴めない。どうしよう。

「いつまでそうしてるんですか?」
正面にいるクルミルさんにそう言われ、「あ、うん」と返事をして膝の上に置いた。

 左フィリオ正面クルミルさんその横トートルーナさんあとはあまり。御者さんが猛スピードで駆け抜けて、壮絶な揺れを感じる。クッション欲しい。

 核創々により、魔力が続く限りなんでも作れるようになった私。米を作ろうと試みたけど、あいつ稲穂やら籾殻やら糠やら、全部作らなきゃいけないから断念した。全部作りが違うから、脳がパンクする。

 魔力的にはいけるんだけどね。
 おっと話が逸れた。

 ガッタガタと揺れを4人で感じ、静かな時間を過ごす。要するに気まずい。

 手元で綿やら布やらを生成し、気を紛らわせた。同じものを何個も作るのは簡単だ。だから魔法も使える。

「……何してるんだ?」
「いや、暇つぶしにクッションも生成しようかと。」
「生成って言い方が気になるな。それも魔法か?」
「そうだね。物質には絶対核があるから、それを作り出して魔力で後を補うことで物を作れる。あんまり複雑だと脳が焼き切れると思うけど。」
フィリオの顔が引き攣られた。

「目の前で人が死ぬ姿なんて見たくないぞ。」
「だいじょぶだいじょぶ。そんな複雑なことしないから。」
作ったクッションを敷く。まだマシになった。周りからのなんで自分だけと視線が突き刺さった。死んでもいいのかと聞くと、「死なないんだろ」とツッコまれてしまった。

「魔法、意味分からないな。俺には一生縁がないだろうな。」
「私も意味分からない。」
「本人が言っちゃうんですね……」
「ソラさんですから。」
「…………気まずいなぁ。」
背もたれにどんと背を埋め、村に着くまでの時間をただ待っていた。


 もうすぐ着くようだ。
 万能感知の反応で前の方が動かなくなったことから、そう予想できた。
 しかし、流石にひとつの村で全てのドリスの住人が収まるわけないわけであり……

「え、着かないの?」
「あそこだけの村でどうやって迎え入れるんだ。他の村に行くに決まっている。」
「少なくとも8はもしもの時のための相互関係は作っていますから。」
「えぇ……」
気分が上げて落とされた。悪魔的だ。ラプラスの悪魔だ。

『それは数学的なやつでしょ』

 語感がいいんだからどうでもいいんだよ!私はそう言う語感のいいフレーズは大好物だっ!

『こりゃ重症だ』

 なに?なになになにが?

『…………裁判長、こいつ死刑でいい?』
『もちろんだ!』
何故か殺されて(?)しまった私は、我慢できない子供のようにうずうずしながら到着を待つのだった。

「鬱陶しい。」
「私は子供だから仕方ない。」
「冒険者に就職している時点でお前は立派な大人だよかったな。」
「この世界の大人基準謎。」
「どこの国もこんなものだ。」
私のうっかり発言をどう解釈したのか、そう答えた。しかしまぁ、私の泣き言にしっかりツッコんでくれるので暇は少なかったように思える。

 そういう意味ではフィリオと同馬車でよかったかも。

 そんな頃、ようやく馬車の減速を感じた。

「着いたみたいだな。」
重い腰を上げたフィリオは窓を覗き込み、先頭の馬車にドリスの人々が乗っているのを確認した。

「この馬車も開ける。誘導を手伝え。」
「はいはーい。」
柔らかクッションにセイグッバイ。私は馬車内で立ち上がり、フィリオの後をゆっくりとついていく。

「こうして見ていると、解決したんだと思いますね、クルミル様。」
「一旦解決くらいでしょう、まだ。」
くすくすと笑い声が聞こえた。別に、馬鹿にしているような笑い方ではない。そんなクルミルさんに一言、踵を返して言っておく。

「全部、私が解決するよ。」
反応は待たず、元の道を歩んでいく。これは自己満足だから。 

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 今回は頑張って3000字をキープさせました。前回の失態はなかったということに……
 できないですよねぇ……分かってました……
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