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 「何で何で何で!私はアラン様と結ばれたはずで……」

 そううわ言のように叫ぶスレア。
 そしてその姿に、私は未だスレアが状況を理解できていないことを悟る。
 ……はっきりとお兄様に拒絶されたのにもかかわらず。

 「そういえば、貴女に伝えておかなくてはならないことがあるの。もう貴女を助けようとする人間はいないわよ」

 だから私は手っ取り早くスレアに状況を知らせるため、口を開いた。

 「はぁ!?何言ってんの!」

 私の言葉の意味をスレアは理解するとことなく私を睨みつける。

 「ラスラープは反逆罪で処刑済みよ」

 「………え?」

 ……けれどもその次の私の言葉にスレアからは先程までの勢いは消え去った。
 隠しきれない動揺でスレアは言葉を失う。
 だがスレアを無視して私はさらに言葉を重ねることにした。

 「実はラスラープは今回の件だけでなく、とある伯爵家に冤罪をかけ襲った件でも容疑をかけられていたのよ。そしてラスラープはその容疑をあっさりと認めた。魔道具の拷問て、案外あっさりと根をあげる人間が多いのよね。

 ーーー でもその時ラスラープは冤罪の件の黒幕は自分ではないと私に言ったのよ」

 「ーーー っ!?」

 そう告げた瞬間のスレアの変化は劇的だった。
 その顔は青く染まり、腰が抜けたのかへたり込んだ状態でかたかたと震え始める。
 どうやらようやく状況を理解し始めたらしい。

 「でもその時ラスラープの告げた内容は信じられないもので、だから私はお兄様に頼んで本人に確かめて貰ったの」

 「っ!痛い!」

 そしてその言葉共に私はスレアの髪を掴み、強引にその俯いた顔を上に向かせる。

 「まぁ、結局貴女が本当に未来のことを知っているかどうかなんて分からなかったけど、ただ一つだけ確信を得られたわ。

 ーーー 貴女こそが、自分の妄想に突き動かされライセルト家を潰した主犯だったことをね」

 「っ!?」

 その私の言葉に、次の瞬間スレアの顔は醜く歪んだ………
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