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お菓子な国の姫君は、年下の堅物甘党王子に溺愛されています

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 わたくしは、マカロン・ロクス、ロクス帝国の第一皇女です。よく人からはおっとりしていると言われます。ちょっと夢見がちな性格、好きな殿方としか結婚したくないという信念のせいで、いわゆる行き遅れになってしまいました。

 帝国では十五で成人を迎え、二十歳を越しても結婚をしていないと行き遅れと言われます。わたくしはなんと、二十六歳。世間では、ちょっと売れ残りとか言われておりまして……あら~どうしましょう。

 ちょっと前までは行き遅れと言われていながらもそこまで気にしておりませんでしたが、二十五を過ぎたぐらいから、世間の圧力が強くなってしまいました。

 ちなみに見た目は、お父様とお母様譲りの綺麗な金髪に菫色の瞳をしているのですが、美形二人に比べると見劣りするから、あまり並びたくはないのです。

 そんなわたくしに最近気になる殿方がついにできましたの。

「マカロン様、今日は、お部屋の警護に当たります。どうぞよろしくお願いいたします」

 彼の名前はサヴァラン。

 ちょっと堅物で有名の騎士様、とっても強くて、将来有望と評判ですのよ。市井の女性たちから大人気だそうです。令嬢たちもこぞって、彼を狙っていると評判ですわ。
 サヴァランは、飴色のつややかな髪に、綺麗な碧色の爽やかな瞳、そうしてとても騎士らしく男らしい顔立ちをしておりますの。

 そして彼からはいつもラム酒の良い香りがいたします。

 わたくしよりも、ちょっと年は下のはず。ご結婚はされていないそうなのですが、どうして男の人は行き遅れと言われないのかしら、羨ましいですわ。

 まあただやはり、彼からすれば年を召した行き遅れの警護対象でしかないと思います。残念ですが、わたくしの一方的な憧れで終わり。
 そんなふうに思っていたのですが――。


「はい、サヴァラン。今日は林檎をふんだんに用いたパイに、氷菓子を添えたお菓子を準備いたしましたわ」


「マカロン様、このサヴァラン、一生貴女様にお仕えする所存にございます」


「うふふ。まあ、ありがとう、サヴァラン」


 サヴァランは柔らかい緑色の瞳で、わたくしの方を見ております。

 実は――なんと皇女にしては珍しくお菓子作りが好きだったわたくしは、なんと甘党だったサヴァランを餌付けすることに成功しましたの。
 男らしい見た目なのに、まさかの甘党。
 最初、わたくしが彼の事実を知った時、恥ずかしそうにしておりましたが、お菓子作りが好きなわたくしからすればとても好印象でしたわ。

 他の者たちも知らない、わたくしだけが知ってる彼の素顔。

 でも彼はわたくしのお菓子につられていて、別にわたくし自体が好きなわけではございません。
 だけど、わたくしのお菓子を彼が試食してくれる瞬間は、まるで彼と恋人になれたようで、なんだかとっても幸せでしたの。


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