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しおりを挟む翌日、早朝。
「どうですか? マクシミリアン叔父上、僕の催眠がよく効いたでしょう?」
夫婦の屋敷に現れたベルナルドが――廊下でコスモスの花を一輪手にしながら告げた。
「……俺はともかく、テレーゼの方はお前の催眠誘導がばっちり聞いてたよ……さすがにテレーゼのぬいぐるみ使った催眠は効くわけがなかったが」
「叔父上も大概効いていたのでは?」
「花園の、素直になれってやつな。結構効いたよ、コスモスの花に暗示をかけてたとはな」
ふふっと甥は微笑んだ。
「ご名答。さすが叔父上。それにお身体が丈夫でいらっしゃいますね。僕の催眠は適当にあしらったと見える。ご自身の力で『素直に』なられましたか? まあ、素直になり過ぎたからか、姫は目覚める気配がありませんね」
「ああ、今裸なんだから見るなよ、絶対に!」
とはいえ、ベルナルドはまだ若いのに食えない男に育ってしまったと、マクシミリアンは思った。
「祖父も父上も喜ぶことでしょう。夫婦二人だけが、勝手に色々思い込んでるんですから……。国中が貴方たちの結婚式を待ち望んでいますよ。それでは、僕の幼馴染をちゃんと幸せにしてあげてください」
「お前は良い男になるよ。だけど、テレーゼに手ぇ出してくるなよ?」
「貴方しか見えていない女性は、遠慮したいですね。では、叔父と幼馴染の幸せを祈って」
少しだけ寂しそうに微笑みながら――ベルナルドは屋敷から去って行ったのだった。
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